【朗読】58)『アミ3度めの約束』第7章 PP(ポリシア・ポリティカ)の地下牢 ③
- 学 心響
- 23 時間前
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エンリケ・バリオス著の『アミ3度めの約束』の朗読と個人的な感想です。
【文字起こし】
(漢字表記も含め全て原文のままです)
第7章 PP(ポリシア・ポリティカ)の地下牢 ③
ぼくはモニターを見ながら、すべてうまくいってくれるように祈った。でも、そこにあるのは沈黙ばかり。ただ時間ばかりがいたずらにすぎていった。ときおり何人かのテリがエレベーターを乗りおりするだけで、あとはなんの変化もない……と、そこにとつぜん、警報音がけたたましく鳴りひびいた。なにか起こったんだ。 アミ、ビンカ……!!
すぐに荒々しい足音が聞こえて、武装した一部隊がエレベーターのとびらの前にかけつけてきた。ほんもののトンクまでやってきて、さかんにどなりちらしながら、エレベーターのとびらが開くのをいまやおそしと待ちかまえた。
けっして起こるはずのないことが起こってしまったんだ……。
「ヤツら、エレベーターを動かないようにした!……一個分隊は階段にまわれ!」
少しして、彼らのひとりがもどってきた。
「敵は階段のとびらも封鎖しています!」
「だったら、吹きとばせ!」
「はい、ボス!」
爆発音が響いてきたときには、さすがのアミもダメなんじゃないかと、ぼくはあきらめかけた……。でも、信じられないようなことが起こったんだ! モニターの中のエレベーターのとびらが音もなく開くと、そこから青い閃光が走りでて、金色の星々が星雲のようにろうかいっぱいにひろがった。とたんに、そこにいた五十人ほどのテリたちのようすがガラリと変わった。愛の悟りを開いたんだ! あのトンクまでうっとりと幸せそうな面もちで、あろうことか、エレベーターからおりてきた自分のニセものの手を取り、キッスしようとした。アミ・テリのうしろからあらわれたのは……ゴロ、クローカ、そしてビンカ! 三人とも幸福に酔ったように、ほほえみを浮かべている。ぼくはただちに黄色い光を出して、四人を円盤にひろいあげることにした。五十人あまりの毛むくじゃらのテリたちは、(トンクもふくめて)みな小羊のようなおとなしさで、感動に目をかがやかせながら、祝福の気持ちさえこめて、去っていく四人に手をふっていた……。
「ペドゥリート、もとにもどすキーを押して」
とアミ・テリが円盤の入口の小べやから言った。よかった。ひとりのケガ人もなく、こうして四人無事に、円盤にもどってくることができて。キーを押すとアミはいつものすがたにもどった。ビンカは、まるで神を見るように、うっとりとぼくを見つめていた。ぼくはそんなビンカにかけよって、思いきりだきしめた。ゴロとクローカも、これまた幸せそうな表情でアミを見つめていた。すっかり彼をあがめているようだ。ぼくはビンカをだきしめながら、ただもう、かんしゃの気持ちでいっぱいだった。こんなにうまくいくなんて!
アミがみどり色の光線を三回発射すると、すぐにいつもの彼らにもどった。
ぼくとビンカは、つよくつよくだき合った。彼女は感きわまって、泣きじゃくりはじめた。
「あの警官め! ウム……悪党め! けだものめ!」
ゴロは彼らにずいぶん手ひどいあつかいを受けたらしかった。
「忘れたほうがいい、こうして無事に帰ってこられたんだから」
ゴロのかたにそっと手をおいて、アミが言った。
「電流を流しおった、わしのからだに……どんなにヤツらを殺してやりたかったか!」
「おそすぎないうちにたすけられてよかったよ。さいしょのうちはおだやかでも、だんだんエスカレートさせていくのが、ヤツらの尋問のやりかただからね……」
「せめてものすくいは、ビンカとクローカがまだ、あんなひどい尋問を受けずにすんだことだ……わしはちっとも知らなかった。あいつらはほんもののけだものだ……」
クローカは泣いていた。
「あたしも知らなかったわ、ゴロ。これからどうするの?もう家には帰れないし……」
アミはふたりにはっきりと言った。
「もう忘れたほうがいい。過去のことときっぱり割りきるんだ。ちょっと頭を切りかえてみよう。たとえば、大きな台風が通過して、自分の家はメチャメチャになったけれど、さいわいいのちだけはたすかったとか……」
「もう、わしらはなにももっていない」
「そんなことはないよ、ゴロ。あなたたちは、愛という大きな価値あるものをもっている。宇宙でいちばん美しいものだよ」
ゴロはしばらく考えこんだあとで、クローカとビンカをだきよせた。
「そのとおりだ。たしかに愛には大きな価値がある。でも、わしらはもう、自由に外を歩くことさえできんだろう。よその国に政治亡命しなけりゃならんかもしれん……」
「そんなことしてもダメだよ、ゴロ。 ふつうの政治犯ならいざ知らず、あなたたちはVEP(惑星外生命)がらみの事件の容疑者なんだ。この問題になると、とたんに目の色を変える人間がおおぜいいるってことは、よくわかっただろう? どこににげても安全の保証はないよ」
「じゃ、あたしたち、いったいどうしたらいいの!」
クローカが絶望のさけびをあげた。
「心配しないで。ウトナの山の中にあるクラトの山小屋へつれていってあげる。あそこなら安全だ。これからどうするか決まるまで、あそこで休んでいたらいい」
アミは円盤をそうさして、そくざにウトナに“位置した”。ちょうど夜が明けかかっていた。ぼくたちがクラトの畑におり立つと、トゥラスクがさっそく、うれしそうに長いくびをふりながら近よってきた(ゴロにはちょっぴり警戒しているふうだったけれど)……。
「なんてすばらしいところなの!」
感にたえないといったふうに、クローカがつぶやいた。……むらさき、赤、オレンジ……地平線の空を少しずつ染めかえながら、太陽がじょじょにすがたをあらわす。
ゴロも興味をそそられたようすで、あたりをながめやりながら、新鮮な山の空気をおなかいっぱいに吸いこみ、小鳥たちの夜明けのコンサートに耳をかたむけていた。逮捕、PPの地下牢、拷問……彼らにとって、まさに地獄の夜だった。それがたった数分後には一転して、このすばらしい夜明け! ゴロたちにしてみればきっと、天国の朝をむかえたような気分だったことだろう。
「なんて美しい畑だこと! 見てよ、ゴロ。そこにムフロスがあるわ。あっちにはアンブロカスやフリンダスやメレニアス、それにブリサス……うわ! 見て、トパやブロ・ブロやホホの木まで……」
「キキスもグアホスもスバリャスもあるぞ、クローカ。わしはいままで、スーパーでしか見たことがなかったよ」
「あたしも畑で見るのはこれがはじめてよ。ああ、ここには香草もある。ロングチャス・テンカスにスンベラス……まあ、ゴロ、見てちょうだい。ここには花まで咲いてるわ!あのペピリャスやルリンダスときたら、なんて大きいの。それになんてきれいな色をしてるのかしら……」
山小屋に近づいていくにつれて、ふたりはますます目をまわした。
「ここにはムフロスのリキュールもある!」
ふたりのおどろきは、隠者クラトの酒蔵を見たときに、最高潮に達した。
「いっぱいごちそうになりたいもんだな。それから、できれば少しよこにならせてもらえんかな」
「あたしもおねがいしたいわ」
ふたりともすっかりつかれきっている。
「どうぞ、中に入って」
アミにうながされて、みんなで小屋の中に入った。ビンカがすぐに、おじさんたちのためにまどを開けてやる。
「なんてのどかなところなんでしょう! テレビ・シリーズの『小さな山小屋』とおなじだわ……」
「クローカ、ここはすばらしいところだ。ひとねむりしたら、のんびり散策といこう。いまはもう、ねむくて、ねむくて……」
「ここにベッドがあるから、ゆっくり休むといい」
「まあ、いなか風のすてきなベッドね……でも、ラストゥレラ(害虫)はいないかしら?」
クローカがいささか不安げなのに、
「だいじょうぶさ。ここの標高では、たちの悪いのはいないから」
とアミが笑った。
「でも、パタパタスは?……」
「それもいないよ、クローカ」
「でも、天井のすみにパタパタスの巣があるわ……」
「ああ、でもあれは人を刺さない。うるさいチュペティネや外から飛んでくるスンポサスを食べるんだよ。ここには有害な虫は一匹もいない」
なみはずれてからだの大きいゴロには、クラトのベッドでさえきゅうくつみたいだった。
そこにむりやりよこになろうとしているゴロに、アミが声をかけた。
「いまからビンカを借りてもいいかな? ペドロのおばあちゃんが、ビンカのために食事を用意して待っているんだ。こんな時間になっちゃったから、たぶん夕食ってわけにはいかないけど、むこうには数分でつくし、ついたらついたで、また盛りあがると思う。ビンカがくれば、席はかんぺきになるんだ。ゴロ、いいよね? きのうは許可してくれたんだから……」
テリはもう目を閉じていた。
「……エッ!? ああ、でもケジメはつけてもらわないと……グアーアー……」
「明日の朝には、またここにもどってくるよ。もしおなかがすいてたら、台所に、クラトお手製の、むかつくようなガラボロのからい煮こみがあるはずだよ……」
それを聞いたゴロが、ガバッと起きあがった。
「ガラボロの煮こみ?……どこに?……」
ビンカがクローカに台所を教えた。クローカは、こういったいなか風の暮らしがひたすらうれしいらしく、鍋をあたためながらも、しきりとため息をもらしていた。
「すてきだわ!……薪のかまどの台所だなんて……」
ゴロはといえば、もうすっかりガラボロの煮こみに夢中だった。
「ガラボロ! ウーム……最高だ。わしの大好物だ! 飼育できないから、なかなかお目にかかれない。クラトはいったいどこでガラボロを手に入れるんだい?」
「このあたりでよ、ゴロおじさん。このへんには野生のガラボロがたくさんいるの。もう少し日が高くなったら出てくるわ。クラトはわなをしかけてつかまえるのよ」
「おお、ここはまさしく天国だ!みんなもわしらといっしょにどうだね?」
ゴロときたら、なみなみならないよろこびようで、ぼくたちにまですすめようとしていた。こんなフレンドリーなゴロは、はじめてだ!
「せっかくだけど、えんりょさせてもらうよ、ゴロ。さっきは地球の夕食の席で、動物の解体作業を見るはめになったんだ。こんどはキアで、ガラボロの切断死体の煮こみなんて、とんでもないよ。お誘いにはかんしゃするけど、ぼくはけっこうです。やさいとかくだものとか、どうしてもっと健康的なものを食べないの?」
アミの意見も、ゴロはとんとおかまいなしだった。
「やかましいこと言ってないで、いっぺん、この栄養たっぷりのガラボロ料理を味わってみたらどうだい?」
「いやいや、低質な振動のエキスで、ぼくのからだを汚染されるのはいやだからね。ご親切かつ気前のよいお誘いだけど、えんりょさせてもらうよ」
かまどの上の煮こみがあたたまったころ、ぼくたちはふたりに別れをつげた。
ゆたかな自然にすっかり感激し、大好物のガラボロをたらふく食べ、ムフロスの発酵ジュースを飲みすぎたゴロは、いまやすっかり、山積する問題――PPのこと、ビンカの地球行きのこと――を忘れてしまったようだった。
それもとうぜんだと思った。どこまでも美しい風景、畑にはゆたかな恵み、丸々と肥えたガラボロがやすやすと手に入り、蔵には飲みきれないほどの発酵ジュースとなれば、ゆうべまでの暮らしとは、まるで別世界だ。そりゃもう、くらべようもなく、やすらかなんだもの。
ぼくたちはすぐに、ふたたび地球にむけて出発した。
ぼくはまどの外を指さして言った。
「あっちはもう、ずいぶんおそい時間だよ。おばあちゃんもクラトも、もうねているかもしれない」
「いや、さっきちょっとようすを見たけれど、食後の会話を楽しんでいるところだったよ。いろいろ話すことがあるからね……」
「じゃ、まだまに合うの?」
「もちろんだとも。きみのおばあちゃんの言うとおりだ。ときには彼女の忠告を聞くのも悪いことじゃないよ」
ぼくたちの会話がよくわからないでいるビンカに、ぼくたちは、おばあちゃんのことを話してあげた。
「ペドゥリートのおばあちゃんて、とても直感的なのね……」
「いやいや、そうじゃないよビンカ。そうじゃなくて、ペドゥリートのおばあちゃんはとてもつよい信仰をもっているんだ」
アミが説明する。
「あたしのこと、気に入ってくれるかしら?」
「もちろんだよ、ビンカ。きみもおばあちゃんのこと、きっと気に入るよ」
ぼくはふと思いだして、アミにたずねた。
「あの装甲された地下室から、どうやってビンカたちをつれだしたの?」
「なーに、なんてことはないんだ。ぼくはただ、青の光線をまきちらしながら、ろうかを進んでいっただけだ。そしたら、テリというテリが、みんなうっとりした表情になって、よろこんでぼくに協力してくれたんだよ。ビンカたちのいるところまで案内してくれて、三人を自由にしてくれた。ゴロを拷問にかけてたテリすら、とっても親切だったんだから。でも、モニターでそれを見ていた監視員が、あわてて警報器を鳴らしたんだ。自分の目の前には正真正銘、ほんもののトンクがいるのに、モニターの中ではそのおなじトンクが、容疑者をにがそうとしているんだから、そりゃおどろいただろう。だからぼくは、まわりのテリたちに言って、階段のとびらを封鎖させて、エレベーターも停止させた。それからのことはきみも知ってのとおりだよ。そうしてぼくたちは、黄色い光のとどくところまでたどりついて、円盤にもどってきたというわけだ。かんたんなことだよ」
そう、たしかにかんたんなはずだよ、アミにはね……。
ビンカがゴロの話をもちだした。いまのぼくたちの最重要テーマだ。なんてったって、苦労という苦労は、すべてゴロの許可を得るためなんだから。
「ああ、どうかゴロおじさんが、わたしが地球で暮らすことを許してくれますように……おじさんじしん、きのう、おとといとたいへんな目にあったから、ちょっとは心がやわらいでるかもしれないわ……」
「ビンカ、きみをしらけさせてしまうかもしれないけれど、あんまり期待しないほうがいいよ。ぼくもさいしょはきみとおなじように考えていた。でもいまでは、ゴロという人間が、いつも他人の幸せをじゃまするために、いろんなことをたくらんでるという気がしてならない。彼は、他人の幸せに水をさすように生まれついてしまっているんだ」
「ちがうのよ、アミ。ただ、ゴロおじさんは自分があまりにもきびしいしつけを受けてきたから、わたしにもおなじようにしてるだけなのよ。考えてみればかわいそうなひとだわ。おじさんは、よろこびっていうものを、なにかいけないもののように感じているのよ」
「それなら、このひどい体験をとおして、おじさんもひょっとしたら変わってくれるかもしれないね……」
とぼくが言うと、
「たしかに、苦悩は師である」
小さな宇宙人は話しはじめた。
「でも、その教えと引きかえに失うものはあまりに多いし、心にはみにくい傷あとがのこってしまう。おまけに、苦悩には中毒性があるんだ。苦悩中毒患者は、苦悩するのがあたりまえになってしまって、もはやそれなしの人生は考えられない。もしも苦悩が足りなかったら、まるで空気が不足しているような気持ちにおそわれるんだ。さらにひどい中毒症状になると、神は自分の子が苦悩するのを見るのが好きだなんてかってなことを考えはじめて、わざわざひどい人生を選ぶようにさえなる……。だからやっぱり、“愛”こそが、最良の師なんだよ。ほんとうの愛というのは、善と知性との絶妙なバランスの上に生まれるものなんだけど、悲しいかな、いまのゴロにはまだ、そのへんのところが不足している。愛を師とするには、彼じしんのレベルがまだまだ低いんだよ」
【感想】
ゴロが全てを失ったと感じているときにアミがこう声をかけました。「愛という大きな価値あるものをもっている」。そして、「もう忘れた方がいい。」と。そう言われたとしても、頭では理解できても、心がついて行かないこともあります。ただ、自分ひとりでは希望の光が見えない時に、近くで愛のある言葉で希望の光を示してくれる存在は本当に有り難いと思います。
また、ペドゥリートがどうやって助け出したのかを聞いたとき、「青の光線をまきちらしながら、ろうかを進んで行っただけだ。」とアミは答えていました。「青の光線」は最強ですね!現実社会においての「青の光線」に代わるものってなんだろう?と考えてみたくなりました。わたしが思いつく一番近いものは「神社」や「御守り」なのかもしれません。
アミが「師」という話をしたとき、「“愛”こそが最良の師なんだよ。」と教えてくれました。苦悩も師ではあるけれど、その教えと引き換えに失うものが多いからダメージが大きすぎるとのことです。アミが言う“愛”というものはテーマが壮大なので、“愛”を恋愛の“愛”だと捉えると理解しずらいかもしれません。その意味でも、本来の“愛”というものの解釈が広まるといいな、と願っております。そうすると、もっと“愛”が身近にあるとわかるし、自分自身にこれほどまでに“愛”がある、ということがわかると思うからです。



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