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【朗読】61)『アミ3度めの約束』第8章 エクシスの世界 ③

エンリケ・バリオス著の『アミ3度めの約束』の朗読と個人的な感想です。


【文字起こし】

(漢字表記も含め全て原文のままです)


第8章 エクシスの世界 ③


 ステージには、ガリガリにやせ細り、かみの毛がまっすぐで、おどろくばかりにはだが黒いひとが登場した。その黒さときたらなんと! 黒い反射光をはなっているほどだ。このひと(っていっていいのかな?)は、床をふくモップ――ほら、棒に布きれがボサボサとついているあれだよ――に似ていた。もちろん上下さかさまにしたすがたでだけど……。このひとが男なのか女なのかさえ、ぼくには見分けがつかなかった。

 「男でも女でもないんだよ」

 アミのひと言は、ぼくたちをびっくりぎょうてんさせた。アミは笑いながら、

 「宇宙の知的生物がみな、きみたちやぼくの属している種のように、ふたつの性でなりたっていると思っちゃダメだよ」

 「エッ!? ちがうの?」

 「ちがうよ、もちろん。性をふたつに分けて個体をふやしていくっていうのは、数ある繁殖法のうちのひとつの手法にすぎない。子孫を増やす方法は、ほかにもいろいろあるんだ。きみたちの世界の動植物を考えてみたって、そうだろう? いま目の前にいる兄弟も、自分ひとりで子どもをつくって、子孫を増やしていくようにできてるんだけど……まあいいか、やめておこう。宇宙に存在するさまざまな異なった繁殖法の中のたったひとつを、ここで説明してみたところではじまらないから」

 でも、ビンカとぼくは、すでに興味しんしんだった。少なくとも、あのひとがどうやって子どもをつくるのかくらい教えてもらわなくちゃ、おさまらない。

 「わかったよ。あのひとは、つまり……たまごで子どもをつくるんだよ」

 「エーッ!まさか! ハッハッハッ! ビンカ、聞いたかい。あのひと、たまごを産むんだって!……」

 「シー!だからやめておくって言ったんだよ。まったく、きみたちはなにごとにつけ大さわぎしすぎる。彼らにしてみれば、きみたちの世界の出産のほうが、よっぽどおどろきだよ。あの血が流れる痛々しい場面を目にしたら、きっとふるえあがるにちがいない……」

 ぼくは言われたことをよく考えてみた。そして、アミが正しいと思った。

 「ものごとはすべて相対的なんだよ、わかる? じゃ、あのひとがきみたちに送ろうとしているメッセージに、注意をむけてみよう」

 あのやせたひとは、ステージの上で意識を集中していた。ぼくは目を閉じて、なにか感じようとした……でも、なにも感じられなかった。たぶん、ついさっきのアミの話で、ぼくの気持ちがちょっぴり動揺しちゃったからだと思う。ビンカもおなじらしかった。ほかの観客たちは、いまやすっかり彼に夢中のようだったけれど、ビンカとぼくは、あいかわらずなにもわからないままだった。そんなぼくたちのようすを、アミはちゃんと見て取っていた。

 「この件にかんしては、なにも言うべきじゃなかった。きみたちの世界のようなところでは、性は“きわめておそろしい”ものとしてとらえられている。おまけにきみたちは、性にかんする真実にふれたときに、そのおどろきを趣味の悪いじょうだんでごまかすくせまである……ぼくはそれをよーく承知していたはずだったんだけどね……。じゃ、そろそろキアに出発しようか。もうあんまり時間がないんだ」

 ぼくたちは円盤にもどった。キアにむかう道すがら、アミがこんなことを言った。

 「この旅の目的は、惑星の内部にある文明の姿を、きみたちの目で直接たしかめてもらうことだった。そうして、高い進化をとげると、外的なものにはほとんど重きをおかなくなるってことを、ちゃんとわかってほしかったんだ。そこのところは、たぶん気がついてたよね……?」

 「エッ!?  ああ……もちろん、アミ……」

 「きみたちの中にある“視覚的な人種差別”から、少しでも自由になってもらえたらと思ってね、ハッハッハッ。 これからは、見た目の感じだとか、発言のうわべだけにとらわれないで、もっとそのひとじしんが発しているものに注意をはらうようにね。それから、自分じしんの内部を、きちんと見つめることがだいじだ。ほんとうのものだとか、人間のたいせつなものだとかは、かならず内部にあるんだから。大きな進歩をとげたひとというのはそれを知ってるから、すべてにおいて外部よりも内部を重視するし、逆にあまり進歩してないひとは、すべてにおいて外部ばかりを見てしまうものなんだ。外部なんて、いつかはうつろっていくものなのに……」

 「たしかにそうね。わたしたちはまだかなり進歩があまいから、どうしても外部にひきずられてしまったりするのよ……」

 ビンカの言葉にアミは笑って、

 「注意が不足しているんだよ、それだけだ。ああ、それからもう少しの訓練もね」

 まどの外いっぱいに、キア星が近づいてきた。

 「あそこにきみのおじさんとおばさんがいるよ、ビンカ。午後の山の日差しを楽しんでいるところだ」

 モニターのひとつに、沼のほとりを散歩するゴロとクローカのすがたがあらわれた。ゴ口はクローカのかたに手をまわし、クローカはゴロの腰に手をまわして、ふたりでうっとりと景色に見とれている。

 トゥラスクが長いくびをゆすりながら、その近くをついて歩いていた。たくさんのガラボロまで、あたりをゆったりと楽しげにとんでいる。

 ぼくたちはすぐに、ふたりのそばについた。ビンカはかけよっていって、ふたりにだきついた。

 「よくねられた? ゴロおじさん、クローカおばさん」

 「うん、それはもうぐっすりねられたよ。こんなに美しい風景の中にいるせいで、PPに追われていることも、全財産をうしなって無一文になったことも、これから行くあてのないことも、みんなみんな忘れてしまったようだよ……」

 そう言ってほほえむふたりに、明るく、でも少しなぞめいたような声で、アミがたずねた。

 「ここにずっといたいとは思わないかい?……」

 ふたりはとたんに動揺して、アミをじっと見つめた。

 「なんだって?……そ、そんなことができるのかね?……」

 「もちろんさ。あの山小屋はもう、無人になったんだ。あそこの住人クラトは、この少年の住んでる惑星で暮らしていくことを決心したんだよ。だからもう、ここにはもどってこない」

 「ぼくのおばあちゃんの彼氏になっちゃってね、ハッハッハッ!」

 ぼくはこれを書いているいまもなお、あの、まるで“青春”のようなロマンスのことを、かなりこっけいに感じているくらいだ……。

 ゴロもクローカも、目に見えて生き生きしだした。

 「じつのところ、ゆうべも、けさも、ふたりでずっとそのことばかり考えておったんだ。こんなところに住んでみたいって……。ふたりとも静かな生活をとても愛しているから、友だちもほとんどいない。だからここで、ふたりで力を合わせて土地をたがやし、なんとかクラトがつくったような畑をつくり、小屋を建てて、それから……」

 「ふたりとも、すべてを一からはじめるには、年がいきすぎてる。あの山小屋に少し手を入れて、クローカがかざりつけをすれば住めるようになるし、それにこの畑だってもうクラトのものじゃない。ムフロスの発酵ジュースをつくる器械だってそろっているし、ここから歩いて四時間行ったところの村で、農作物や発酵ジュースを売ることもできる。そのための荷車はあそこにあるし、トゥラスクは力もちだから、そのさいはじゅうぶん役に立ってくれる。そうそう、これからは、トゥラスクもふたりのものだよ」

 ふたりは感激の面もちで、アミの説明に耳をかたむけていた。とりわけクローカはなみなみならぬよろこびようで、アミを見つめながら、

 「都市の騒音からはなれて、静かないなかに住むことが、長いことあたしの夢だったの。たったいま、あたしのひそかな夢が現実になったのね。ああ、信じられないわ」

 「わしだって小さいときから自然の中に住むのが夢だった。そのために農業を勉強して、どこかの森の中にでも住みたかったんだ。ところが、わしの父親がたいそう高圧的だった。わしがまだほんの子どものころから、将来わしが、自分の薬局をつぐものと決めつけてしまったんだ。とうぜん、農業を勉強するための学費なんぞは出してくれなかった。でも、ほんとうを言えば、わしはずっとあの薬局が好きになれなかったし、あの街にもほとほとうんざりしていたんだ……おお、そうなんだ。もし、ほんとうに可能なら、ぜひともここに住みたい。この美しいみどりの山々、すばらしい風景にかこまれて……」 

 「じゃ、これで問題解決だよ。ここはこれからふたりの土地であり、家である」

 高らかに宜言するアミもまた、よろこびいっぱいだった。

 それを聞いたゴロが生まれてはじめて、ほほえみを浮かべた。

 その目がキラキラとかがやきはじめ、それから彼はきゅうに、自分を取りかこむものをあらためて確かめるかのように、あたりをぐるりと見まわした……この美しい風景が自分の日常になったことが、信じられないといった感じだ。みどりのグラデーションを織りなす谷を見おろしたあと、ゴロはもういちどほほえんだ。彼の目から、幸せのなみだがいくすじかこぼれ落ちた……。そのときだった。とつぜん、ゴロの顔から血の気がひいた。きゅうに気分が悪くなったというゴロを、ぼくたちはいそいで山小屋までつれていき、わらぶとんの上によこたえた。

 「いったい、どうしたことだ……あまりにも感動しすぎたせいかな、めまいがする……」

 「とうぜんだよ。プラスの感動というものになれてなかったからね、ショックで病気になったんだよ」

 とアミはじょうだんを言った。

 そのつぎの瞬間、おそろしいことが起こった。ゴロの頭と顔にはえていたみどり色の毛が、とつぜんぬけ落ちはじめたんだ……。

 「変身しているのよ!、ゴロおじさんは、スワマになりはじめているんだわ!」

 ビンカのさけびは、感動にふるえていた、アミとクローカもおおよろこびだ。ただひとりぼくだけが、いったいどんなわざわいがふりかかってきたのかと、まるでわからないでいた……。

 「ぺドゥリート、これはわざわいなんかじゃないよ。とってもすばらしいできごとなんだ。あと二、三日もすれば、ゴロはもう完全にテリじゃなくなってる。すっかり無害なスワマに変化してるんだ。この短期間のうちに連続して起こった感動のショックで、彼はものすごいスピードで進化したんだよ。それに、これまでかたく信じてきたことがうそだってわかって、彼の内に真実を受け入れるスペースが生まれたんだ。そしてなにより、さいごのショック――。美しい風景の中であらたな人生をはじめられるというよろこびが、おおいにプラスになって、ゴロの心を決定的に変えたんだよ。これは、愛と幸せが、苦悩よりもずっとはやく心を進化させる証明でもあるね……」

 「ゴロおじさんたら、ようやく人間になれるのね」

 ビンカがいたずらっぽく笑う。変身のさなかとはいえ、やはりテリはテリで、ゴロは自分の種族のさいごのほこりを見せようと、なにごとか言いかけた。すると口の中の、巨大な歯が、一本、二本とぐらつきはじめたので、ゴロはけっきょく、なにも言うことができなかった。巨大な歯が、つぎつぎに手のひらにこほれ落ちた。ゴロはその何本もの歯を見ながら、ひとりで笑いだした。

 アミはひどく感動していた。

 「PPがさがしているのは、テリとスワマの夫婦なんだから、これでもう、ふたりに危険はない。スワマどうしの夫婦になれば、まずうたがわれることはないからね。ああ、なんてすばらしいんだ! この変身のおかげで、ゴロは指紋まで変えることができた。クローカの指紋はぼくが変えてあげるよ。われわれの仲間がおおぜい、この国の政府機関にもぐりこんでいるけれど、その中にはもちろん戸籍係もいるから、新しい住民票ならかんたんに手に入る。そのへんのことはぼくにまかせておいてよ」

 「でもわたしたち、ここの言葉のカイロソ話をしゃべるの、とても苦手なのよ……」

 「それなら、正式な外国人の在留許可証を手に入れてあげよう。心配はいらない、ぼくがすべてうまくやるから。カイロソ語だって入門書をもってきてあげるよ。それで勉強すればいい」

 ゴロは満足げに笑っていた。少しずつ、人のいいスワマに変わりつつあった。そしてゴ口は、いま現在自分の身の内で起こっている変化にたいして、なんら抵抗をしめすことがなかった。

 「いまはとにかく、休んでいたほうがいい。わかっていると思うけど、この変身はまったくの無害だし、痛みもない。でも、この二、三日は体力が落ちるから、ベッドでおとなしくしている必要がある」

 近い未来にもとテリとなる予定のゴロは、なにごとか言おうとしたけれど、だんだん歯が少なくなっていく口の中で、空気がぬけてしまい、やっぱりなにも言えなかった。そしてまた、笑いだした。

 「それも心配無用だよ、ゴロ。こんばんかおそくとも明日には、新しい歯がはえてくるよ。もちろん、いままでのよりずっと小さいやつだけどね」

 「人間の歯よ」

 ビンカがまた、おじさんをからかう。でもこんどは、ゴロは歯のない口を大きく開けて、高笑いをはじめた。それにつられて、みんなもいっせいに笑いだした。

 「わたしたち、ここでとても幸せになれるわ」

 クローカは、感動をあらたにしたようすだ。

 ぼくの双子の魂はこのチャンスをのがすまいと、さっそく、ぼくたちの最大の懸案事項をもちだした。

 「そのとおりよ。ふたりとも、ここでとっても幸せに暮らしていけるわ。でも、ここは若い子が勉強するにふさわしいところじゃないでしょう、どう?……」

 

 ビンカは問題を提起した。これからぼくの人生でもっとも重要なこと――つまり、ゴロがはたしてビンカの地球行きを許可するかどうかということ――が討議されようとしていた。これから長い長い、ひどくつかれる討論がはじまるんだ……ぼくは心の準備をした。でも、上きげんのゴロの口からとびだしたのは……ぼくの楽観的な夢をもってしてもおよばないような、ものすごいことだったんだ!

 「そのとほりた、ビンカ、ほまへのみらい、ほまへのしああせはここにはなひ。わしはすこし、いしはたますひたよ。こふなにこまらせてな。それにアミもこのこもしんひなかった」

 ぼくは耳をうたがった。

 「じゃ、ゴロおじさん?……」

 ビンカの顔に緊張が走った。

 「いってもいいよ、きょかするよ、ちきふにいくこと」

 「ウワー!……バンザイ!!!」

 よろこびのあまり、みんながいっせいにさけんだ。もちろんクローカもだ。

 ビンカは目になみだを浮かべ、幸福に酔いしれているように見えた。そして、ぼくのそばにやってきた。ぼくたちは長いこと、だき合った。もう、ぼくたちの愛をひきさくひとはいない。光いっぱいのかがやかしい幸福な未来が、ぼくたちを待っていた。

 チョウやガラボロやいろいろな虫や鳥たちが、山小屋の上をとびまわりはじめた。

 アミはゴロを祝福して言った。

 「すばらしいよ、ゴロ、ほんとうに。地球に行ったからって、ビンカを失うことにはならない。できるかぎり彼女をここにつれてきて、一日、二日いっしょにいられるようにするよ」

 「あひがとう、アミ。とうも、あひがとう……(クスン)……」

 あれ? ぼくはアミが言ってたことを思いだしていた。たしか、アミが仲介人のようになって、恋人をつれて惑星間を行き来するのは許されていないんじゃなかったっけ? アミがぼくたちとコンタクトできるのは、宇宙計画に関係したばあいにかぎられていたはずだよ……。

 ぼくの考えていることをキャッチして、アミは言った。

 「さいごの冒険について、ビンカはまた本を書かなくてはならない。それをクローカが校正して、キアで出版しなければならない。

 ビンカは地球でその本を書くから、書きおわったものをだれかがキアにもってこなくちゃならないよね? ぼくがその運搬の仕事をしたって、宇宙当局は問題にしないと思うよ。だってそれは個人間の行き来じゃなくて、惑星の仕事のひとつなんだから。そうだろう?」

 「ああ、そうだね、もちろん」

 「ビンカとぺドロは、その往復の旅をいっしょにしてもかまわないからね」

 「ウワー!!! バンザイ!!!」

 あんまり幸せで、ぼくとビンカはまたまたさけんだ。

 クローカが、ビンカの手書き原稿をどうやって出版社にもっていくのかたずねた。

 「それはぼくにまかせてよ、クローカ」

 とアミ。

 「でも、PPは?」

 「彼らは、あなたたちを逮捕できればそれでいいんだよ。本の件は別問題だ。ぼくが原稿を、インタートコで送っておくよ」

 「なあに? そのインタートコって」

 「地球のインターネットにあたるものだよ。そのとき、出版の許可書つきのメッセージを、いっしょに送ればいいんだ。そこに、本人はいま遠くに行っていて、キアにはいないというふうに説明しておくんだよ。新しい本が出たら、おそらくPPは、出版社に調査にいくだろう。でも出版社にしたって、手書きの原稿をインタートコで受け取っただけで、それ以上はなにも知らないと答えるしかない。それで、一件落着だ。こうやってビンカは、この世界で、生まれもった使命を果たすことができるんだよ」




 そのあとは、ことはとてもはやく運んだ。アミはクローカを円盤につれていき、数分で彼女の指紋を変えた。クローカはついでにかみをカールしてほしがっていたけれど、アミは笑ってそれを流した。そのあとアミは、新しく山小屋に住むにあたって、必要なものを書きだすように、ふたりに言ったビンカとぼくを地球につれて帰ってから、それをもってまたここにくるからと説明すると、ふたりは、できるかぎり質素に暮らしたいから、それほど多くのものは必要ないと言った。アミはそういう彼らに祝いの言葉を贈った。

 それから、みんなで仲良く協力して、あの住居のリフォームに取りかかった。念入りにそうじをして、チュミチュミやガのような虫を追いだし、ガラクタの山をまとめて外に出した。そのときクローカが、あの有名なクラトの羊皮紙を見つけた。ビンカが思い出として地球にもっていきたがったのだけれど、はなれたところでからだを休めていたゴロが、それを聞いて反対した。

 「いやいや、この羊皮紙はすばらしい。彼が書いた場所においておくべきだ。わしが額に入れて、この家の家宝とするよ」

 みんなはその考えに賛成した。

 クローカがゴミを燃やそうとすると、アミは大気圏をわざわざけむりでけがす必要はないと言って、円盤に行き、そこから光線を発射して、ガラクタの山をあとかたもなく消してしまった。文字どおり、あとかたもなく、だ。

 ずっと前に、アミは自分たちは破壊的な武器はもってないと言ってたけれど、ほんとうはちゃんともってるんだってことが、そのときわかった……。

 「でも、ぼくたちはひとにむけて使ったりはしないよ」

 とアミはぼくの考えていることを読んで言った。

 しばらくして、アミがもう出発する時間だと言った。なんでもアミは、よく日には別の使命を果たすために、とても遠いところまで行かなくちゃならないとか。

 ビンカと彼女のおじさん、おばさんの三人の別れのシーンは、胸を打つものがあった。でも、悲しそうには見えなかった。それは、自分たちの上に起こったすばらしい変化と新しい生活のはじまりに、ふたり(彼らは、ぼくにとっても新しいおじさん・おばさんになったわけだ)の心がよろこびであふれていたからだ。だから、ドラマチックな別れとはあいならなかった。……でも、ぼくはとっても感動していた。だってゴロはもう以前のゴロじゃなくなっていたんだから! スワマへの変身過程にある彼は、すでにじゅうぶん善良でおだやかなひとに変わっていて、ぼくにほほえみかけたり、ときには大きな手のひらでぼくの頭をそっとなでたりして、ぼくは親しみを感じないではいられなくなってきていた。

 「もしこの子が気をちらさずに、はやく本を書きおえたら、またすぐにここにもどってくるよ」

 とアミが言うと、

 「じゃ、わたし、明日からさっそくはじめるわ!」

 とビンカが明るくさけんだ。



 

【感想】

 アミが惑星エクシスにペドゥリートとビンカを連れて行ったのは、高い進化をとげると、外的なものにはほとんど重きをおかなくなるってことをわかってほしかったからだと言っています。外部にひきずられがちであることを自認するビンカに対しては「注意と少しの訓練が不足している」と伝えています。現代の「ルッキズム」の傾向を考えさせられます。


 ゴロがテリからスワマに変身していく姿に立ち会えたことは本当に驚きました。変化を目の当たりにすることは、とても分かりやすく受け入れられます。目には見えないけど、わたしたちの心も本当はこんな風に変化しているのだというイメージに繋がります。心もこんな風に見えればわかりやすいのですけどね!それでも、見えないからこそ、想像・創造する楽しみがありますね!


 ペドゥリートとビンカが一緒に住めるか、という問題、ゴロとクローカがPPに目を付けられた問題、どちらも絶対絶命に感じたことが、こんなにも幸せな瞬間に変わるなんて、窮地にいるときには考えが及ばないものです。でも、アミが絶対的な信じる心を持ち続ける強さを目の前で示してくれました。わたしたちも青い光が出せるのですから!いつでも希望を持つことがいかに大切か、ということを改めて思い起こさせてもらえた気がします。


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