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【朗読】53)『アミ3度めの約束』第6章 春めいたロマンス ①

エンリケ・バリオス著の『アミ3度めの約束』の朗読と個人的な感想です。




【文字起こし】

(漢字表記も含め全て原文のままです)


第6章 春めいたロマンス ①


 最大のネックは、ビンカのおじさんとおばさんが、テリとスワマの夫婦だってことだ。これで操作の焦点がかなりしぼられる。役所の記録保管室の戸籍簿で、テリとスワマの組み合わせの夫婦をピックアップして、ひと組ひと組当たっていけばいいんだから。そして、ねらいをつけた夫婦とビンカ――空とぶ円盤の物語を書いた女の子――との関係がわかれば、もうアウトだ……。

 でも、そうは問屋がおろさなかった。身の危険をかえりみず、政府機関にもぐりこんではたらく、われわれの友人たちの勇気には、まったく脱帽する。にせテリの仲間から、捜査が終わるまで一時的に、戸籍簿のコンピューターの中にある、ふたりのデータを消したとの連絡が入った。

 フーッ、やれやれ。これでついに、悪夢はおわりをつげたんだ。めでたし、めでたし……。

 と胸をなでおろしたとたん、ゴロとクローカはまたねむりこんでしまった。

 するとまた、ぼくたちの仲間のテリの声が聞こえてきた。

      “この基地の外へ出たら、ふたりはまた、目をさまします”

 つづいてとびらが開いて、にせテリのふたりが入ってきた。

 まるで死んだようにねむるふたりを、みんなで協力してストレッチャーでアミの円盤まで運び入れ、ひじ掛けイスにすわらせると、ぼくたちはにせテリたちに別れをつげた。かんしゃでいっぱいだった。そしてぼくたちは、ふたたびあのぶあつい岩盤をあっさりと通過して(まるでけむりの中をくぐりぬけるもどうぜんだった)、ビンカの家をめざした。


 サリャ・サリムをあとにすると、ゴロとクローカは目をさました。アミは彼らにとくに説明もしなかったし、彼らもなにも聞かなかった。気づいたらとつぜん空とぶ円盤の中にいたっていうひとたちに、なんの説明が必要だったろう……。

 とうぜんながら、生まれてはじめて“UFO”に乗ったクローカは、こうふんのしっぱなしで、まどの外の景色に夢中だった。ところがゴロときたら、飛行機とどこがちがうんだなんて言って、むっつりしたままだった。アミが山や谷をすれすれにかわしている超低空飛行をしようと、海深くもぐろうと、いっこうにまどの外を見ようとはしない……なんてつまらないひとなんだろう!まるっきり子どもの心をなくしちゃっているんだ……。

 ぼくたちのまえを、イルカの群れが楽しそうに泳いでいたときにようやくひとこと、「こんな時間つぶししなけりゃ、はやく家に帰れるのに」

 と、つぶやいただけだった。


 数分後には、ぼくたち六人はビンカの家のサロンにいた。円盤は視覚不可能な状態で、上空にひっそりと停止していた。

 ぼくたちはそこではじめて、ビンカとぼくのなれそめ(!)と、ふたりがいま、どれだけひかれ合っているか、だからビンカが地球で暮らせたらいいと考えたことなんかを、ゴロとクローカに話した。それから、今回こうして旅をしているのは、その許しをもらうためだってことも。でも、やっぱり、石頭はそうあっさりとはやわらかくなりゃしない……。

 「わかった、わかったよ。これまで聞いてきたことのいくつかは、わしも受け入れよう。わしらよりも技術的にずっと進歩した宇宙生命体が存在することや、わしらの国の政府がそうした存在に不信感をもっていながら、その技術にはおおいに関心があること。それからよその国が先んじてその技術を手に入れないようにじゃましていることなんかは、わしももう、うたがいはしない。……でも、その愛だとかなんとかいったことには、まだまだ議論の余地がある……わかった。それもいちおう承諾したということにしておくよ。クローカまでわしに反対しているようだからな……。ただ、これだけはどうしても理解できん。どうしてこの子たちが大きくなるまで待てないんだ?まあ、その“双子の魂”とかなんとかいうバカげたことが、ほんとうの話だったとしたらだが……」

 ゴロの口調は、いやみっぽかった。

 「もし、おじさんが、クローカおばさんと一年にたったのいちどしか会えないとしたらどう?それでもへいき?」

 「……そりゃあ、へいきなわけはないが……ウーム、しかたがない、それじゃこうしよう。そのちっこい子が(またまたぼくがいちばん気にしていることを言われた)、夏休みのあいだだけは、ここでビンカといっしょにすごせるようにする。もちろんそのまるっこい耳だとか、まっ黒なかみの毛は、あんたがたの技術とやらでなんとかしてもらうよ。中庭の奥の作業場で寝泊まりしてもらえばいいだろう。ただし、ビンカとふたりっきりにはしないぞ。まちがいがあってからではおそいんだ、わしらでしっかり見はらせてもらうことにする。……わしはこれでギリギリまでゆずったからな」

 ゴロの不信感のつよさには、ぼくもちょっとだけムッとしてしまった。

 だけどアミは言った。

 「ざんねんだけど、宇宙間ロマンスだとか、たんなる旅行なんかでは、われわれの時間や技術を使うことはできません。銀河系当局がぼくと彼らとのコンタクトをそのつど許可してくれたのは、すべて教育という理由があってのことで、ぼくよりもずっと上のレベルでぬかりなく考えた計画内でのことだからです。計画はあくまで惑星の進化についてのものですから、個人どうしの感傷的な関係の問題はふくみません。たとえぼくじしんがそうしたくとも、ぼくが仲介人のようになって恋人たちを運搬するようなまねが、まず許されるはずはないんです」

 ぼくとビンカの“感傷的な”関係なんかは、“上”にとってはとるに足りないものだというわけだ。“上”にとっては惑星の進化だけがだいじなんだと、ぼくは思った……。

 「もう時間はあまりのこってないけど、どうしてもふたりに見せなくてはならないものがあります。ふたりの読者も知っておかなくちゃならないことです。その上で、あらためてこの問題について考えることにしましょう」

 「銀河系当局には責任があるはずよ。ペドゥリートとわたしを出会わせて、愛し合わせて、本まで書かせておいて、そのあとは知らん顔なんて、ひどすぎるんじゃないの?」

 おどろきとうたがいといらだちにあふれたビンカの言葉にも、アミは表情を変えなかった。

 「当局は、きみたちふたりがいつかかならずいっしょになるように運命づけられていることを、ちゃんとわかっている――それがこの人生でのことか、きたる人生でのことかってだけのちがいさ。彼らは、時間の存在しない次元に、かぎりなく近いところに住んでいる。彼らにとっては、われわれの人生は、ほんの一週間くらいのものなんだよ」

 「そういうことはぼくたちの水準においてほしいものだね。こまるのは、ぼくたちなんだから……でもまあ、しかたないか。彼らはそんなにも“高い”んだから……」

 さっきのゴロみたいに、ぼくがいやみっぽく言うと、

 「執着といらだちは、叡智とは対極にあるものだ。成長のさまたげにしかならないんだよ。それから、うやまいの気持ちを忘れちゃいけない。銀河系当局はそういうものをとてもたいせつにしている」

 アミの目の色は真剣だった。さすがにぼくも反省して、すなおにあやまった。

 「きみたちのような奉仕者は、本来なら、次元の高い意識や忍耐力をそなえているものなんだ。つまり、(ちょっとむずかしくなっちゃうけど)じしんの内的存在とうまくかみ合ってるってことだよ。内的存在というのは、思慮深く、感受性ゆたかだから、“双子の魂”どうしを結びつけてくれる。ふたつの魂が、どんなに遠くはなれた惑星に暮らしていようが、生きる時代がちがっていようが、そんなことはまるで問題じゃなくなるんだ……でも、きみたちはほんの子どもだから、あたりまえなんだけど、まだ内的存在とじょうずに関係できてない。せっかく出会えた“双子の魂”どうしが、別々の惑星で生きていくなんて、理不尽だとしか思えないんだね」

 「そうなんだ、アミ。ぼくはまだ、自分の内的存在からずっとはなれたところにいるんだもの。だからこそ、ビンカがそばにいなくちゃならないんだよ」

 「ペドゥリート、わたしだっておなじなのよ!」

 アミは言った。

 「だからこそ、きみのおじさんに許してもらおうと、こうして努力しているんじゃないか」

 みんなの視線がいっきにゴロに集まったので、ゴロは決まりが悪くなったのにちがいなかった。

 「わしの目のとどかない、遠い別世界へビンカをつれて行くための許可をくれだなんてバカげたことを言うのは、もういいかげんにやめてくれ! 少なくとも成人するまでは、この話はおあずけだ。わしはさっき、せいいっぱいの譲歩をした。あんたがたが、それを受け入れられないっていうのなら、わしはもう知らん。タリキスのように手を洗うことにする(訳注・マタイによる福音書27章24節。総督ピラトが、キリストを十字架につけろとさわぎたてる群衆にこまり、手を洗って、彼らにまかせたことに対応している)。きのうときょうは、わしの人生で最悪の二日間だった。そろそろゆっくり休ませてくれんかね。もうおそいんだから、ビンカも自分のへやに行ってねなさい。まったく、こんなのは正気の沙汰じゃない。わが家に宇宙人に出入りされて、まためんどうを起こされるんじゃかなわん。あんたがたとは、これっきりだ。二度と会わないことを祈るよ」

 こうふんぎみにそう言うと、くるりと背をむけた。

 アミは、ほんとのところ、かなり気分を悪くしていたようだったけれど(それはぼくもおんなじだ)、つとめてほがらかに、ゴロの背中に声をかけた。

 「ちょっと待ってください、ゴロ。ビンカの地球行きの問題とは別に、まだビンカとペド口をつれていかなくちゃならないところが何か所かあるんです。本を書くには、いちばん重要な情報が不足しているんです。だから、明日の朝、彼女をむかえにきてもいいですか?暗くなるまえには送ってきますから……」

 「わしはもう、こりごりなんだ。これ以上宇宙人とかかわってたまるか。これっきりだといっとるだろう!

 ビンカ、さっさとねなさい」

 つらそうにこちらをふりかえりながら、ビンカはやむなく、ゴロについて、自分のへやにむかった。

 魂がまっぷたつにされたような気がした。

 アミはぼくに落ちつくように言った。そして円盤にもどって解決策を考えようと言って、ぼくとクラトの背中をそっと押した。

 すぐさま、円盤から屋根をつきぬけて、黄色い光がサロンにとどいた。光の中に入ると、ぼくたちのからだはスーッと浮かびあがって、円盤の中に吸いこまれていった。


 

【感想】

 ゴロの戸惑いの気持ちはよく理解できます。今までの常識と違い過ぎて、情報量が多すぎて受け入れられないものですよね。ここにも価値観の違いがあって、受け入れられないゴロが悪いわけでもなく、かといって、ペドゥリートとビンカの憤りも仕方ないこと。こんな風に、誰も悪くないし、大切な人として幸せを願っている想いがあるからこそ、生まれるの心の葛藤なのでしょう。


 その渦中にいるときは、ほんとうにご心労だろうなぁと胸が痛みます。そして、この世の中はこういう種類の心の葛藤であふれていて、それに対処しながらみんな生きているのだな、と改めて思います。だからこそ、そういう意味でみんな「仲間」なのです。仲間なのですから、ぜひ、応援の気持ち、励ましの気持ちが持てたらいいな、と思います。


 「銀河系当局」は敬いの気持ちを大切にしている、という部分を読んで、「なるほど」と思いました。敬いというものは相手に対する「安心」や「理解」そして「価値」や「感謝」を感じることで湧いてきます。逆にこういった感情が感じられない場合には「敬う」ことは難しいかもしれません。「銀河系当局」はそこを大切にしていると知って、ますます「銀河系当局」を尊敬します!


 

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