【朗読】41)『アミ3度めの約束』第2章 クラトの秘密①
- 学 心響
- 10月26日
- 読了時間: 14分
エンリケ・バリオス著の『アミ3度めの約束』の朗読と個人的な感想です。
【文字起こし】
(漢字表記も含め全て原文のままです)
第2章 クラトの秘密①
黄色い光が、ぼくたち三人をつつみこんだ。
ぼくは空を見あげた。ぼくたちだけに見える、堂々とした円盤が、そこに浮いていた。まるで魔法のように美しい。円盤は松の木のてっぺんよりも高いところを、少しかたむいて、ゆっくりとおだやかにまわった。銀色の機体は、太陽の光を受けて、きらきらとまぶしく反射していた。
この前とはちがう円盤なのがわかった。だって、円盤のはらに、翼のはえたハートのマークがあったからだ。
「アミ、この“UFO”は、前のときのとちがうね」
「うん、中は以前のと、とてもよく似ているけど、もっと大きくて、メカニズムがより高度なんだよ、ペドゥリート」
こんどはまったくおそれを感じることなく、上昇していくのを楽しんだ。ぼくはもう、宇宙分野でのチャンピオンになっていた。自慢するわけじゃないけれど、どんなに有名な宇宙飛行士だって、ぼくとくらべたら、なにも見てないのとおなじだよ、なにも!
重力をまったく感じずに、空中に浮かんでいられるというなんともいえない感覚が、とても楽しく、うれしかった。周囲を見わたしてみた。ぼくのからだがどんどん上昇して、円盤がだんだん近づいてくるにつれて、足もとの松林や青く光りかがやいた海、そして温泉場やぼくの家が見えてきた。両うでをひろげて、自分がまるで鳥になったような気分を味わってみた。どんな遊園地の乗りものよりも楽しかったし、それにぜったい、安全だった。
円盤の中に入り、ぼくたちの足もとの床がサッと閉まると、だんだん自分の体重が感じられてきた。まえとおなじように、入口の小べやのやわらかいじゅうたんの上におり立ったときには、なんとも言えないよろこびがわいてきた。そのあとで、そうじゅう室へ行った。前の円盤にくらべてずっと大きいし、天井はおとなが立ってもじゅうぶんな高さがあった。
まどから村の広場やゲームセンターが見えた。
そうしたら、ゲームセンターのスクリーンにあらわれた、A・M・Iのイニシャルのことを思いだした。
「アミ、あれは、なんておもしろいいたずらなんだろう」
ぼくは、頭の中で考えていることをアミがキャッチしているのを知っていた。だからアミにこう言った。
なんの話をしているのかとたずねてきたビンカに、事情を説明してあげると、彼女はさもおもしろそうに笑った。
「ぼくがきたことを、きみに知らせるためもあったけど、ビデオゲームなしでは生きられそうもない、かわいそうな男の子たちをがっかりさせて、あの気のめいる機械とむかい合うかわりに、もっとほかのことを考えたり、たとえ一時間でも自分の時間を楽しむようにしてもらうためにね」
アミはぼくのおばあちゃんとおなじことを言っていると思った。とうぜんぼくの考えをキャッチしたアミは、ちょっと笑ってからこう言った。
「きみのおばあちゃんの言うことは正しいよ。あのゲームセンターに自分のイニシャルを並べてやろうと競っている連中の中で、いちばんの子がいちばんのおバカさんだよ。だって、失うものは時間とお金だけじゃないんだ。あのゲームは、頭をゆがませる危険性がある。あそこでは、たえまなくなにかを殺したり、壊したりしなくてはならない。それによって、彼の心の中に、人生の見方をひずませるようなあとをのこしていくんだよ。もちろんそれは、行動にも反映してくる。それだけじゃないよ。ゲームセンターにいるあいだじゅう、あの不自然な、すさまじい騒音に何時間もたえていなければならないんだ。なんともかわいそうな子どもたちだよ……」
ぼくもあるていどビデオゲーム中毒なので、アミとビンカにあそこでの感動を説明しようとこころみたけど、ムリだった。アミはさらに言った。
「すべて、社会や環境の問題だよ。どろぼうの世界では、いちばんのどろぼうがいちばんかしこいとされるだろう。あのイニシャルのトップの子とおなじようにね。でも、ぼくたちの世界では、そんなヤツは大バカ者だよ。あそこを取り巻いているのは感動なんかじゃない、たんなるエゴの活動でしかない」
ビンカがぼくのそばにきて、そっとぼくの背中に手をまわした。そうしたらなんだか、アミの言っていることが正しいように感じてきた。ビンカを近くに感じたときの感動にくらべたら、ビデオゲームなんてもう、話す意味さえないバカげたものとなった。
「そう、そっちはほんものの感動だよ」とアミが言った。
アミの言うことは正しいと思った。いまビンカが目の前にいるように、それは愛するひとが近くにいればすぐにわかることだ。でも、たったひとりで、愛から遠ざかっているときは……。
「愛はいつも近くにいるよ。たとえ、だれかがすぐ近くにいなくてもね」
アミは言った。
それはとても美しい言葉に聞こえた。たぶん、あるていどほんとうだと思う。でもぼくにとって、ビンカと遠くはなれていながら幸せを感じるのは、半分不可能なことだった。それは彼女もおなじだと言った。
「きみたちはひとりぼっちでいると、人生の魔法や、その一瞬いっしゅんにこめられたすばらしさに対して心を閉ざしてしまうんだよ。こうして、人生を楽しむことを見失ってしまうんだ。ちょうど、“彼か彼女が自分のそばにいなければ、幸せになりたくない”と言っているようなものだよ。よろこびのかわりに悲しみを選ぶなんて、おろかだとは思わない?」
ビンカは別の見方をした。
「悲しみを選ぶわけじゃないわ、ただ、愛しているひとがそばにいないとそれはひとりでにやってくるのよ」
「愛しているひとがそばにいないと、悲しみが“ひとりでにくる”ように、きみたちが選ぶんだよ」
とアミは笑って、
「でも、中にはひとりだろうとふたりだろうと、いつもよろこびのほうを選ぶひとだっている。こういうひとはたしかに賢者だよ。だれにも、なににもたよることなく幸せになれるんだからね。どんな中毒にもなっていない」
「中毒?」
「そう、だって、なにかに、あるいはだれかに依存しすぎるっていうのは、それがたとえ双子の魂でも、お母さんでも、子どもでも、おばさんでも、ネコでも、好きな虫でもなんでもよくないことだよ。だって、それは人々を奴隷化して、魂の自由をうばってしまうことになるからね。でも、魂の自由なしには、ほんとうの幸せなんてありえないからね」
「じゃ、愛は中毒なの?」
とぼくはひどく混乱して聞いた。
「もし、幸せになるのがほかのひとしだいだとしたら、そうだよね」
「でも、それが愛というものよ?アミ」
そうビンカが言った。でもアミは同意しなかった。
「それは執着だよ。依存だし、中毒だよ。ほんとうの愛はあたえるものだよ。愛するひとの幸福に、幸せを感じられることだ。いつも自分のそばにいることを強要したり、ひとりじめしたりすることでなくてね。でも、きみたちはまだそういったことを理解するには幼すぎる(きっと、たくさんの読者もおなじかもしれないけど……)」
ビンカはとてもがんこだったし、ぼくに対する気持ちも大きかったので、執着についての小さな宇宙人の忠告に、とても耳をかたむけることはできなかった。
「アミ、わかっているわよ。わたしがいつもペドゥリートと結びついているってこと、たとえ、ものすごい距離があっても、ふたりの魂と魂は結びついているってこと、でも、じっさいにいっしょにいるのとおなじじゃないわ。わたしたちのようにこんなに愛し合っていたら、じっさいに会って、話をしたり、手をにぎったりすることが必要よ。だから、アミ、ひとつとても重大な質問をするわ、いい?ねえ、もう、わたしたちがこれ以上はなればなれにならない方法ってないの?」
ぼくの心に、ほんのいっしゅんだけれど、灯がともったような気がした。でも、アミはとても悲しそうな目でぼくたちを見て、あきらめたようなため息をついて言った。
「それは考えないほうがいいと思うよ、ふたりとも」
ぼくたちはがっかりして、足もとに視線を落とした。
「うそはつかないよ。はっきり言って、きみたちふたりがいま、いっしょになることは不可能だよ。ほんとうにムリなんだよ。少なくともおとなになるまではね」
「どうして?アミ」
「それはおとなしだいなんだよ。いっしょに住むためには、どちらかが自分の住んでいる世界を最終的に捨てて、よその惑星へ行かなければならない。そうだろう?」
「うん、そうだよ」
「ぼくがそれを手伝うとすると、ふたりともまだ子どもだから、自分の世界を捨ててよその惑星へ行くには、保護者の許可書を銀河系当局に提出しなければならない」
「上の世界の当局も、下とおなじようにかたくるしいんだなぁ……」
とぼくは抗議して言った。
「うん、たしかに“上もそうなら、下もそう”とはよくいうけどほんとうのことだ。でもいくらかちがいがあるよ。きみたちの世界では書類だけが重要だけど、“上”の世界では愛がもっとも重要視されるんだ。銀河系当局は、名字でも、血液型でも、書類でもなく、だれがその子をいちばん愛しているかということで、子どもの“保護者”とみなすんだよ」
「ああ、そのほうがずっと公正だね……」
「ペドゥリート、きみのばあい、きみに許可をあたえられるのはおばあちゃんだ」
「ぼくのいとこのビクトルは?」
「彼のばあいはダメだ。必要な愛がじゅうぶんにないからね」
「これは初耳だ。ちょっとショックだけど、むりもないね。おたがいにあいいれないところがあるからね」
「わたしのばあいは、アミ?」とビンカが聞いた。
「クローカおばさん。でも彼女は結婚したばかりだ。きみの新しいおじさんもきみにとても愛情をもっている。だから彼も“保護者”とみなせるね。で、どうなの……きみたち、その許可を取れると思う?」
そう言われてぼくたちは、きゅうにしょんぼりしてしまった。そんなたくさんのひとの許可を取らなくっちゃならないなんて……。でも、しばらくしてから、ぼくかビンカのどちらかいっぽうの許可だけ取れればそれでじゅうぶんなのに気がついた。
「かたほうの許可さえもらえばいいんだね。アミ?」と明るくふるまって言った。
「うん、でももし、ビンカに許可がおりなかったとしたら、そのときペドゥリートはキアに行って住める?」
「ウ――ン……」
それを聞いて、とても気が重くなってきた。たとえ、ぼくのおばあちゃんが許可してくれたとしても、ぼく、おばあちゃんをたったひとりおいてなんかいけない。だってぼく、おばあちゃんのこと、とても愛しているし、もしそうなったら、とても悲しいよ……。
でもビンカは、ずっと元気な声で言った。
「たぶん、わたしのおばさんはまったく問題ないと思う。だって結婚してからは、わたしのことなんかまるで眼中にないんだから。でも、わたしの新しいおじさんのほうは、ちょっとかんたんにはいかないと思うわ。ゴロおじさんはとてもいかめしくて、きっちりした生活習慣をもっていて、彼なりの責任というものにとてもこだわっているひとなの。なにか、とても道徳的で、正式の教育をわたしにあたえたいといって、わたしの勉強や時間のすごし方をおばさん以上に見はっているの。だから、もし、すべてほんとうのことを言ったなら、たぶん……」
「彼らはすべてほんとうのことを知らなければならない、ビンカ。愛にかんすることだからね。愛はなんだったっけね?……」
「愛は神だ!」とふたりとも前回のレッスンを思いだして元気に言った。
「そのとおりだ。だったら愛の領域においては不正があってはならないだろう。だから、その許可はきれいなかたちで手に入れなければならない。それにきみたちは愛し合っているのだから、なおのこと不正があってはならない。少しでも不当なおこないをすれば、その愛はもう神聖さをなくしてしまうからね。愛がうそとかペテンとか裏切りとかによってよごれたとき、神はもう魔法や幸せをあたえなくなってしまうんだ」
ぼくたちは共犯者にむけるような目でおたがいを見た。
「愛が幸せを生みだすっていうことは、きみたちもう気がついていると思うけど、どう?」
ぼくたちは見つめ合い、ほほえみ合い、そして、それはまぎれもない真実だとうなずいた。
「でも、どんなにすばらしい関係だって、ケンカや不平不満だらけの、レベルの低いものになりさがるのはあっというまなんだ。ほんのちょっとのうそやかくしごとが原因でね。
もとにもどそうとしたって、なかなかうまくいくものじゃない。傷はいつまでものこるんだ。これが不正をともなった愛の結果で、“神を汚す”ということなんだよ」
「うわ……」
「愛とは神からの恵みなのだから、それをいつも尊重し、たいせつにしなければならないということを、ざんねんながら人々は忘れがちなんだよ」
ぼくはこのときまで、こんなにはっきりとは理解できないでいた(これもまた、学校では教えてくれなかった)……。このときぼくは、ぼくたちの人生にあらわれてくれた神に心からかんしゃした。そして、“神を汚さない”ためにも、ぼくたちの愛が生んだ幸福を失わないためにも、けっしてビンカに不正なことはしないと誓った。
「わたし、そのこと、前から直感していたと思う、アミ。また許可のことにもどるけど、わたし、おじさんによその惑星へ行くなんてこと説明できないわ。だっておじさんは、知的生命体が存在するのはキアだけだって、かたく信じこんでいるんだから……」
「地球とおなじで半知的といったほうが適切だけれどね。だって、ほんとうの知性のあるところには苦悩は存在しないんだからね」
アミは笑って言った。
ぼくは自分たちの問題が気になっていた。だからぼくは断固としていった。
「ビンカのおじさんをなんとか説得するしか方法はないよ」
「それはムダなことだよ、ペドゥリート。ぼくはここにくるまえ、最新のコンピューターで彼の心理調査をしたんだ。その結果は不ー可ー能とでている。ゴロは許可を出すつもりはまったくないんだ。ラバのように、一歩もひくつもりはないんだよ」
「ラバって、わたしなんだか知らないけど、そんなことどうでもいいわ。でも、こうなったらやるだけやってみるか、それとも、あとは死ぬしかないわ」
とビンカはなみだを浮かべて言った。
「そうだ!いっしょになれるか、死ぬかのどっちかだ!」
ぼくもはげしく感動しながらさけんだ。
「まったく、なんていうことだ。これじゃテレビのメロドラマだよ」
とアミは笑いながら言った。
「でもほんとうにきみたち、そこまでして戦うつもりなの?」
「もちろん!」
とふたりで答えた。
「よーし、そこまで言うのなら、状況は少し変わってくるだろう。だって、もしもほんとうに愛し合っているふたりが心をひとつにして戦いを決意したばあいには、そこからとても強力な力が生まれてくるんだよ。そう、愛の力がね……」
小さな希望の灯がぼくたちのハートの中にともった。
「コンピューターの結果では、ゴロがゆずるのは不可能とでている。にもかかわらず、いま、きみたちは“死”まで決意して戦おうとしている。なんてドラマチックなんだろう、ハッハッハッ……でもそう決心したんなら、みんなで力を合わせて、徹底的に戦おう。愛は科学的なデータをはるかにうわまわるものだし、愛こそが銀河系を動かしているんだから。そして、信念がもっとも高まったとき、愛というかたちをとる。きみたちの中にはもう、それが生まれているようだね?」
「まちがいないよ!アミ」
「すばらしい、これでわずかな可能性が見えてきたよ。でも、言っておくけど、けっしてやさしいことじゃないよ。かんたんにいかないからとか、なかなかことが進まないからといって絶望的になっちゃダメだ、わかった?……じゃ、みんなで力を合わせて戦おう!」
とアミは言って、そうじゅう席にすわりなおし、そうじゅう棹を動かした。円盤が動きはじめると、ぼくたちをふりかえり、ドラマチックにさけんだ。
「じゃ、みんな、ビンカのおじさんを説得に行こう!」
「うん、行こう!」
ぼくたちは笑いだしていた。よろこびと希望で、胸がいっぱいだったから。
【感想】
愛と執着と依存と中毒の話題の中で、アミが核心を伝えてくれています。
「ほんとうの愛はあたえるものだよ。愛するひとの幸福に、幸せを感じられることだ。」この言葉は、頭では理解できるけれど、実践するとなると難しい。。。だからこそ、心響学が存在する意味があるのかも、と思っています。
また、アミはビデオゲームに関しても耳の痛い話をしていました。「頭をゆがませる危険性がある」とか「心の中に、人生の見方をひずませるようなあとをのこしていく」とか。ゲームは歓びや達成感やリラックスや集中を生み出すものとして捉えている人が多い人にとっては、この意見を受け入れるのは難しいですね。。。全てはタイミングですね。
さらに、アミが「愛はいつも近くにいるよ。たとえ、だれかがすぐ近くにいなくてもね」と言っています。わたしもそれを信じています。そしてペドゥリートが言うように、そのことはとても美しいことだと感じます。ただ、愛に関して、わたし自身、そのパワーがどのくらい最強なのか、という点がまだ実感てきていないことも認めざるを得ません。そこでもアミは「愛は科学的なデータをはるかにうわまわるもの」と言っています。ペドゥリートとビンカがのように、どのくらい本気か、勇気を持って進めるかということなのでしょう!アミが簡単にいかないからといって絶望的にならないで、と言っています。常に、強く希望を持ち続けること。それを今の自分に言われている気がします!



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