【朗読】36)『もどってきたアミ』第18章 またね……アミ
- 学 心響
- 9月22日
- 読了時間: 18分
エンリケ・バリオス著の『もどってきたアミ』の朗読と個人的な感想です。
【文字起こし】
(漢字表記も含め全て原文のままです)
第18章 またね……アミ
「きみの家族が下で待っているよ」とアミは思い出させるようにビンカに言った。
「わたしの家族なんかより、ペドゥリートのほうが大事だわ……」
とビンカはぼくの手をにぎったまま言った。
「きみじしんの小さな家族じゃなくて、大きな家族、キアの人類のほうを言っているんだよ。きみの使命と、この世界にくる前に交わした約束を忘れないようにね。
もし、きみのようなひとが、愛のみによって動いているわれわれの神聖な宇宙計画について、よい知らせをひろめなかったとしたら、人々は相変わらず、われわれのことを冷血な怪物の侵入者と考えつづけるだろう。われわれは、われわれの出現によって多くのひとが恐怖をいだいたり、ショック死したりするのを平気で見ていることはできない。だから、もしだれも愛の種をまくことをしなかったとしたら、いったいどうやって破滅をさけることができるの?」
「たしかにそのとおりよ、アミ。でも、わたしとペドゥリートとのこの新しい関係は……」
「少しも新しいことじゃないよ。永遠のことなんだ。それを実現するには永遠の時間があるよ。でも、いまはなによりもきみたちの約束を果たすことが先決なんだ。もっと先になれば、また会えるからね」
「でも、きっとそれは別の人生でのことだろう」
と、ぼくは落胆して、かなり悲観的に言った。
「すでに言ったように、またつぎの本を書いたあとでのことだよ。それとも、ぼくのことをうそつきだと思ってるの?」
ぼくたちは目をかがやかせて見つめ合った。
「ほんとうに!?」
「ほんとうだよ。いつか、きみをむかえに行くよ、ペドウリート。そしていっしょにビンカのいるキアへ行こう。それからきみたちにはまったく思いもよらないところへつれていってあげるよ……」
「その思いもよらないところって、どこ?ねえ、教えて!」
とビンカが待ちきれない、といった口調でたずねた。
「うん、外部に第三段階の文明がある世界だよ。地球やキアのようにね。でも、その惑星の内部には第四段階の文明があるんだよ。それなのに第三段階のひとたちは第四段階の文明が存在していることをまったく知らないでいるんだ……」
「うわぁー、すごい!」
アミの約束は、ぼくたちのつらい別れを忘れさせた。
「で、そのほかには?」
「うん。海底にある文明、それに人間によってつくられた完全に人工的な世界。それはきみたちの想像の枠をはるかにこえたものだよ」
ポカンと大きく口をあけたぼくたちを見て、アミは笑って言った。
「じつはそれはなんと巨大な宇宙船のことなんだよ。それが、もっともすぐれた文明のかたちなんだ……宇宙に文明は数百万とあるんだよ」
ぼくは、少し考えたあとで言った。
「人工的なほうがずっとすぐれているって……よくわからないけど、ぼくは自然といっしよに生きるのが、いちばん進んだ生き方かと思っていたよ」
「人類が考え、つくり出したもので、愛の法に調和しているものは、みな自然なんだよ。人類が永遠の原理と調和して行動するとき、宇宙のすべてが人類の資産となる。この資産はできるかぎりの想像力や技術を使って、幸福のために利用することができるんだよ。
それはまた、一人ひとりにとってもおなじことなんだよ。自分の魂が想像したことすべては実現可能なことだから、もしほんとうに望んでいることなら、努力と持続と信念をもってぜひとも実現すべきなんだよ……。でも、きみたちは、世界から武器をなくすだけで、世界じゅうの飢餓や苦悩を解消できるということを夢にすら思い描いたこともない。きみたちの世界がたった十五日間で、武器のためにどのくらいお金を使うか知っている?」
「う~ん。まったくけんとうがつかない」
とぼくは言った。
「そのお金で、世界じゅうのひとが何日くらい食べていけると思う……?」
「エーと、十五日間使う軍備費だけで、世界じゅうのひとの食糧がどのくらい賄えるか……うーん、すごい数だし……」
想像がつかなかった。
「わたし、おなじ日数くらいだと思うわ。でも、そうしたらえているひとがひとりもいなくなるわ!」
とビンカが言った。
「いや、いや、とんでもない。十五日どころか、何年もだ!何年もだよ。たった、十五日間の軍備費で、世界じゅうの人口のぜんぶのひとが何年もじゅうぶんに食べていけるんだ」
「そんなこと、とても信じられないよ!!」
ふたりともおどろきと怒りを混じえてさけんだ。
「でも、武器だけで?」
「戦争に関連しているものすべてだよ。いろいろな新しい武器の破究開発動や戦争兵器の製造など……いや、じっさいにはそれ以上の額になるよ。だって、たいてい目額な出費は“科学計画”などといった名目にカモフラージュされているものの、その最終目的は敵を支配しようとするものだからね。
もし武器や兵器にお金をまったく使わないとしたら、飢えるひとはひとりもいなくなるどころか、すべてのひとが大金持ちのような生活ができるんだ。すべてのひとがだ!だれも飢えやさむさを心配する必要もなければ、いつもじゅうぶんな数の快適な病院があり、貧しい国も富んだ国もなくなる。すべてのひとがみな、王さまのようだよ。そのうえ、自分たちの子どもの未来になんの恐怖もいだかずに、安心してねむれるんだ」
「じゃ、わたし、わたしの国に武器をなくすように提案するわ」
とビンカが言った。
「でも、それはまだまだできないよ。すべての国がおたがいに同意し合って、平和的に続一していかなければならない。たとえ、いまのところ夢のような話であっても、その大きな理想をかかげ、それをじょじょに浸透させ育てていかなければならない。でもいまのところ、それを実現するには大きな障害があるんだ。だって、富んだ大国が貧しい国を食いものにしているからね……」
「神はもうこんな悪いこと、許しつづけるわけないわ」
ビンカははげしい口調で言った。
「まだ、相変わらず神がなにかしてくれるとでも思っているの!?!神は愛だ。愛はきみの心の中に住んでいる。その愛が、きみたちの世界をまっすぐにする努力をひき受けるよ。
でも、きみたちじしんで行動すべきなんだ。すべて平和的な手段を通してね。押しつけるのでなく教えてあげることだ。すべてのひとが、平和的におたがいに同意し合って、あとにつづいていけるような道を示してあげることだよ。
神やだれかがやってくれるのを待っているのではなく、自分たちで行動することだ。ただ、待っているだけだとしたら、たどりつくところは、破壊だけだよ。さいごにだれかがボタンを押すのを待つだけになるよ……」
「もし、そうなったら、きみたちは光線を発するとかして、そのボタンを押せなくするの?」
「もし、きみたちがボタンを押すのを許したんだとしたら、きみたちの世界は、けっきょくそれだけの水準しかなかったということだ。われわれはまったく干渉できない。ただ、統一と平和と愛をひろめようと努力し、それに貢献したひとたちを救出することしかできない。いまのような危験なときには、その仕事がとても重要であり必要なんだよ」
「じゃ、別のことに従事すること、たとえば大量の食糧を手に入れるためにはたらくとかいうことは、役に立つことじゃないの?」
「すべて必要だ。でも、いつもまず優先すべきことがある。もしきみの子どもが空腹だったとしたら、第一にしなくてはならないことは食糧を手に入れることだ。でも、空腹であってもいままさに断崖絶壁から落ちる寸前だとしたら、まずさいしょにしなければならないことはなんだろう?食糧をさがすこと?それとも断崖から安全なところへたすけ出すこと?」
「とうぜん、断崖からたすけ出すことのほうが先決だよ」
「きみたちの世界はいま、その子どものような状態なんだよ。子どもには食糧も衣類も、そして文化や芸術や好ましい環境や医師や、あるていどの快適さ、知識、慈しみなどが必要だ。でも死にかけている子どもに第一にしなければならないことは、そのいのちをすくうことだ。そして、もういのちに危険がなくなったときにはじめて、そのほかの必要なすばらしいものをあたえてあげることができるんだよ」
「“子ども”を死なせないためには、どんな方法があるの?」
とぼくにはそれが人類のことを意味しているのだとわかって聞いた。
「きみたちしだいたよ。さっきの絶壁の子どもの例をつづけるけど、三人のきょうだいが絶壁にぶら下がったままの小さな子どもの服をつかむことができたとする。でも、もちあげるだけのじゅうぶんな力がないとする。そのばあい、いったいどうすべきだと思う?」
「うーん。たすけを求めてさけぶよ。両親や別の兄弟やだれかを呼んだりして……」
「ちょうど、そのためにあるんだよ、きみたちの本はね。警告やたすけのさけびなんだよ。もし、三人の子どものうち、ひとりがもうダメだとあきらめてどこかへ行ってしまったとする。そうしたらいったいどうなると思う?」
「たぶん、ほかのふたりもつかれ果てて、小さな子どもを支えきれなくなるかもしれない……」
「そのとおりだよ。だからこの仕事は、あきらめて手をひくひとが多ければ多いほど、それだけ危険度も高まっていくんだよ……おそらく、きみの参加・不参加が、この均衡のかたむきを左右するだろう。
そう、きっときみの世界は、きみの惑星の運命は、この本を読んでいるきみの行動しだいだろう。きみがきみの惑星のすべての運命の決定をくだすことになるだろう」
(アミは、ぼくたちに、この言葉をそっくり、ぼくたちの本にのせるように言った。これはより高い宇宙のシステムのことを反映しているとのことだ。よくわからないけど、読者への“さけび”としてアミの言ったとおりに書いておく)
「おなかすいた?」
とアミが言った。
とてもメランコリーな状態にいたぼくたちふたりに、その質問は、ずいぶん失礼なものに感じられた。
「ほら“バッテリーの充電”が必要だ。ここにすわって」
アミは、ぼくたちのえりくびに、十五秒の充電で八時間の睡眠に値する装置をつけた。目ざめたとき、すべてがかんぺきだった。もう悲しみものこっていなかった。それどころか、とてもすっきりした気分だった。でも、少しずつ、あのつらい別れが思い出されてきた。たとえ、もう以前ほどではなかったにしても……。
「こんどまた、きみたちに会うときには、もっと別のことをいろいろ話そう」
ビンカはぼくをあまく悲しい視線で見た。そして、そのあとアミを見て言った。
「わたしがアミを待ついちばんの動機は、新しいことを知ることでも、知らない惑星につれていってもらうことでもないわ。ただペドゥリートに会えるということだけよ」
ビンカはぼくのよこにきた。ぼくたちはまた手をにぎり合った。
アミは立ちあがった。
「きみたちは、ほんとうに“雑音”をたてすぎるよ。ぼくは、ちょっと頭をすっきりさせるために、数分、瞑想してくる。そのあいだ、きみたちは、おたがいに別れをつげ合ったり、嘆き合ったり、ぐちったり、床をつめでひっかいたり、反乱を企てたり自殺をこころみたり……とことんムダな悪あがきをしたらいい。そして、そのあとでビンカはキアへ、ペドゥリートは地球へもどっていくんだ」
とアミは言いながら、例のへやの中へ入ってとびらを閉めた。
悲しかったけれど、アミの言葉には思わずほほえまずにはいられなかった。たぶん、ぼくたちを元気づけようとして言ったんだろう。
別れ
このさいごの部分はぼくにとってあまりにも悲しく、そしてプライベートなことだ。だからさいごまでくわしく語るのはやめようと思う。申しわけないけど理解してほしい。
もし、この本を読むひとが、ぼくたち子どもや子どもの魂をもったひとだけだったとしたら、少しも問題はない。でも、いつ、予期せぬときに、暗闇にひそんでいるおとなの手にわたるかもわからない。
もし彼らが善良な宇宙人の存在する可能性とか、宇宙人が世界の統一や、公正で平和な世界の建設のために闘っているなどと聞いたら、せせら笑うのはまちがいないことだし、愛が宇宙の基本法だなどと聞いたら、身をよじって笑い出すであろうことは目に見えている。だから、彼らの前では真実とか感情のデリケートな部分のことといった深刻な話はしないほうがいいんだ。
そのことは、いつだったか、いとこのビクトルの本を読んでいたとき、引用されていた中国の古い格言にもあった。いま、はっきりとはおぼえていないけれど、だいたいつぎのようなものだった。
“おとなに愛について語ると
大声で笑い出す
もし笑わなかったとしたら
真実の愛について語らなかったからだ”
ビンカは行ってしまった。ぼくはひとりきりになった。でも夜、ねむる前に目を閉じて、心を静めると、何分かしてから、彼女がぼくの中に入ってくるように感じる。
なあに、子どもの考えることだよ……。
地球にもどっていく旅のとちゅうで、アミは過去の映像をいろいろ見せてくれた。ほんとうのキリストやシーザーやそれから……うん、もうあまりはっきりおぼえていない。ああ……そう、ぼくじしんの赤んぼうのときのすがたとかもね。でも、ぼくはなににも興味がもてなかった。ぼくは瞑想するために例のへやに行った。そして、アミが呼びに来てくれるまで、ずっとそこにとどまった。
「ペドゥリート、ついたよ。もし地球が自滅してしまったときにそなえて、救出したひとたちが住めるように用意してある世界にね。さあ、おいで」
そう言われてもあまり興味もわかず、アミへの礼儀のつもりで外をちらっと見た。ぼくたちは、あの温泉場の砂浜の上にいた。夜が明けかけていた。
「ここは地球じゃないか!!」
とまったく理解できずにさけんだ。
「そうだよ。ここに生きのこったひとたちが住むんだ」
「で、でも……ぼく、別の世界かと思っていたよ……」
「別の世界になるよ。平和で不正のない愛の世界にね。もし破壊が起こったとしたら、われわれがなんとか全滅にまでいたらないようにするよ。大惨事の起こる前に救出する必要のあるひとたちをすくい出し、そのあと、汚染され、破壊された惑星をきれいにして、彼らをそこにもどし、そこに美しい世界を建設できるようにするんだ。もっとも、破壊することなく、そこにたどりつくのがいちばん望ましいけどね……」
「きみは別の惑星を用意しているって言ってたよ……」
「そうは言わなかったよ。世界について言ったんであって、惑星の名前は言っていない。それは、ほんとうはここなんだよ。前に見た地襲対策の仕事も、この新しい秩序のためでもあるんだよ。さあ、元気を出して!地球が全滅するということはないよ」
そう言われても、うれしくも悲しくもなかった。ただ、ビンカのことだけを思っていた。アミはなんとか楽天的にふるまって、ぼくの気持ちを少しでも明るくしようとした。
「じゃ、つぎの旅、こんな映像を見せてあげるよ。“おしめをしたペドゥリート”!想像してごらん、ビンカが見たら、大笑いするよ」
ぼくはアミに、元気が出なくてごめんなさい、と言った。彼は、気持ちはよくわかるけど、そんな悲しみなんかまったく無意味だし、すぐに消えちゃうよと言った。
円盤のとびらがあき、黄色い光がついた。ぼくたちは、つよくだき合った。
ぼくは、“さよなら”と言って、ぼくを海岸へとみちびく光彩の中に入っていった。
「さよならじゃないよ。またね……だ」
とアミがぼくを元気づける声を、おりるとちゅうで上のほうから聞いた。
前のときとおなじように砂浜にぼくの足がついてから上空を見あげてみたけれど、なにも見えなかった。“UFO”は視覚不可能な状態にいた。
そのとき、とつぜん大きな騒ぎ声がビクトルのテントの中から聞こえた。
「ウワァー……た、たすけてくれーッ!」
ぼくのいとこがテントの中からすごい勢いでとび出してきた。
その悲鳴は、ぼくを感傷的な気分からすぐに現実にひきもどした。
「どうしたの!? ビクトル!」
「ペ、ペドゥリート……テ、テントの中に……すごおく……でかい……!」
とビクトルは息をハーハーさせながら言った。
「ビクトル、いったいなにがあるっていうんだい?」
「ぞ、ゾウだ!」
「エーッ!?ゾウだって?そんなこと言ったって、こんな小さなテントの中にゾウなんて入れるわけないよ」
「ほんとうだよ。ほんとうにいたんだよ。すごおくでかいやつが。そのでかい足を胸の上に感じたとき、とつぜん目がさめたんだ。踏みつぶされる寸前だった。なんとか運よくにげ出せたけど……」
すぐに、なにが起きたのかわかった。アミが遠隔催眠をかけてビクトルをからかい、ぼくを悲しみからぬけ出させようとしたんだ。それはあるていど、成功した。ぼくはしっかりとした足どりでテントへむかった。
「あぶない!もどれ、ペドゥリート!」
ぼくはテントの中に頭をつっこんで、中をのぞきこんだ。
とうぜんのことながら、中は空っぽだった。
「なにもいないよ、ビクトル」
ぼくのいとこは、まったくとほうにくれていた。
「で、でも……」
「きっと夢を見ていたんだよ」
ぼくたちはたき火をおこして朝食の用意をした。
「どうしたんだい、そんな悲しそうな顔をして」
とビクトルは、ぼくの落ちこんでいるようすを見て言った。
すぐにぼくは、あの件を永遠に封印するためのいいアイデアが浮かんだ。
「うん、岩に行ってきたんだよ……」
「いつ?」
「ビクトルの起きるちょっと前に。だからさっきビクトルがぼくをテントの外で見たのは、ちょうど岩から帰ってきたところだったんだよ」
「おれがあんなに言ったのに、ちっとも言うこと聞かないで!まったく……で、どうした?あったのか?」
「ぼくが悲しんでいるのを見ればわかるだろ?」
もう、そのときには、他人がどう考えようとどうでもよかった。もう、アミの存在について、だれにもなっとくさせる必要を感じなかった。ぼくが確信しているだけで、もうこれからはじゅうぶんだった。
「やっぱり、そうだろう。おれの言ったとおりだ。夢だったんだよ」
「ビクトルのゾウとおなじように?」
「そ、そう。そうだよ!それとまったくおなじだ。現実そっくりの夢っていうのもあるんだよ。でも、たんなる夢にすぎないんだ。想像と現実を混同するのはよくないことなんだよ。わかったかい?」
結論
“想像と現実を混同するのはよくないことだ”。でも、アミは“ひとはみな、一人ひとりが自分の想像しうる世界の中に住んでいる”と言った。
そしてまた、こうも教えてくれた。
“自分の魂が想像したものはすべて、実現可能なことだから、努力と持続と信念をもって実現すべきだ”と。
武器が支配している、かたく冷たい世界を信じるかわりに、ぼくは愛が支配している世界を信じる。もしおなじ夢を見るひとがたくさんいるなら、きっとそれは実現するにちがいない。
おとなたちの嘲笑や武器や“そんなことムリだよ……”のセリフは、おとなたちにまかせておけばいい。
子どものハートをもったぼくたちは、あのくまん蜂のようになろう。あのまるまる太った重いからだに小さな羽じゃ、航空力学の常識からすると、けっしてとぶことができないという。それは“科学的に実証されている”。でも、科学者の言うことなどまったく知らないその無知な虫けらは、無分別に、そして大胆に大空に身を投げる……そしてすべての蜂の中で、もっともじょうずに空をとぶという……。
ひとにぎりの“くまん蜂”の精神で、小さな子どもは断崖から落ちずにすむ。少なくともぼくのおとぎ話の中では……。
もうひとつの結論または続・結論
(だって、すべてに名前をつけなくっちゃいけないから……)
それほど遠くない海岸に、高くてかたい岩がある。その岩のてっぺんに、だれだかふしぎなひとが翼のはえたハートのマークをきざみこんだ。でも、それを見つけることができるのは、ただ、汚れなくむじゃきに遊んでいるひとだけだという。
そして、ざんねんなことには、ほんのわずかの子どもたちしか、それを見つけることができなかった。子どもはおとなよりもみな敏捷で身が軽いにしても、子どもの中には汚れなく遊ぶ子もいれば、とてもおそろしい遊びをする子もいる。
この岩は、まさにそのすばらしい世界への出発点であるから(そのすばらしい世界のひとたちは、いつもそういうふうに遊んでいる)、おそろしい遊びをするひとや、ときどき汚れなく、そしてときどきねむって、おそろしい遊びをするひとを受け入れるという危険を犯すわけにはいかない。それが即、美しい世界を破壊する原因につながりかねないからだ。
さらにまた別の結論または続・続・結論
それを知っているひとの話では、あるひょうきんな老人が、あの岩のてっぺんまでのぼりきったということだ。村人たちは夜じゅう、空にとてもきみょうな光を目撃した。よく日、若送った老人は、陰気で痛んだ都会にむけて元気に出発していった。なんでも“小さな子ども”をたすけるんだというようなことをつぶやきながら……。
終わり?
人類が分裂しつづけたままで
手に剣をもって不正に生きつづけ
地球や人類の相続遺産を破壊しつづけ
愛に無知でいるかぎり
【感想】
アミは「自分の魂が想像したことはすべて実現可能なことだから、もしほんとうに望んでいることなら、努力と持続と信念をもってぜひとも実現すべきなんだよ……。」と言いました。これを私なりに少し解釈を加えると、「自分の魂」が想像したことは決してエゴ(自我)からではなく、地球全体のためになること、自分を含めて他者のためにもなることは、全て実現可能なのだと思います。それを、ハナから無理だと決めつけているのもわたしたちではないでしょうか?その点をもう一度確認したいと思いました。
また、アミは「神やだれかがやってくれるのを待っているのではなく、自分たちで行動すること」に言及しています。やはり、この点においても、誰かがいつかやってくれる、という他人任せになっている可能性があると思いました。運命を受け入れるのは、自分たちがやれることをやり切った後だ、ということを忘れてはいけないことを思い出させてくれます。
最後の部分で、ペドゥリートがとても大切なことを思い出させてくれました。それは「アミの存在について、誰にも納得させる必要を感じなかった。ぼくが確信しているだけど、もうこれからは十分だった」という点です。そうですよね!誰にも、それを証明しなくてもいいんです。自分が確信を持って、その世界観で生きていること。それによって誰かを不幸にしているわけではないのであれば、その世界観を誰かが認めてくれるとか、その世界観を支持している人が何人いるか、とかはもう関係ないのです!わたしが信じる愛のある世界観で生きていく歓びをただひたすら味わいたいと思いました!
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