【朗読】34)『もどってきたアミ』第16章 アミの両親が教えてくれたこと
- 学 心響
- 9月7日
- 読了時間: 21分
エンリケ・バリオス著の『もどってきたアミ』の朗読と個人的な感想です。
【文字起こし】
(漢字表記も含め全て原文のままです)
第16章 アミの両親が教えてくれたこと
スクリーンに八歳ぐらいの笑顔のかわいい女の子があらわれて、とても感じのよい視線でぼくたちを見た。
アミは「シュー」とか「シィー」とかいった、やわらかい音から成る言葉で、彼女にささやきはじめた。
スクリーンの女の子もおなじ言葉で話している。すぐに翻訳器を通して会話の意味が理解できた。
「やあ、ママ」
とアミが言った。とても大きなおどろきがぼくとビンカのふたりをおそった。
「よく帰ってきたね。ちょうどいま、ケーキの準備ができたところよ。そこにいる友だといっしょに来られたらいいのにね。どこの子たちなの?」
「未開世界からきているんだよ。救済計画に参加して“親交世界”に入るのに必要な度数に達するための努力をしているんだよ。彼女がビンカ」
「こんにちは、ビンカ」
とアミのお母さんと思われる小さな女の子が言った。
「そして、彼がペドゥリートだよ」
「こんにちは、ペドゥリート。うーん、この子たちふたりは双子の魂のようだけど、違った惑星からきているようね。こんなことがあるの?」
「それぞれ自分たちの惑星を救済する使命をになっているんだけれど、もともとは“親交世界”からきているんだよ」
「そんなにはなれていて、さぞかしたいへんでしょうね。そんなに若くて……」
とぼくたちをとてもやさしいまなざしで見た。
こんなに小さな女の子から、ふたりとも若いなんて言われているのは、ちょっとヘンな気持ちだった……。
アミはお母さんを静かに見ていた。テレパシーで会話していることはわかった。女の子はなにかを理解したとみえて、ぼくたちにこう言った。
「戦いなさい。あなたたちの世界の平和と統一と愛のために。たくさんの困難や無理解が取り巻いているでしょう。でも、宇宙最大の力はあなたたちの味方ですよ。きっと、さいごには種は芽を出し実を結び、平和と統一が実現するでしょう。
それからあなたたちの住んでいる物質世界の誘惑にはじゅうぶん注意してね。どうして自分たちが未開世界にいるのか、そしてどこからきたかということをいつも思い出すようにね。あなたたちの世界は幻想とうそが支配しているわ。あなたたちの魂が、はかないせつな的なもののほうに傾かないように。現実を、真実を、そして愛をいつも維持するように。子どものようにむじゃきでいること、でも軽率でなく用心深くね。むじゃきさと用心深さ、そして平和と自衛のむずかしい均衡をたもつように。それからあなたたちの幼い精神が、周囲を取り巻いている悪意に支配されないように。だって、その精神を維持することが、あなたたちとあなたたちの世界をすくうことになるんだから。
いたるところであなたがたを待ちぶせている悪から目をそむけたり、だまされたり弱められたりすることのないように、すくわれるために必要な均衡を維持するように。それらのために必要なのは“足は大地に、理想は高く、心には愛を”なのよ」
「きょうは、もうこれでじゅうぶんだよ、ママ。もし、このままアドバイスを言いつづけたら情報中毒になって、いままでのことまでみんな忘れちゃうよ」
とアミは上きげんで言った。
「わたし、この子たちに感動するわ。すばらしいことよ、暗闇の中で生きている数百万の魂に奉仕できるなんて。ほんとうにとっても大きな特権だわ!」
「うん、ママ。でも未開世界のことを思い出して……毒虫やくもやへびやマンバチャ……。これらは有史以前のものだよ。それに、おぼえている?拷問や銃や機関銃、そしてたくさんの人命を奪う原子エネルギー、破壊された自然や汚染された環境、餓死するひとたち、現状をまったく理解できないでねむっているひとたち、偉大な、だけど愛に対してはほとんど無知な知識人たち」
「それにテリ」
とビンカはふゆかいそうに言った。彼女にとって諸悪のもとはすべてテリにあった。
「そのテリって?」
「キアの進化過程にブレーキをかけているひとたちだよ、ママ。テリに相当するひとたちはどこの未開世界にもいる……もちろん、すべてのテリがおそろしいひとばかりとは言えないけれど……」
「ああ、思い出したわ。それに前に言ったこともね。そうだとしても、やっぱりすばらしいことよ。ひとつの人生を奉仕のためにささげられるっていうことはね。しかもそれがほんとうに必要な世界に」
「でも、ママ、この生まれ変わりの奉仕の人生は、“文明世界”のことをみな忘れて、愛の重要さまでも忘れての奉仕だっていうことも思い出してね。そのうえ、子どものときから、まちがった教育や悪い習慣や迷信を教えこまれるんだ。それらが障害になって、ますます下に堕ちていきかねない、とても危険な使命なんだよ」
「そのとおりね。もし、じゅうぶんなつよさがなかったとしたら、とても危険ね。注意してね。でもいつも愛にしたがって行動していれば脱線するようなことはないわ」
アミは別の問題にうつろうとしていた。
「これでもう、ぼくのお母さんをきみたちに紹介したわけだ」
「アミのお母さんって、ほんとうに小さな女の子にしか見えないけど、話しはじめると、ぜんぜんちがうのね」
とビンカが言った。
「外見だけで判断しちゃダメだよ。ぼくのお父さんにも会ってみたいかい?」
「もちろん」
とふたりとも言った。きっとアミのような男の子がもうひとり出てくるんだろうと思った。
「ええと……スクリーンで見つかればいいんだけど……ママ、最近見た?パパを」
「わたしたち、毎晩話しているのよ。いま、キリアにいて新しい脳波のコンデンサーの実験をしているのよ」
「じゃ、きっと研究所にいるよ。ぼくのお父さんは科学者なんだよ」
アミがぼくたちに言った。
「わたしたちはみな“科学者”よ。あなたがたもね。生きる科学を研究し実践しているのだから」
とアミのお母さんがつけ足した。
「やあ、パパ」
アミがよこのスクリーンにあらわれた男のひとに言った。ビンカもほくもじょうだんかと思った。どうしてって、スクリーンにうつった男のひとは、アミともアミのお母さんとも似ても似つかない。それどころかまったくちがった人類だったから。青白い顔色の、ほとんどかみの毛もないおとなだった。ふくれた頭部をして、深い見透すような視線をしていた。
「息子よ、元気かい。ウーム……そこにいっしょにいる子どもたちは第三水準世界の子だね。女の子はたぶん、水晶の蝶の二番目の惑星、男の子のほうは金の鷲の三番目の惑星の子だろう」
「そのとおりだよ、パパ」
「ぼくの惑星は地球といって、ぼくたちの太陽は金の鷲なんて言わないけど……」
「“親交世界”では、宇宙のすべてのものに名前と特別なコード配号をつけたカタログがつくられているんだよ」(訳注:〈神は星の数を数えそのすべてに名をつける〉詩篇147章4節)
とアミのお父さんが説明してくれた。
「パパ、ぼくの友だちをこれ以上混乱させないでよ。ママがもう、かなりこんからからせてしまっているんだから」
「すべての物やひとにコード番号と名前がつけられているのを知ったからといって、べつに問題はないだろう……」
ビンカはおどろいて言った。
「一人ひとりすべてのひとに1?」
「前に話した銀河系の中心にある“スーパーコンピューター”にだよ」
とアミ。
「それに“スーパーコンピューター”は、なんでも知っているって言ってたよね」
ぼくはアミが以前に話してくれたことを思い出して言った。
「うん。そして“親交世界”が未開世界をたえず監視している、もうひとつ別の大きな理由というのは、“スーパーコンピューター”にデータを送ることなんだよ」
「じゃ、みんな“リスト”にのっているの?」
「“きみたちのかみの毛の数まで数えられているよ”と言っても、警察のように監視しているということじゃなくて、保護のためなんだ。ちょうどお兄さんやお姉さんが弟や妹を見守っているような感じだよ」
「わたし、そうしたことはみんな神がするのかと思っていたわ」
とビンカが言った。
「神はなにもしないよ」
アミのお父さんが、きっぱりと言い切った。
まるで異端者から話を聞いているような錯覚におちいった。アミはぼくたちの反応を見て少し笑ったあとで、こう言った。
「もし、豊かな収穫を望む農民が、畑にまったく種もまかなければ水も肥料もあたえず、ただ神に祈ることだけに専念したとする。いくら祈ったにせよ、これでなんらかの収穫が得られると思う?」
「ううん。そのばあいはなにも……。でも、もし種をまいて、神のたすけを待ったとしたら……」
「もし、石を頭の上に投げたとしたら、石はかならず頭の上に落ちてくるよ。たとえ、どんなに神に祈ろうとね」
こんどはスクリーンのアミのお父さんが言った。
「花の種をまけば花が手に入る。いばらを植えればいばらが手に入る」
「じゃ、神はなにをするの?」
とぼくは聞いた。
「神はこの宇宙のすべての遊びを、宇宙を支配する法でもってデザインし、すべての物や魂に、基本的なエネルギーである神の愛の精神をそそぎこんだんだよ。でも、そのあとのことは、神ではなくわれわれじしんがしなくちゃならないんだよ」
とアミは説明してくれた。
「じゃ、どうして神は戦争や不正を許しているの?」とビンカが聞いた。
「神が許しているんじゃない」
とアミは言った。
「じゃ、だれなの?」
「戦争や不正を生み出し、そして、それを許しているのは神ではなく、きみたちじしんだよ」
なんとか、アミの言ったことへの反論をこころみようとしたが、まったくできなかった。アミの言うとおりだと思った。
ぼくの世界でなんどもなんどもくりかえして聞かされていることの疑問。多くのひとが“天罰”とか“神のくだした罰”とかを言う。でも、ぼくには、アミの説明のほうがずっと信じられる気がした。とくに、“神はなにもしない、なにかしなくてはならないのはぼくたちのほうだ”ということは、とてもはっきりと理解できた。
ビンカは、ぼくも疑問に思っていたことを質問した。
「でも、アミ、どうして彼がアミのお父さんなの?まったく別の惑星に属しているひとのように思えるけど」
「そのとおりだよ。ぼくはここで生まれ、お父さんはキリアで生まれた」
「じゃ、まったくちがった世界の者どうしの夫婦なんだね」
「そうじゃない。きみたちがいま、見ているのは、新しい肉体をもったぼくのお父さんなんだよ。ぼくが生まれて少ししてから、彼はキリアに生まれ変わる用意ができた。そこで古い肉体を捨てて、キリアに新しく生まれ育って、いまは科学者になっているんだ。きみたちがいま見ているようなかたちでパパとママはおたがいに連絡を取り合ってね。ぼくのお父さん、こんどはぼくよりもかなり若い……」
「わたしよりもね」とアミのお母さんが言った。
「わたし、まだいまのキリア人としての彼の容姿にじゅうぶんなれていないの。たとえ中身はまったくおなじひとだとしてもね」
ビンカは、いまはそれぞれが別のひとと結婚しているのかどうかを聞いた。ふたりともその質問におどろいて、思わずおたがいに顔を見合わせた。どうしてそんな質問をするのか信じられないといった顔をして息子を見た。
アミはいつものように笑って、こう言った。
「パパもママも、未開世界では双子の魂どうしで結婚するというのはきわめてまれだということを忘れているようだね。離婚はあたりまえのことだし、不貞をしたり、一生のあいだになんども結婚したりする。そのうえ、彼らは、もしふたつのたがいにおぎなうべき魂が出会ったときどうなるかということも、まったく知らないでいるんだ。だからビンカがそう聞いたんだよ」
「そのばあいはいったいどうなの?」
ぼくは聞いた。
「別のひととはいっしょになれないんだよ」
「どうして?なにか法で禁止されているの?」
「そう、愛の法で。でも強制されたものじゃない。ただ、全宇宙のすみずみまでさがしてみても、双子の魂のかわりになるひとは、だれもいないんだよ」
ビンカはぼくを見た。ぼくたちはじゅうぶんすぎるほどなっとくした。
アミのお父さんはスクリーンを通して別のスクリーンにうつっているアミのお母さんを見て言った。
「ところで、いつごろキリアにくるのかね。毎日、精神的には一体だけど、肉体的にもいっしょにいたいものだよ。家庭をつくって、ぼくのそばにいつもいてほしいよ」
アミのお父さんの声はとてもやさしく、その視線はあたたかい愛情に満ちていた。
「わたしも、なににもまして、あなたのそばにいることを望んでいるの。でも、キリアに生まれる水準にまだわたしの魂が順応できていないのよ。もし、いまのからだを捨てたら、あなたの世界じゃなくてまったく別の世界に生まれてしまうわ。だから、いつもキリアに行けるように修練をおこたっていないの。たぶん、もうほんの少しよ。だから、細胞の若返り維持はもう放棄したの。おたがいにあと少しのしんぼうよ」
ふたりの会話は、こんな感じで数分間つづいた。
おたがいの愛情をあまりにオープンに表現していたので、ぼくは、その場にいるのが少し気はずかしい感じがした。
そしてなんだか、自分があつかましい侵入者のような気がしてきて、じっとうつむいていた。
ビンカは、ふたりの会話に目になみだをためてうっとりと聞き入っていた。
彼女がぼくを見た。そのとき、ぼくはとても深い感動をおぼえた。と同時に、アミの両親の気持ちがやっと理解できた。ふたりのとても美しく、深く、かたいきずなをぼくとビンカもいっしょに分かち合っていたのだった。
「それこそ、まさにおたがいの魂がおぎない合うということを意味しているんだよ」
アミは、ぼくたちふたりの内面に起きたことをキャッチして言った。
「それ、どういうことなの?」
とぼく。
「彼女はきみの不足しているものを、きみは彼女に欠けているものをもっているんだよ。ふたつがいっしょになることによって、完全な人間となるんだ」
「ぼくが、彼女にあたえられるものって、なに?」
「きみは彼女の知性を活発にさせ、彼女はきみの情緒を目ざめさせることができるんだよ……。
さあ、もう時間だ。行かなくっちゃならない」
「でもアミ、きみの世界をもっと知りたいよ……」
「もうぼくの惑星の“外部”のいくつかは見ただろう。ぼくの両親にも会ったし、ぼくの村も見た。きみたちの惑星の人々がきみたちを待っているということを忘れちゃダメだよ」
「その“外部”ってどういうことなの?なにかほかにもあるってこと?」
アミはほほえんだあとで言った。
「地球では宇宙にむかって数百万キロもの距離を旅することができるようになった。でも、ほんの数キロメートルひふの下、地球の内部のことがどうなっているのか、まったく知らないでいる。これとおなじことが人々にも言えるんだ。いつも人々はじしんの外部ばかりを見ようとしている。けっしてじしんの内部を見ようとしないんだ。いつも、自分に起こるよくないことの責任や原因がかならず“ほかのひと”にあると思いこんでいる。内的存在をまったく知らないでいるんだ。けっしてそれに注意をはらおうとはしない。でも自分の運命をつくり出しているのは、自分の中のその“存在”なんだよ。そのことについてはいつか話してあげるよ。
きみたちの世界はいま、永遠の破滅寸前だ。さしあたって、まず第一に優先しなければならないことはきみたちの惑星をすくうことだ。それが終わったら、こんどは子どもたちにじゅうぶん食べ物が行きわたるようにし、戦争がけっして子どもたちをおびやかすことがないようにする。そうなったときはじめて、存在や宇宙や精神や科学について深くほり下げて考えるゆとりが生まれる。いまの時点では、もっと人間的な世界につくりかえるのにはもうすでに知っていることを実践するだけで、じゅうぶんなんだよ。
このより人間的な世界を手に入れるための戦いに協力しないのは、その理由がいかなるものであれ、たとえ精神的なものであっても、エゴイズムのあらわれでしかない。つまり共犯関係にあるということなんだよ」
アミのお父さんが息子の言葉につけ足して言った。
「そう、だって“精神的(霊的)なもの”とはすべて愛である内的存在のことを言うんだからね。愛ゆえに、他人の苦悩に対して冷淡をよそおっているわけにはいかないんだ」
「だから、精神性(霊性)とは、ただ、愛それだけを意味しているんだよ」
とふたたびアミ。
「そんなわかりきったことまで、わざわざ言う必要があるの?」
アミのお母さんが言った。
「それが、未開世界ではそんなにわかりきったことじゃないんだよ、ママ。たくさんのひとが、精神性(霊性)をただふくざつな頭脳訓練のことだけだと思いこんでいるんだ。そしてまた別のひとにとっては世の中に背をむけ、苦しみの修行をしたり、禁欲したり、からだを浄化したり、祈りつづけたり、なにかの信仰をもったり……でもただそれたけなんだ。いくらそんなことをしても、もし愛を忘れていたとしたら一文の価値もない。もし、愛があるならそれらを無欲な奉仕に変えるべきなんだよ。いま、きみたちの世界は絶滅の危機に瀕している。平和と統一のためにはたらくこと以上に価値のある仕事はないんだよ」
ぼくは遠い別の世界にいて、こうして宇宙人から教えを受けることができ、また宇宙の基本法を知って、地球に奉仕することができる特権をもたされていることを、とてもありがたいと思った。
彼らと話をしていると、まるで自分が彼らの一員のように、ほとんど彼らとおなじように進歩している感じがした。そして、これから帰らなければならない地球やぼくを待っているいとこのことを考えたら、なんだか自分が彼らより一段階上にいるような感じがした。
そう考えたとき、アミが言った。
「完成にむかう道で、打ち負かさなければならないさいごの敵は、すべての中でもっともはら黒い。その敵を見つけるのはかんたんじゃないんだ、カモフラージュしているからね。ちょうど、あの地球の動物のように……エーと……なんて言ったかな?自分のからだの色を周囲の色とおなじように自由に変えて、じっと動かずにいる動物……」
「カメレオン!」
とぼくはそくざに答えた。
「ああ、それそれ。それとおなじなんだよ。さいごに克服しなければならない点は、ちょうど、そのカメレオンみたいなやつなんだ。それは精神的高慢さ、あるいは精神的エゴという、進化の道をかなり進んだと感じているひとをおそうとてもやっかいなものなんだ。とても見つけるのがたいへんなんだよ。でもその方法がひとつだけあるんだ」
「その方法って?」
「だれかに対して、けいべつを感じるとき、そのひとのことを“精神的にあまり進歩していない”とさげすむ気持ちをいだくたびに、見つけることができるんだよ。まさに、そこにひそんでいるんだ。精神的エゴは、ともすると自分を進歩しているかのように錯覚させるんだよ。そしてびみょうに他人をけいべつするようにさせる。でも真実の愛はだれもけいべつしない。ただ奉仕することを望むのみ。そこにとても大きなちがいがあるんだ」
「じゃ、その精神的エゴをたくさんもっているひとは、その分だけけいべつに値するの?」
ぼくは、学校の同級生で、ミサにあまり行かない友人をいつも非難して、自分が聖人だと思いこんでいるヤツを思い出して質問した。
アミはそれを聞いて笑い、彼のお母さんはやさしくぼくを見て、ほほえんだ。でも、ビンカもぼくも、ぼくの言った言葉のどこがおかしいのかまったくわからなかった。アミのお父さんはかがやいた目で、親しみをこめて、ぼくをしっかりと見た。
なんだか、はずかしくなった。
「ぼく、なにか悪いこと言った?」
「いいかい。“ひとをけいべつするひとはけいべつに値する”。それはちょうど、殺人を犯したひとは殺すべきだとか、盗みをしたひとから盗むべきだとか、貧しいひとたちには貧しさでもって罰するべきだとか、無知に対しては無知を、とかと言うのとおなじなんだよ」
なにが言いたいのか、はっきりわからなかった。
「ペドゥリート、愛はだれもけいべつなんかしないよ。たとえ精神的な虚栄心をもっているひとでもね。愛は理解力があるんだ。奉仕することにつとめ、他人を非難しないようにすることだよ。ちょうど父親が子どもの小さな欠点を非難しないのとおなじようにね。精神的な虚栄心は“七〇〇度”の段階にたどりつくための、ひとつの段階にすぎない。それにきみのなにが、他人の精神的エゴを批判していると思うの?それこそまさにきみの精神的エゴじゃないのかい?もし他人の非難すべき欠点を、克服できる欠点と見ることができるとき、きみはもうきれいな身になっているよ。だれかに対して非難するようなものをもっているかぎり、まだまだきれいじゃないんだよ」
ビンカがそれに異議を唱えた。
「でも、テリはほんとうに非難されるべきよ。わたしたちスワマはただ平和に暮らすことだけを望んでいるっていうのに、彼らの野心やエゴや暴力や不正のせいで、キアは破滅寸前だわ。どうしてそれを非難することがいけないことなの?それともほめてやれとでも言うの?」
「テリや精神的虚栄心をもっているひとは、完成の過程において、上のほうにも下のほうにも多く見かけられる。われわれはみな、人生という名の学校の生徒だ。もし新しい世界をつくりたいなら、過去のあやまちを罰することをしていないで、新しいよりよい解決法を提出して、実現のために戦うべきなんだ。こうやって救済された世界がすべて、“親交世界”に入ってこられる。でも、たぶんビンカにとっては、テリをキアから消してしまったほうがずっとなっとくできることなんだと思うけどね、そうだろう?ビンカ」
とアミは笑って聞いた。
ビンカはアミに自分の考えていた本音を見すかされて赤面した。
「また別の“目には目を”だ」
とアミが笑って言った。
ビンカは抗議して言った。
「でもテリがいるかぎり、平和な世界はつくれないわ。彼らがそんなことを許さないし、不正なひとがたくさんいるかぎり、正当さを土台にした社会なんかつくれっこない」
ビンカのはげしさは逆にアミの笑いを誘った。
ぼくは彼女のたくましさに感心した。こうやって少しおこっているビンカもまた、かわいいと思った……。
「キアは地球とおなじくちょうど第三から第四の進化水準にうつり変わる時期にある」
とアミ。
彼のお父さんが話をつづけた。
「第一水準の世界というのはまだ生命がたんじょうしていない。第二水準はもう生命はたんじょうしているけど、人類はまだいない。第三水準になって、人類があらわれる。この水準がいま、きみたちのいる世界だ」
「じゃ、第四水準ってどんななの?」
とぼくは聞いた。
「その世界では、人類は統一されてひとつの大きな家族をつくり、宇宙の原理にそってみんなで生きていく。でも、すべての世界がここにいたる試練を、うまくくぐりぬけられるわけじゃない。それをこころみるとちゅうで自滅してしまう世界も少なくないんだ」
「なんの試練?」
「第四水準に入るために、それぞれの世界の人類が乗りこえなければならない試練だよ。あるひとたちは、その試練をくぐりぬけることができるけど、別のひとたちには、くぐりぬけられないようにできている。それはひとつの選択であり、淘汰なんだよ」
「それとテリみたいな不正なひとたちといっしょに、平和な世界をつくることは不可能だってことと、どういう関係があるっていうの?」
「ひとつの惑星が、ある段階からその上の段階にうつろうとこころみるたびに、それ以前にはまったく知られていなかった現象がひき起こされるんだよ」
とアミが話しはじめた。
「それはちょうど世界全体をゆさぶるような、あくびをして伸びをするような感じた。それが新しい、よりせんさいで高いエネルギーと振動を生み、これらの放射がさらに二重の効果を生む。
ひとつはあるひとたちを狂気におとしいれる。低い進歩過程にいるひとたちは最終的にいのち取りになるようなミスを犯す。ネガティブなひとたちは、こうして自滅していくんだ。また、一方ではこの新しいエネルギーは上の水準へのぼることを可能にしてくれる。それは、自分の進化にそぐわなくなった、有益でなくなった自分の子どもたちを惑星が手ばなすようなものだよ。
あの巨大な恐竜や食肉植物がどうやって世界から消えていったのかわかる?それはまさに人類があらわれたそのとき、つまり第二水準から第三水準にうつり変わるときだった。理論的にはもっともつよいものが生きのびることになっている。たしかに恐竜はいちばんつよかった。にもかかわらず、全滅してしまった……」
アミの説明には、とても興味をそそられた。
「でも、どうして全滅してしまったの?いちばんつよかったのに……」
「うん。つめや牙や筋肉はつよかった。でも、知性のほうがそれよりもすぐれているからね。人類は肉体的にはずっと弱かったけれど、知性においてずっと勝っていた。つよいほうが生きのびたんだ。いま、またおなじ過程がくりかえされるよ。こんどは、筋肉よりも、知性よりもつよいものが生きのびるよ」
「えっ、それって、なに?」
「精神の力(霊力)さ。愛だよ。それ以外はみな恐竜とおなじような運命をたどる。平和を求める力が一体となったとき、それはきみたちの世界でもっとも堅固な力となるんだ。これはたんに、きみたちの文明を絶滅から防ぎうる力がほかにないからにすぎない。ビンカ、あまり悲観的にならないで。愛はかならず勝利を手に入れるよ。だって愛は宇宙最大の力なんだからね」
【感想】
アミのママが言うには「他者に奉仕できること」は「大きな特権」だそうです。誰かのために何かをする、ということは至福の歓びである、と。それに気づけていると幸せ感が増しますね。ただ、今の地球では子どものときから、まちがった教育や悪い習慣や迷信を教えこまれ、それらが障害になって、ますます下に堕ちていきかねない、とても危険な使命なんだとアミは言っています。この部分も「なるほどな」と思いました。
神は何をするか、という議論において、「神はなにもしない」とはっきり断言するアミのパパ。神は愛というエネルギーを注ぐだけ、と言っています。わたしも基本的には神は人々の「潜在意識」が実現する方向にエネルギーを注いでくれると考えています。潜在意識にネガティブなものがあれば、必然的にそれが叶っていきます。神は一人一人の自由意志を尊重してくれているだけです。
アミも「いつも、自分に起こるよくないことの責任や原因がかならず“ほかのひと”にあると思いこんでいる。内的存在をまったく知らないでいるんだ。けっしてそれに注意をはらおうとはしない。でも自分の運命をつくり出しているのは、自分の中のその“存在”なんだよ。そのことについてはいつか話してあげるよ。」と言っています。わたしはこの「自分の中の“存在”」というものが潜在意識にあるネガティブな信念だと考えています。それを見つけていくことが何よりも本当の自分とつながる方法です。
過去に地球で恐竜が滅びた話のときにアミは「こんどは、筋肉よりも、知性よりもつよいものが生きのびるよ」「精神の力(霊力)さ。愛だよ。」と言っていました。さぁ、これを読んでくださっている「愛」のパワーに気づいているみなさん。みなさんの出番です!!!
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