【朗読】26)『もどってきたアミ』第8章 地震から地球を守る仕事
- 学 心響
- 7月13日
- 読了時間: 12分
更新日:7月14日
エンリケ・バリオス著の『もどってきたアミ』の朗読と個人的な感想です。
【文字起こし】
(漢字表記も含め全て原文のままです)
第8章 地震から地球を守る仕事
エレベーターをおりたあと、到着したときに通ったのとは別のろうかを通りぬけるとドアがあいて、そこにキャプテンの巨大な円盤があらわれた。いくつものならんだまどがあり、そのまどガラスを通して、中に数人の人影が見えた。
すさまじいまでに大きな“飛行物体”を見あげ、ビンカもぼくもため息をつきながら歩いた。円盤は大きな三本の脚に支えられていて、入口はその腹部にあった。
階段のところまでくると、キャプテンが階段に足をのせた。すると、それはエレベーターのようにゆっくりと動きはじめた。全員が乗りおえると、かなりのスピードで上昇したが“UFO”の内部につく寸前に、ふたたびゆったりとしたスピードにもどった。
円盤の中に入りおえたところで、キャプテンはぼくたちに言った。
「ここで地球の地質保護の仕事を指揮しています。別の円盤には、また別のキャプテンがいてちがった使命にたずさわっています」
大広間に入ると、そこには何人もの、いろいろな外観をしたひとたちがはたらいていた。ぼくたちのほうを見て、ほほえみはするのだけれど、口に出してはだれもなにも言わなかった。これだけのひとがいて、ほとんど無言でいるということにとても興味をひかれた。
アミはぼくの疑問をキャッチしていて、ぼくたちがエレベーターに乗るとこう言った。
「頭というのは、ちょうどおしゃべり好きのオウムのようなもので、ほんのいっしゅんたりとも沈黙できないんだ。意味のあることをめったに言うわけじゃないくせに、たえず、話しつづけることをうながす。ここにいるひとたちは、現実をもっとずっと正確に知覚しているんだ。それほど頭は使わずにもっと上の、別の機能を使っているんだ。そのうえ、われわれはみなテレパシーが発達しているしね……」
「でも、アミ、そうは言ってもきみは少しも彼らのようじゃないよ」
とぼくは言った。
「なにが言いたいのかな?ペドゥリート」
「きみは、ぼくたちとおなじょうによくしゃべるし、そのうえ、よく笑うし……でも、彼らはずっともの静かだよ……」
アミはそれを聞いてめいわくがるどころか、反対にキャプテンの笑いをさそうほどの大笑いをした。
「だってぼくは、きみたちの水準に合わせなければならないからね。それにきみたちのうちのどっちがテレパシーで話せるっていうんだい?……それからもうなんども言っているように、ぼくの進歩度はきみたちと似かよっている。
さらに言えば、ぼくは遊び好きの世界からきている。ぼくたちは言ってみれば、いたずら好きなわんぱく小僧みたいなもんだよ。でもけっしてひとを傷つけるようないたずらはしない。それどころか、その正反対だけどね」
「じゃ、どうして、アミがわたしたちに教えているの?もっとずっと進歩しているひとじゃなくて……」
ビンカがやや幻滅したような声で質問した。
アミはふたたび笑った。
キャプテンはなにか手びき書のようなものを見ていて、ぼくたちの会話にはあまり気をとめていなかったが、くちびるにはわずかな微笑が感じられた。
「じゃ、たとえば司令官の上の兄弟のようなひととか?」
とアミがビンカとのやりとりを楽しむように言うと、ビンカは目をかがやかせた。
「そう、どうしてそれじゃダメなの?」
キャプテンは、こんどは手びき書から目をはなし、軽いおどろきの表情を混じえた笑顔でビンカを見た。アミは、またも大笑いをして、それがやっとおさまると、こう言った。
「ビンカ、でもその教えを受けるのに値するひとといったら、司令官のような高い内的水準に達していなければならないよ……」
「そう、わかるわ。でも、どうしてわたしたちの指導者が司令官のようなすばらしいひとじゃダメなの?」
「それじゃ、聞くけどね。きみたち、彼の前で窮屈じゃなかったかい?ぼくに対するように自分の感情を素直に表にあらわせた?そしてぼくが言うのとおなじようにちゃんと彼の言ったことを理解できた?」
ビンカは、いかにも自信たっぷりというようすで言った。
「わたし、とてもよく理解できたわ。なにか彼のそばにいると、まるで別の世界にいるようで……」
「じゃ、司令官はなにを言ってた?」
アミはややいたずらっぽい視線になって聞いた。
「えーと、いい子でいるようにって……天国に行けるように」
アミは笑ってぼくに聞いた。
「そう言った?ペドゥリート」
「うん、そして世界のおわりがくるけど、いい子でいれば彼がすくってくれるって……」
キャプテンは手びき書から目をはなして、やさしくぼくたちの頭をなでた。
アミはつづけて、
「いつも、こういうことになるんだ。司令官の言ったことの千分の一もわかっていないよ。だから、とても高いエネルギーのばあいにはどうしても“変圧器”が必要になってくるんだよ。もし、テレビを直接、高圧線に接続したらどうなる?テレビはたちまち破裂しちゃうだろう。そんなに高いエネルギー用にはできていないんだ。だから変圧器を通して電圧を下げ、受信機がたえられる水準に変えなければならない。司令官の水準はきみたちにとってあまりにも高すぎて、彼が言ったことはそのままじゃよく理解できない。でも、ぼくはおなじことをきみたちがよくわかるように話すことができる。
きみたちはここで見たり、体験したすべてのことを、また、一冊の本に書かなければならない。なのにきみたちは司令官の言ったことをよくわかっていないし、完全におぼえてもいない。だから、本を書くときにはぼくたちがきみたちにテレパシーを送って、記憶力を活発にするようにしてあげるんだよ」
「ここがそうじゅう室です」
エレベーターのとびらがあくと同時にキャプテンが言った。
スクリーンやさまざまな装置、配電盤などがところせましとならんだ、とても大きなヘやに入った。たぶん、いろいろな惑星からきているのだろう、容姿の異なった人々がたくさんはたらいていた。ちらりと見ることはあってもだれも、ぼくたちを少したりとも、気にとめていないようすだった。外部世界からのどんな訪問客も別にめずらしいことではないようだった。
キャプテンの指令で円盤は振動をはじめ、数メートル浮上すると、そのままゆっくりとよこのほうへ移動した。それから母船の床にあいた穴を下って水の中に出た。
母船から数キロメートルはなれたところで、びっくりするようなものが目にとびこんできた。黒い大きなわれ目が海底にぽっかりと口をあけてぼくたちを待っていたのだ。間髪を入れずに円盤はそのまっつ暗な闇の中にむかってすべりこんでいった!……はしからはしまで、ひとつの山がすっぽり入ってしまいそうな大きさだった。ぶきみにつき出た黒い岩盤。円盤はその中をどんどん進んでいった。ずっと奥のほうに行くと、その巨大なわれ目はなにかで削り取られたような、ほとんど磨かれたような完全にまるいトンネルに変わっていた。
穴はとても大きくて、巨大な円盤も楽々と入ってしまう。まるで土木技師がつくったようだった。
「そのとおりだよ、ペドゥリート。このトンネルはわれわれのエンジニアがつくったものだ。大陸プレートのぶつかり合う危険性の高い地点にむかってつくられているんだ」
「えっ!! なに?その、たいりく……なんとかって」とビンカが聞いた。
「大陸プレートだよ。大陸っていうのは、ちょうど岩でできた“いかだ”の上にのっかっているようなものなんだ。それを大陸プレートというんだ。それはゆっくりと、おたがいに押し合うんだよ。ちょうどいま、ここで起きているように、ときには大陸どうしがぶつかる方向に動いたりしてね。
もうすぐその蓄積されたエネルギーによってプレートの一部が破壊される。それによってひき起こされる震動が、地球の表面に地震となってあらわれるんだ。彼らはいま、ここでその震度を小さくするための作業をしているんだ」
するといま、ぼくたちは震源地にいるんだ。地球の奥深く、何十キロもつづくぶあつい岩盤にかこまれた中、大地震のどまん中にいるんだ!
そう考えたらおそろしさでいっぱいになった。
恐怖で血の気がひき、うろたえているぼくを見て、アミは、思わずほほえんだ。
「ペドゥリート。この円盤がどのくらいの衝撃にたえられるかまったく想像もつかないだろう……」
しばらくトンネルを進むと、度肝をぬかれるような光景が眼前にひろがっていた。ぼくたちは、想像を絶する巨大スケールのドームの中にいた。
円盤がおおよそ五十ぐらい、強烈な光をはなちながらその空洞の中に停止していた。
おどろきのあまりビンカもぼくも口があいたままになっていた。
「プレートの衝突点の岩盤に光線をあてて砕き、粉にすることによって緊張を少しずつ弱めているんです。それでも地上には地震となってあらわれるけど、震度はずっと小さくなるんです」
とキャプテンが説明してくれた。
ぼくたちの乗った円盤は、とちゅういくつもの円盤のあいだをぬって、ドームのある特定の地点に停止した。ほかの円盤はみな、キャプテンの円盤よりはるかに小さかった。
たまごのような頭をしたオペレーター(べつにからかっているわけではないけど、その男のひとは、とても白いはだをしていて、てっぺんのとがった楕円形の頭にはかみの毛が一本もなかった)の合図で、キャプテンは指令と思われるものを出した。
その瞬間、すべての円盤からまぶしいみどり色の光線が上のほうへむかっていっせいに発せられた。同時にはげしい震動が床に伝わってきた。
「このスクリーンを見てごらん」
アミはたくさんのスクリーンがならんだパネルを指さした。
おおぜいのひとたちがそれを見ていた。そこには都市や町や村や人里はなれた場所の景色がうつっていた。また、いくつかの家とその内部でねむっているひとたちのすがたがうつった。
「このひとたちはこの計画に選ばれているので保護してあげなければならないんだ」
「でも彼らはそれを知っているの?」
「もし知っていたとしたら、とっくに外にとび出しているよ。われわれが危険を知らせてあげているはずだからね。でも、この計画に選ばれていることは、いまのところまったく知らないでいる。ゆれが近づいてきたよ。こわがらずに見ていてごらん」
みどり色の光線が黄色に変わり、やがて目のくらむ白い光に変わった。その瞬間、地下の数百万トンもの岩盤がぶつかったような、それこそ耳の鼓膜が破れそうなほどのすごい音がした。
スクリーンには地震のありさまがうつし出されていた。倒れた電構、大きく枝をゆすっている木々、家から外へとび出した人々……。同時にぼくたちの円盤の上にたくさんの砕かれた岩やその破片が落ちはじめた。
ビンカは恐怖におののいて、ぼくにつよくしがみついてきた。ぼくもとてもこわかった。
アミはぼくたちを落ちつかせるような声で言った。
「少しもこわがることはないよ。われわれにはまったく危険はない。ほら見てごらん。もうゆれはおさまったよ」
ほんとうにゆれも音もやんでいたが、ぼくたちの円盤は砕かれた岩の中にすっかりうめつくされていた。まどの外にはなにも見えなくなっていた。
「どうやってここからぬけ出すの?」と、まだおどろきのおさまらないビンカが聞いた。
キャプテンがビンカに近づき、そのバラ色のかみの毛にそっと自分の手をのせて言った。
「けっしてこわがる必要はないよ。砕けた岩石の中でもこのまま進めるんだよ。われわれは、きみたちのようなよい子をいつも保護するためにいるんだ。ふたりとも、とてもよく使命を果たしている。いま、見ていることすべてをこれまでのように、また本に書いて人々に情報をひろめなければならない。もっと先になったら、さらに別の新しい仕事をしてもらうことになる。
きみたちの使命は、宇宙の基本法が“愛”であること、そしてわれわれの存在とわれわれの支援の目的について、人々に知ってもらうことにある。信念と確信をつよくもちたまえ。きみたちの世界におけるわれわれの友の数が日に日に増えてゆく。救済のための知識のとびらはいまや開かれている。たくさんの人々が苦難のときを乗りきるための情報を受け取れるように、そしてまた永遠の価値をもつ愛の種が芽生えるように手だすけもしている。こわがらずに仕事をしたまえ。われわれがいつもきみたちを保護し、支持し、支援しているからね」
キャプテンが話しおえたとき、どうやってだかわからないうちに、もうあのドーム、あのトンネルからぬけ出ていた。そして巨大なわれ目をさらに進んで海底へとむかった。ぼくたちは、海の底よりもずっと下にいたわけだ。
アミがぼくたちに話しはじめた。
「表示盤によれば、まだまだたくさんのエネルギーがたまっている。あす、またおなじ作業をくりかえさなければならない。もし、自然のままにいちどにぜんぶのエネルギーが放出されたら、とんでもない大震災になりかねない。小さな地震を何カ月にもわたってくりかえすことで少しずつエネルギーを放出しているんだ。
それでもすべての大地震をさけられるわけではない。大都市のような人口密集地帯では、小さな地震を起こしながら、もっとも人口が少なくなる時間帯に大地震が起きるように調節することで、少しでもその被害を小さくするようにしているんだ」
どこからともなく、大型母船があらわれた。中に入ってキャプテンに別れをつげてから、ぼくたちは、ふたたびアミの円盤のほうに乗りこみ、母船をあとにした。
「目撃証拠をのこす指令が入っている。視覚可能な状態で、あの船の前にとび出そう。あそこのだれかが、われわれの円盤を目撃する必要があるんだ」
とアミはぼくたちに言った。
【感想】
アミが言う「それほど頭は使わずにもっと上の、別の機能を使っているんだ。」にはしびれました!
アタマを使う方法しかない、もしくはもっとアタマを使わなきゃ!と思いがちなわたしたちからするとびっくりな発言です!そして、「もっと上の、別の機能」ってなんだろう?となりました。想像ですが、ココロに聴くこと、ココロがワクワクする方向に進むこと、それもひとつの「別の機能」かな?と思いました。
また、レベルが高い人に教わりたい、というビンカの考えは確かにわたしもきっとそう思うと思うのですが、幼稚園児が大学教授のところに行って教えてもらおうとして、大学教授がなるべくわかりやすい表現に変える工夫をしてくださったとしても、限界があります。。だから、幼稚園児は幼稚園の先生に習うのが一番楽しくて、理解も習得も早いということになりますね!
さらに、地震を回避していてくださる存在がいることも(ファンタジーとしても)初めて知りました!昼夜問わず、なんと有り難いことでしょう!これを書いている2025年7月12日はトカラ列島で群発地震が起きているというニュースが流れています。これも大規模地震を緩和するための措置なのではないかと考えると、目に見えないところで動いてくださる存在の有り難さが身に沁みます。
最後にキャプテンが伝えてくれた「われわれがいつもきみたちを保護し、支持し、支援しているからね」という言葉がとても嬉しく、安心して「宇宙の基本法が“愛”であること」をわたしたちも伝えていこうと思います!これを読んでいるあなたも、ぜひ、わたしたちとご一緒に!
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