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【朗読】24)『もどってきたアミ』第6章 ペドゥリートとビンカの使命 

エンリケ・バリオス著の『もどってきたアミ』の朗読と個人的な感想です。




【文字起こし】

(漢字表記も含め全て原文のままです)


第6章 ぺドゥリートとビンカの使命


 ぼくもビンカも生まれた惑星の出身ではなかった、というこのアミの重大発言のあと、ぼくたちのおどろきがいったんおさまると、アミはふたたび説明をはじめた。

 「近い将来、きみたちの惑星には、いくつものたいへんなことが起こりはじめるよ……」

 「たいへんなことって、どんなこと?」

 「地球や気象・生物界の大きな変化、そして大異変や疫病、さらに数百万のひとたちが感染して苦しむ新しい病気が生まれる。あるていどの内的純潔さをたもっていればだいじょうぶだけれど……」

 「いったいなにが原因で起こるの?」

 と目を大きく見開いたビンカ。

 「ふたつの要因があるんだ。

 まず第一は科学が自然破壊をひき起こす方向に使われていて、それがとても大きな不均衡を生み出していることなんだ。

 さらには人々の発するマイナスの脳波。これがきみたちの周囲を取りまく心理的エネルギー層にとても危険な状態で蓄積され、地球やキアの住民たちに深刻な影響をあたえている。

 第二の要因は、直接人々には関係していないことで、きみたちの惑星の自然な進化・発展によるものだ」

 ビンカはこのテーマにはほとんど興味がないようだった。

 「で、アミ、わたしはどこの文明世界からきたの?」

 「少しずついこう。まずビンカ、きみのさいしょの質問だけどね、いいかい。

 本来、自然に進んでいくべき惑星の変化の過程というものが、人々のいだく邪悪な感情・思想や行為が原因となって、とてもせわしなく、はやめられているんだよ。人々が宇宙の調和に根ざした生き方をはじめないかぎり、ゆっくりと自然に進むべきこの変化は、ひじょうに暴力的に、破壊的になっていくよ。それでもまだまだ、たくさんのことができるよ。人命がうしなわれるのを最小限にくいとめ、全滅をさけるためにね……」

 「それは世界のおわり……ということ?」

 「あるいははじまりかもしれない。それはきみたちしだいだよ。このさいごの試練を乗りこえられなければ、このまま変わらなければ、それは終末を意味してくる。自滅ということだ。でも、すべて神の望むように生きるようになれば、それはほんとうの天国のはじまりになるよ」

 

 「あなたがたの力をもってすれば、キアや地球を自滅させないことくらい、なんでもないことでしょうに」

 ビンカは、アミをやや非難するような口調で言った。

 アミはいつものように陽気に答えた。

 「前にも言ったように、未開の文明に集団で公に干渉することは宇宙の法で禁止されている。それはぜったいに守らなければならない。たとえば、きみたちの学校の上級生が、もしきみたちのかわりに試験を受けてくれるとしたらどう思う?」

 「うわぁ!そうしたら、なにも勉強しなくともよい点数がもらえて……」

 そりゃすごいと思ったので、大よろこびで言った。

 「そんなのインチキよ」

 とビンカはぼくをとがめるように言った。

 アミはつづけた。

 「もし上の学年に進級できたとしても、きみたちは授業の内容をまったく理解できないだろう。そうしたら同級生だけでなく、学校全体のじゃま者になるだろう。……そして同時に、正々堂々と自分じしんの努力で勝ち得たんだというプライドもまったく感じられないだろう……」

 「そのとおりだ、アミ」

 とぼくは、少し反省しながら言った。

 「ほんとうだわ。もしあなたがたが、わたしたちのためにみんなやってしまったら、それはよくないことだわ」

 ビンカも言った。

 「だからといって、なにもせず手をこまねいているのもよくないことだよ。絶壁にむかって走っている子どもを、なにもしないで見ているわけにはいかないだろう。かりにその子を取り押さえることは許されないとしても、そっちに行っちゃあぶないという警告を発することはできる。そこにきみたちの使命があるんだよ」

 「それどういうこと、よくわかんない……」

 とぼくは言った。

 「わたしはよくわかったわ」

 とビンカが言った。

 「じゃ、説明してよ、ビンカ」

 「自分の惑星が自滅しないよう手だすけするために、わたしたちは未開世界に生まれ変わったんだわ」

 「そのとおりだ!どうしてわかったの?ビンカ」

 アミはさけんだ。

 「わたし、どうしてだかよくわかんない……」

 「それは、さっき話した感覚のおかげなんだよ。予感がしたんだ。二、三のことさえわかれば、あとはもうはっきりしちゃうのさ」

 「じゃ、わたしは、どこの世界からきたの?」

 ビンカは、なおもしつこく聞いた。

 「それはどうでもいいことなんだよ。過去にもどるのはなんの意味もないからね。たいせつなのはつねに現在だよ」

 「でも、わたしのほんとうの惑星、わたしが住んでいたほんとうの場所が知りたいわ」

 「愛がわれわれに存在の意味を啓示したときには、すべての宇宙がわれわれの住まいとなる。すべてのひとたちがみな、われわれの兄弟だ。きみたちには自分たちの惑星が平和に注づくための変革の一端をになうという使命があたえられている。きみたちの世界を文明化し人間的なものにするため、戦争や生存競争や不正や分裂の場から、平和で愛に満ちた場所へ、宇宙のほかの文明世界のように生まれ変われるようにするためのね」

 ビンカの視線に暗いかげりが走った。

 「でもテリのことを考えると、キアでは、そんなこと不可能だと思うわ」

 「そのテリってなーに?」

 とぼくが聞くと、

 「キアに住んでいるひとたちだよ。キアにはふたつの人種がいるんだ。ひとつは彼女の属しているスワマ。もうひとつがテリだ。テリはさらにテリ・ワコとテリ・スンボのふたつに分裂していて、いつも戦争をくりかえしている、かなり好戦的な人々なんだ」

 とアミが説明してくれた。

 「あんなの人間じゃないわ!」

 ビンカは見るからにこうふんしてさけんだ。

 「サルよ!インテリなサルなのよ!」

 「インテリなサルだって!どうしてサルがインテリなの?」

 「とても知的だけど悪がしこくて、善意なんて微塵もなく、うそつきでひねくれ者で、そのうえはじしらずの不道徳で、物質第一主義の罪人だわ」

 ビンカはとてもおこって言った。

 アミは笑い出して、

 「ずいぶん、いろいろとならべあげたものだね。きみの兄弟をそんなに悪く言う前に、理解するようつとめなくちゃ。すべてのテリがきみの言うようなひとばかりじゃないよ。中には七〇〇度以上の度数をもっているひともいるんだからね」

 アミの言う度数とは“進歩度”のことで、彼のもっている“センソ・メトロ(感覚計)”という機械で、動物やひとの進歩度をはかることができるとアミは前の旅で教えてくれた。もし万が一、取り返しのつかない事態におちいったばあい、七〇〇度以上あるひとは、文明世界に住む資格がじゅうぶんにあるとして、宇宙人に救出されると言うのだ。

 あのとき、アミは、ぼくが自分の度数を知りたがっても、度数が低ければイヤな気持ちになるし、反対に高ければうぬぼれてしまい、ぼくのエゴがひろがり度数が下がってしまうからと言って、ぼくにそれをぜったいに教えてくれなかった。

 テリの“度数”についてはほとんど関心がなかった。それよりぼくの“度数”のほうが知りたかった。なんとかもう少しさぐりを入れてみようとした。

 「じゃ、ビンカもぼくもかなりの“度数"をもっているというわけだね……」

 「どうして?ペドゥリート」

 「だって、文明世界からきたんだからね……」

 「地球にもぼくより高い“度数”をもっているひとがかなりいるって、前に言ったろう?

 彼らとぼくのちがいといったら、彼らが知らないことをぼくは知っているということと、ぼくが最高に望ましい環境と適正な情報の中で教育されたということだ。でも彼らの魂の水準は、多くのばあいかなり高い。でもみなかならずしも、文明世界からもどってきたというわけではない。

 きみたちのようないわゆる伝道師は、前の人生で愛に対してなにかしらのあやまち、なんらかの過失を犯しているんだ。でも、そのあやまちは奉仕することによってつぐなわれる。その仕事の選択はきみたちの自由な意思によってなされたものなんだよ」

 「どんなあやまちを犯したの?」

 ぼくたちは、同時におなじ質問をした。

 「それはもうたいした問題じゃないんだ。自分や他人が過去に犯したあやまちは、けっして詮素すべきではない。もしきみたちが、努力して自分たちの交わした約束を果たしたならば、そのときには、きみたちはきれいな、かがやいた身となる。そうしたら兄弟愛と善意に満ちた、もとの世界にもどることができるよ。いまのきみたちの世界が消滅しないように、より進歩した世界づくりのためにつくすという使命が終わったらね」

 「地球にはテリはいない。それでも、不可能に近い仕事のように感じるよ。どうやったらぼくたちになにかできるの?」

 「思っているほど、むずかしいことじゃないよ。第一に、もうすぐ起こることがきみたちをたすけることになるよ。多くのひとたちがこのまま進んでいってはダメだということを理解するようになるからね。

 第二に、大多数の人々がすべての面で、よい方向に大きく変わるように願っているということがある。ただその方向づけが必要なんだ。

 そして第三に、まさにそのためにきみたちのような伝道師が、何千、何万といるんだよ」

 「何千、何万だって!」

 「まさに、“宇宙人の侵略”だよ。平和を目的としたね。たいてい、かならずひとりはいるんだよ、どんなところにでも。ほとんどの会社や新聞社、ラジオ・テレビ局、公共施設などに……」

「うわー!信じられない」

 ふたりともおどろいてさけんだ。

 「でも、どうやったら見分けがつくの?」

 「おこないを通してのみだ。行動の仕方でわかるんだよ。伝道師はいつも彼らを必要としているところにいるんだ」

 「なにか外見で見分けのつくところはあるの?」

 「なにもないよ。ただ彼らのおこない、その成果がすべてを語っているんだ」

 「でも、進化した世界から、そんなにおおぜい未開世界にきて、それ、宇宙の法に違反しないの?」

 「あるところまでは許可されているんだ。そのうえきみたちは前の人生で得た情報をもうおぼえていない。少なくともはっきりとした意識としてはね」

 ぼくはアミに言われたことをよく考えてみた。でも自分が地球よりもより進化した世界からきたとはどうしても考えられなかった。

 「ぼくが文明世界の出身だと言うけれど、アミ、ぼくにはたくさんの欠点があるよ。でも、オフィルで見たひとたちは、ぼくよりもずっと進歩していた……」

 「たしかにきみにはマンバチャのようなみにくい欠点がある。(笑って)そのうえ、未開世界の環境がさらにそれを悪化させてもいる。でも、私欲をはなれた奉仕の仕事につくことによって、以前のきみの水準を取りもどし、さらにあがってゆける。そしてきみの中に住んでいる狼から少しずつ遠のいていくことができるんだ」

 「狼ってなに?」

 とビンカが聞いた。

 「チェグのような動物さ。でも羽のかわりに毛がはえているんだ」

 とアミが答えた。

 ぼくはバカな質問をした。

 「アミ、そのチェグってなに?」

 「狼に似た動物さ。でも毛のかわりに羽がはえているんだ。ハッハッハッー」

 アミは高笑いをしながら答えた。



【感想】

 ペドゥリートとビンカの使命は地球を絶滅の危機から救うことだった!ということがわかり、嬉しい気持ちになりました。どこの文明世界から来たのかを知りたい気持ちはわかりますが、アミは頑なにそれは知る必要がない、と言っていましたね💦

きっと勝手に(?)創造・想像していていいのでしょう!


 また、けっこうたくさんの人が生まれ変わって、各会社や施設にいる、とのこと。それはありがたいことだけど、まとまっているわけではなさそうなので、それはそれで苦労するなぁとも思いました。きっと、今の地球では「浮いている存在」になってしまうだろうことは容易に想像できるからです。だからこそ、今、その各会社や施設にいるであろう「文明世界から地球を救いに来た存在たち」が手と手を取り合って、ペドゥリートとビンカのように、その使命を思い出す時期にきたのではないでしょうか?


 そう考えると、今の時代でも「縁」を大切にしたり、一期一会を大事に感じたりすることもすごくやってみたいことになります!


 



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