【朗読】21)『もどってきたアミ』第3章 念願の再会
- 学 心響
- 6月8日
- 読了時間: 18分
エンリケ・バリオス著の『もどってきたアミ』の朗読と個人的な感想です。
【文字起こし】
(漢字表記も含め全て原文のままです)
ぼくは、思わず彼にだきついた。なみだがとめどもなく流れ出た。やっぱり、ほんとうのことだったんだ。すべてみな、ほんとうのことだったんだ。
「ペドゥリート、大きくなったね」
「ほんとうだ。アミは前より小さくなったね。ちぢんだんじゃない?」
以前とまったくおなじように、ふたりで笑い合った。
とつぜん、ぼくはテントの中でぼくを待っているビクトルのことを思い出した。
「前のときは、おばあちゃんで、こんどはいとこか。きみは、ほんとうにとりこし苦労せずには生きていけないみたいだね」
アミは、以前とおなじようにぼくの考えていることをキャッチして言った。
「そうだね。でも……」
「でももなにもないよ。彼はいま、ぐっすりねむりこんでいる。今夜(という時間)はすべてぼくたちのものだ」
「ほんとう?」
「ほんとうさ。じゃ、また見てみようか?」
と、あのいつもの小さなテレビのような器械を腰のベルトから取り出して言った。
「ううん、その必要はないよ。きみを信じているから」
「へえー!それはもう一歩前進したということだよ」
「えっ?」
「なにかを信じられるようになったわけだ」
「なにが言いたいの?」
「ぺドゥリート、きみがきょうここに来たのは、きみの疑惑をはっきりさせるためじゃなかったのかい?」
そう言われてぼくは少し考えた。たしかにアミの言うとおりだ。ぼくはアミの存在をうたがった。それをはっきりさせるために、ここに来たんだった……。
「ほんと、来てよかったよ。これでアミがほんとうにいるということが、はっきりしたんだからね」
「でも、ぼくが帰ってしまったら、またうたがいはじめるんじゃないの?すべてが夢だったたんじゃないかって……」
「ううん、もうぜったい、うたがわないよ。きみはほんとうに現実にいるんだからね」
と言ってぼくはアミのかたにさわった。
「でも以前だっていまとおなじように現実だったんだよ。それなのにきみはうたがった……」
「たしかにきみの言うとおりだよ、アミ。でもどうしてひとは、こう、うたがったりするんだろう」
「それはね、ペドゥリート。頭脳には、いろいろ異なったレベルがあって、ときにより、あるレベルから別のレベルへと接続が変わるんだよ。
おなじひとがあるときにはとても乱暴でざんこくになるし、また別のときには温厚でとてもやさしいひとにもなる。もし、そのひとが高いレベルにいれば、すばらしい体験ができるようになる。たとえば、ぼくと出会えたり、大きな真実を理解できたり、自分の夢を実現させたり……。でも、もし低いレベルにいるとすれば、こういった高いレベルとはつながらない。たとえ、以前はそれを知っていたとしてもね。うたがい出すから……」
「もうぜったい、うたがったりしないよ、アミ。でも、どうして去年の夏、ぼくに会いにきてくれなかったの?ぼくはちゃんと本を書いたのに……」
アミは笑って、
「ぼくがすぐに、またくるとでも思っていたのかい?はっきりいつとは言わなかったろう?きみは、内面の平静をたもつ能力を育てていかなければならないんだ。短気は、宇宙とは調和しない。すべてのことには、それぞれ時機というものがある。さらにきみのうたがいの気持ちは、コンタクトに必要な条件を満たしていない。だけど、きみはちょっと例外だ。たとえときどき、ぼくの存在をうたがったりするとしてもね」
「ほんとうにごめんね、アミ。もうけっして、こんどのようなことをくりかえさないと誓うよ」
アミは入江の反対側にある温泉場の光を見ながら、夜の潮風を深く吸いこんだ。
「ともあれ、宇宙はすべてかんぺきだ。行こう。銀河系の散歩につれていってあげるよ」
「ヤッホー!でもアミ、円盤はどこにあるの?水の中?」
「いや、そこだよ、そこ。上」
と言って空のほうを指さした。ぼくは彼の示したほうを見上げた。でも、そこには天空にちりばめられた数多くのかがやく星が見えるだけだった。
「どこにあるの?ぼくには見えないよ……」
「視覚不可能な状態にあるんだよ。行こう。きみに紹介したいひとがいるんだ」
「ひとりで来たんじゃないの?」
「いや」
と言うと、彼は腰のベルトから小さな器機を取り出した。
知らないひとといっしょに円盤に乗るなんて、さいしょはぜんぜん気のりがしなかった。ぼくはまたアミとふたりきりで宇宙へ行きたかったんだ。
「どうやって円盤に乗るの?」
その瞬間、黄色いつよい光がぼくたちを照らし出した。同時に、自分のからだが空中に浮きあがっているのに気がついた。でも、これは以前に体験していたことなので、それほどおどろかなかった。
ぼくたちの頭上に、ポッカリとおなかに穴のあいた円盤が見えたと思うと、すぐにぼくたちは円盤の中のぼくの知っているあの小べやに立っていた。
感激で胸がいっぱいになった。
「どうしたの?ペドゥリート」
アミが笑って聞いた。
「きみは泣き虫だなあ」
「だって、また円盤にもどってこられて(クスン)、なんだかじられないよ。でも、これは夢じゃなくて現実なんだ……(クスン)。アミ、ありがとう」
「なに、ひとりで感激しているの?もし、きみがうたがったりしなければ、こんなことはきみにとって、いつだってあたりまえのことなんだよ。さあ、行こう。そうじゅう室できみに会わせたいひとが待っているんだ。こっちだよ。おいで」
ぼくはなんの期待もなくアミのあとについていった。オフィルできみょうな容姿をしたいろんなひとたちを見ていたので、どうせ、また、みどり色の顔をしたひとでも待っているんだろうと思ったからだ。
そうじゅう室に入ると、ほぼ人間の容姿をした、風変わりな女の子がいた。色白でやせていて、耳の先はピンととがり、むらさき色のひとみをしていた。長いバラ色のかみの毛に布製のちんけな蝶のリボンをつけ、ゆったりとした青いつなぎを着ていた。
まるで異様なものを見るようにぼくをじっと見ていた。かなり無愛想だし、はっきり言って少しもかわいいとは思えなかった。
アミは彼女と、ぼくにはまったく理解できない言葉で話しはじめた。会話の中でぼくの名前を言ったことだけはわかった。
「ビンカを紹介するよ」
アミは、ぼくに言った。
「さあ、あいさつして」
アミは、ぼくと彼女に、それぞれの言葉で言った。
おたがいに、知り合えてうれしいという気持ちもほとんどわかず、ただ無愛想に相手を見た。彼女はやせた長いうでをぼくのほうにさし出してきた。彼女の手にふれるのは、正直言ってちょっと抵抗があった。でも、そこは礼儀正しく、そして、そっと彼女の指にふれ(五本あった)、あくしゅをした。あたたかくてやわらかな感触が、ぼくの手に伝わってきた……。
よろしくと言うと、みながやるように、ほおにキッスしようと彼女に近づいた。とたんに、彼女はおどろいて、なにかわけのわからない言葉をつぶやくと、さっとほおをしりぞけた。
アミは大笑いをした。そして、彼女の言葉で、(これはあとになってわかったんだけど)ぼくの星ではごくふつうにおこなわれているあいさつの仕方なんだと教えた。
「彼女の星ではそんなふうにはしない……習慣のちがいだよ」
アミは笑いながらぼくに言った。
オフィルでは、キッスを交わすのはごくふつうのことだった。
「ということは、彼女の星は文明世界じゃないんだ?」
「そのとおりだよ。ほぼ地球とおなじくらいおくれた世界だ。少し、ふたりで話したらいい。これを耳につけてね、翻訳器だ」
と言ってアミは、コードレスの補聴器のようなものをぼくたちにひとつずつ手わたした。
「さあ、話してごらん、ふたりでいろいろと」
それぞれ別の言葉で話しているが、翻訳器を通してその訳が聞こえてくる。
「ど……う……も」
とやせたきみょうな女の子が言った。彼女のくちびるからは、聞きなれないへんな音が発せられているけど、器械を通すと意味がちゃんとわかった。
「やあ」
と答えた。
「あなたの惑星はなんていう名前?」
彼女が聞いてきた。
「地球っていうんだ。きみのは?」
「キア」
彼女は答えた。
こうして彼女と話をして、意思が通じ合うようになってみると、さいしょ、きみょうに思えた彼女の容姿に対してあまり違和感を感じなくなってきた。
「ビンカ、年はいくつ?」
「二百四十五歳」
とこともなげに答えた。
ぼくは腰をぬかすくらいおどろいた。どう見ても、そんなにおそろしく年をとっているようには見えなかった……。
「ちょっと待った、待った」
アミは、ニコニコしながらぼくたちの会話の中に入ってきた。
「地球が太陽をひとまわりするあいだに、キアはキアの太陽を二十回、まわるんだ。だから、ふたりはほとんどおなじくらいの年だよ」
ぼくはなっとくして、ビンカをじっと見た。ピンと先のとがった、かたちのいい耳が、生まれたばかりのヒヨコのようなやわらかいかみの毛とよく調和していた。
「じゃきみの惑星じゃ顔にキッスはしないんだ……」
「恋人とか夫婦のあいだでしかしないの。あなたたち地球人ってとても進んでいるのね」
「オフィルほどじゃないよ」
「えっ、なに、そのオフィルって?」
「文明世界だよ。ちょっとアミ!ビンカを進んだ惑星にはつれていってあげていないの?」
「もちろんつれていってあげたよ。でも、オフィルとはちがう惑星へね。いいかい、これから、とてもおもしろいものを見せてあげるよ。銀河系のダンスだ」
ぼくは、もっとわかりやすく説明してくれるように頼んだ。
「きみたちは、星が動くということを知っているよね……」
ビンカにぼくの天体の知識を披露したくなった。
「惑星は動くんだよ。でも恒星は動かないんだ」
アミは少し笑ってから、
「そう、たしかに動かないようだけど、じつは超スピードで銀河系のまわりを回転しているんだ。それをこれから見てみよう。時間・空間の外の次元にでもいるような感じで、銀河系、天の川を見てみるのさ。ちょうど映画のフィルムを高速回転(早送り)したような感じでね。わかる?」
ふたりともくびをたてにふったものの、なんだかキツネにつままれたような感じだった。
「それぞれの星が動くときに閃光をはなつんだけれども、そのときの音も聞いてみよう。それと同時に銀河系を形づくる天体の一つひとつが、どういう音を発するのかも観察してみよう。じゃ、こっちへきて」
アミは、ぼくたちにイスにすわるように言うと、コントロールボタンをそうさした。中央のスクリーンに、見なれた温泉場の風景がうつった。そこにはビクトルの車とテントがあり、岩の上には翼のはえたハートのマークがはっきりと見えた。
「あっ!やっぱりちゃんとあそこにマークがある!ぼくがいくらさがしても見つからなかったのに……」
「ペドゥリート、じつは、ちょっときみをからかってみたんだよ。ハートはいつもあそこにちゃんとあるんだけど、きみをちょっと催眠状態にして、見えないようにしたんだよ」
「でも、どうやって?ぼくはきみの催眠の指令の声をなにも聞いていないよ」
「テレパシーでやったんだよ」
「遠隔催眠よ!」
とビンカが感嘆してさけんだ。
「そりゃ、きっとすごいことだ」とぼくは言った。
もし、そんなことがぼくにできるなら……といろいろな可能性を想像してみた。たとえば、おもちゃ屋のおじさんに、ぼくの好きなおもちゃをぜんぶプレゼントさせるようにするとか、試験でまったく白紙の答案用題を出して先生に満点をもらうとか、それから……。
「もし、だれにでもこの能力をあたえたとしたら、どんなインチキをやらかすかわからない。だから悪用するひとの手のとどかないところにあるんだ。宇宙の基本法が、この能力を統制しているんだよ」
ぼくにはこの能力をそなえる資格があると思った。
「ぼく、その宇宙の基本法がなんなのかを知っているよ。愛なんだ……」
「知っているだけでじゅうぶんだと思う?」
「なにが不足しているの?」
「それを実践することだよ」
「ああ、そのとおりだね。だから、ぼくはいつもそれを実践しているんだ」
とそのとき、ぼくは心の底からそう思って言った。
「自分の気まぐれを満足させるために、おもちゃ屋さんを破産させることが愛なの?ペドゥリート。ひとの意思に反したことを強能することや、ひとをだましたり、ペテンにかけたりすることが愛なの?」
ぼくの頭の中で、自分でも気がつかないほどすばやくかけめぐったいっしゅんの想像を、アミはキャッチしていた。
有頂天になっていたぼくには、アミの言葉が、バケツで冷水を頭から浴びせられたように痛かった。
彼のきつい言葉の前に、ぼくは立っていることもできず、イスにガックリとすわりこんだ。まるでからだをまっぷたつにわられてしまったような感じがした。全身から力がぬけ、その上、ビンカにぼくのはしたない考えを知られ、叱責されたところを見られてしまった……。
アミはやさしい声でぼくを元気づけるように言った。
「心配しないでいいよ。彼女はいま、軽い催眠状態にある。だからいまのことはなにも聞こえていないよ」
そう言われてぼくは少し安心した。しかし、まだ動くことも話すこともできなかった。ぼくは、いつも自分じしんを模範生のように考えていた。でもちょくちょくやましいたくらみを想像しているのを、はっきりとアミに指摘されてしまった。
どうしてかわからないけれど、少しずつアミに対して怒りのような気持ちを感じはじめていた。その怒りは、先ほどの言葉ですっかりうちのめされていたぼくを元気づけるものだった。
「これは、ぼくの仕事のもっともつらい側面なんだ。だれだって自分でも気がつかなかった欠点をひとに指摘されるのは、いい気持ちがしない。でも、だれかがそれをしなかったら、本人はけっしてそれに気がつかないし、まして克服することなどできやしない。で、それを指摘するにはちゃんとした言い方をわきまえていないといけないし、少しずつやっていかないとね……」
アミの一つひとつの言葉が、ぼくに対する非難であり攻撃であるかのように感じ、ぼくの怒りはますます大きくなっていった。
いったい、彼はなにさまだって言うんだ。たかがぼくのちょっとしたじょうだん半分の空想を、こうも真正面からとらえて、ざんこくに批判したりして……。
もしその遠隔催眠を使えたとしても、けっして悪用なんかしない……。そうだ、ぼくはいままでいちども悪い子でいたことなんかない。悪い子どころか、むしろ正反対じゃないか………!
そう考えているうちに元気を取りもどしてきた。
「エゴが元気づいてきた?」
アミがいつものように笑って聞いた。その笑いは、ぼくにはざんこくで冷ややかなせせら笑いのように感じられた。
「まだそうやってぼくを攻撃しつづけるつもり?」
ぼくの声は挑戦的だった。もう帰りたくなった。ビクトルのいるテントに。もうこれ以上、こんなことにかかわるのはうんざりだった。
ぼくは立ちあがった。もうへこたれちゃいなかった。また、自分じしんをとってもいい子だと思いはじめていた。ただアミが、これといった理由もなくぼくのことを悪く言っているんだ……。
ぼくは彼を冷たいまなざしで見て言った。
「やい、いい子ぶった宇宙人。愛を語り、大げさに愛を吹聴するけど、じっさいにやることといったら、ひとの小さな点をあげつらって非難することだけじゃないか。きみに愛なんかちっともありはしない。ガティカ神父とおなじだ。“説教はするけど自分ではなにも実行しない”。きみのようなはじしらずなひとになにもいいことなんかできるはずがない。だからぼく、もう帰るよ。帰るったら!」
アミは、ぼくのこうふんしたののしりの言葉をとても冷静に聞いていたが、その視線にはなんだか悲しげなかげが感じられた。
「ペドゥリート、心が痛むのはよくわかるよ。でも、これもすべてきみのことを思ってのことなんだよ。ごめんね」
「なにもあやまることなんかないさ。ぼくはもう帰る」
ビンカが目をさました。
「ペドゥリート、帰るって、もう帰るの?もっといろいろ話がしたかったのに。あなたのことや、地球のことについて……」
彼女の言葉はぼくをおどろかせ、同時にぼくの心をやわらげて、現実にひきもどした。
ぼくは深いため息をついた。
「うん、ぼくだって……行きたくなんかない、ビンカ……、でも……」
「でも、なあに?ペドゥリート」
むらさき色のひとみでぼくをじっと見つめてビンカが言った。ぼくはそのとき、はじめて彼女をとても美しいと感じた。
「どうして行かなくちゃならないの?」
「行くって?ぼくが?いったいどこへ?」
「行くって言ったじゃない。どうして?」
その"理由"を思い出した。
「だってアミがへんなことを言ったんだ。ぼくのこと、侮辱したんだよ」
「わたし、ねむっていたのかしら、なにも聞かなかったわ。アミ、ほんとうにペドゥリートを侮辱したりしたの?」
「ほんとうのことを言うことが侮辱したことになるの?ただ、まちがっていることを指摘してあげたかっただけなんだよ。それが彼のエゴを傷つけてしまったんだ。でもそのうちおさまるだろうよ」
ぼくはビンカのやさしい視線を感じた。
「行かないで、ペドゥリート。話したいことがたくさんあるし……」
ぼくもまったく同感だった。彼女のすべてが知りたかった。
アミは、またじょうだんを言った。
「禁じられたロマンスはそのくらいにして、これから銀河系のダンスを見てみよう。きみたちには、それぞれパートナーがいる。前回、未来をのぞき見たときに、それぞれに自分の"双子の魂"を見せてあげた。まだじっさいに出会っていないとはいえ、そのことに忠実であるべきなんだ」
自分でもへんだけど、彼女にもう定められた相手がいるのかと思うと、なんだかしっとのようなものを感じた……。
「アミ、考えすぎないでね。わたし、ペドゥリートとはお友だちになりたいだけのことだから」
「知り合ってもいないひとに、誠実でいなきゃいけないっていうのはむずかしいね」とぼくは言った。
「いや、もう知っているんだよ。たとえ未来でのほんのいっしゅんの出会いだとしてもね。それにきみたちが知っている五感以外にあるもうひとつの別の感覚、たくさんのことを可能にするその感覚を通して、ずっと未来に出会うひとをキャッチし感じ取ることができるんだよ」
「テレパシーのこと?」
「テレパシーは思考と関係している。いま言っている感覚はもっと感情に関係していることなんだ。ペドゥリート、きみは自分のパートナーの存在を感じたことはない?」
これはあまりにもプライベートな質問だった。
「えーと、うーん、ときどき……夜、ひとりのとき、どこかでだれかがぼくを待っているような気がする……」
「考えるの?それとも感じるの?」
「うーん……たぶん、感じるんだと思う、そのときは」
「そのとき、その瞬間、そのひとを愛することができる?」
「エーと……わかんない。たぶん……たぶんできると思う」
「じゃ、その高度な感覚が発達しているんだ。人間として進歩するには、この感覚を発達させなくてはならない。この感覚のおかげで、われわれは思考やそのほかの感覚を必要とせずに精神的なものをキャッチすることが可能になるんだ。そうやって、よいひとかあまりよくないひとか、うそか真実かを見分けたり、ほんとうの愛や、神の存在を感じ取ったりすることができるようになるんだよ」
「わたしの惑星、キアでは、神を信じていないひとがおおぜいいるわ」
とビンカが言った。
この感覚があまり発達していない段階では、信仰というものは必要だ。でも、そのあとはもう信じる信じないの問題じゃないんだ。ただただ神の、そのすばらしい存在を感知するだけでじゅうぶんなんだ。こうやって、神のすがたをまったく見る必要もなく、われわれは神に愛をささげることができるようになるんだ。また、この高度な感覚によって、われわれの未来のパートナー、双子の魂を感じ取ることも、それに忠実になることもできるんだよ。たとえまだじっさいには、目の前にいないにしてもね」
ぼくは未来の"日本の女の子"のことを考えた。でも、なにも感じなかった。
アミの言った感覚が、ぼくには発達していないのか、それともビンカのとつぜんの出現が、なにかほくに電波妨害のような状態を起こさせているのか……。
「さあ、これからとてもすばらしいものを見せてあげるよ。でもその前に、円盤の内部にある"けがれ"を取りのぞかなければならない。そうしないと悪い脳波による電波混信を起こしかねないからね……」
アミはぼくの"日本の女の子"に対するうしろめたい思いを見ぬいている!
罪悪感をおぼえた。
「ペドゥリート、いま、それはちょっとおいておく必要があるよ」
「そうだね、アミ。もうそのことを考えるのはよすよ」
「ぼくの言いたいのは、ぼくに恨みをもたないようにということだよ……」
なんだ、そのことだったのか!ぼくはまた、てっきりビンカの出現によって感じはじめた彼女へのつよい思いのことかと思っていた。でも、幸いにもアミはそれに気がついていなかった……。
「じゃ、また友だち?」
アミは、ほほえんでぼくに手をさし出してきた。彼と友だちでいられない理由はなにひとつなかった。
「うん、友だちだ」
ぼくたちは、またいままでのように仲よく握手した。
「ブラボー!」
耳の先がとがった女の子はよろこんで言った。
「ブラボー!じゃ、これから銀河系のコンサートを見ようよ」
「ダンスだよ。でもコンサートでもあるね。じゃすわって、ペドゥリート」
とアミが言った。
【感想】
アミはアミを信じていると言ったペドゥリートに対して「一歩前進した」と言いました。
ペドゥリートはついさっきまでアミの存在自体を疑っていて、それを確かめるために浜辺へやってきたことを知っているのに。
わたしはこれがアミの「愛」だな、と思いました。信頼は愛なんですよね。
また、ペドゥリートが「どうしてひとはうたがったりするんだろう?」と聞いたとき、アミは「頭脳があるレベルから別のレベルへと接続が変わる」という言い方をしていました。これは心響学でいうところの「高次元・低次元」と同じことだな、と思いました。アミは高いレベルにいれば素晴らしい体験ができるようになる、低いレベルにいると疑い出すとも言っています。高次元でいることって大切ですね!
この章で最も印象的なシーンは「テレパシー」の部分です。アミがテレパシーを使って遠隔催眠をしたことを聞いて、ペドゥリートが自分もやってみたい!と思った場面で、それをアミに指摘されたとき、ペドゥリートはひどく腹を立てて、アミに向かって心無い言葉を投げかけます。これも心響学で言うところの「傷が疼いた」事象です。わぁ、痛いよね、、とすごく共感しながら、高次元の状態のアミによってペドゥリートの傷の疼きが収まってきてほっとしました。人間界では「決裂」の可能性だってありますからね💦
傷が疼いたら、それは傷に気づいて癒すチャンス!✨
とにかく、仲直りできてよかった!
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