【朗読】16)『アミ 小さな宇宙人』第14章 帰還
- 学 心響
- 1 日前
- 読了時間: 8分
エンリケ・バリオス著の『アミ小さな宇宙人』の朗読と個人的な感想です。
【文字起こし】(漢字表記も含め全て原文のままです)
第14章 帰還
遠くに水色をした地球があらわれた。はやくも眼下に大きく海が開け、だんだん海岸線がせまってきた。太陽は遠くの山脈の上に顔を出し、銀色をしたくものあいだから、黄金色の光をはなっていた。空は青く、海はかがやき、山並みが遠くに連なっていた。
「ああ、なんて地球は美しいんだろう……」
「そう言ったろう。地球のひとは、それに気がついていない。それどころか、平気で破壊している。そして知らないで、自分じしんもどうじにね。もし、愛が宇宙の基本法だってことを理解して、国境をなくし、ひとつの家族のように、仲よくみな、総一して、愛に基づいた新しい組織づくりをすれば、生きのびることができるんだ」
「国をなくして?」
「国は"県"として変わり、進歩した宇宙のように、地球にたったひとつの世界政府をつくるんだ……きみたちはみな、兄弟じゃなかったのかい?」
「愛に基づいてすべてを組織するっていうのは、どういうことなの?」
「どこの国でもそうだけど、家族を組織するのとおなじように、つまり、みな、協力してはたらいて、利益を公正に分配するんだよ。もし五人だったら、五つのリンゴをひとつずつそれぞれが受け取る。きわめて明快なことだよ。愛がないと上に立ったひとはエゴをむき出しにして、自分のエゴイズムを正当化するために、ものごとをふくざつにからませる。でも愛があれば、すべてがみな透明で、とてもはっきりしている!」
「アミ、また、ねむくなってきたよ……」
「じゃ、もういちど、"充電"してあげよう。でも今夜はよくねないといけないよ」
イスに身をもたれかけた。アミはまた、ぼくの頭のてっぺんに"充電器"を取りつけた。ねむりがすぐにぼくをおそった。
元気に目ざめた。全身にエネルギーが満ちあふれ、生きていることのよろこびでいっぱいだった。
「どうして、もっと何日かぼくといっしょにいないの?また、海岸にいっしょに行こうよ、アミ……」
「ぼくもそうしたいところなんだけどね。まだまだ、たくさんしなくちゃならないことがあるんだよ。地球だけでなく、たくさんの人々が宇宙の法を知らないでいるんだ」
「アミ、きみはとても世話好きなんだね……」
「愛のおかげだよ。きみもそうすべきだよ。平和と団結のために争いや暴力を捨てることだ」
「そうするよ。でもなかには、顔面に一発パンチをくらわしてやりたいのもいるけどね……」
アミは笑って、
「そのとおりだよ。でもね、それは彼らじしんが自分にパンチをくらわすことになるよ……」
「それは、どういうことなの?」
「愛に対する違反行為は、何倍にもなって自分にツケがまわってくるんだよ。いたるところで見られるさいなんや、事故、また、愛しているひとを亡くしたり、"悪運"つづきだったり……もっとこのほかにも、いろいろなかたちでその代償を支はらうことになるんだよ」
温泉場が見えてきた。アミは円盤を海岸の砂浜数メートルの高さに停止させた。だれにも円盤は見えない。そうじゅう室のうしろにある出口までいっしょに行って、おたがいにつよくだき合った。とても別れるのがつらかった。アミもおなじだった。
目がくらむような黄色い光がついて、ぼくをつつんだ。
「“愛が幸福にむかうゆいいつの道”だってこと、忘れないようにね」
とアミは下降していくぼくにむかって言った。
足が砂浜の上についた。上はなにも見えない。でも、アミがぼくを見ていることはわかっていた。ひょっとすると、アミもぼくとおなじように、目にたくさんのなみだを浮かべていたかも。
とてもすぐには家へもどる気にはなれなかった。アミのメッセージをちゃんと理解したことを彼に伝えるために、小枝をとって砂浜に翼のはえたハートを描いた。すると、すぐになにかが走って、ハートのまわりに円を描いた。
アミの声を聞いた。
「それが地球だよ、ペドゥリート」
家のほうにむかって歩きはじめた。すべてがすがすがしく、美しく感じた。海の香りを、胸いっぱい吸いこんだ。砂や木や花をなでてみた。そのときまで、この小道が、こんなに美しいものとは気がつかなかった。小石までが振動しているようだった。
家の中に入る前に海岸の上空を見あげたけれども、なにも見えなかった。
おばあちゃんはまだねむっていた。もう起きたようにへやをかたづけ、シャワーを浴びに浴室へ行った。浴室を出たときに、おばあちゃんが目の前に立っていた。
「よくねられたかい?ペドゥリート」
「うん、おばあちゃんは?」
「うん、あたしゃ、いつものように、あまりよくねむれなかったね……ひと晩じゅう、目があいたままだったよ」
おばあちゃんにだきつきたい衝動を、おさえることができなかった。
「おばあちゃん、びっくりするようなプレゼントがある。朝食のときにあげるよ」
おばあちゃんは、コーヒーを用意して、それをテーブルの上においた。アミにもらった、まだ五、六個のこっている"クルミ"を、お皿にしいた紙のナプキンの上にのせた。
「おばあちゃん、これ食べてごらん」
と言って、お皿を、おばあちゃんのほうにさし出した。
「これ、いったい、なんだい?」
「宇宙のクルミだよ。食べてごらん。とても、おいしいから」
「なに、おかしなこと、言ってるんだい、この子は。どれどれ……」
と言ってクルミをひとつ、口の中に入れた。
「ウムーン……。ほんとうだ。なんて、おいしいんだこと。これいったい、なんだい?」
「だから、宇宙のクルミって、言ってるじゃない。三つ以上、食べちゃダメだよ。タンパク質が、たくさんふくまれているからね。ねえー、おばあちゃん、ところで、宇宙最高の法って知っている?」
おばあちゃんに、一講義してあげられると思って、目をかがやかせながら言った。
「もちろんだよ、ペドゥリート」
まちがった答えを、正してやろうと、待ちかまえた……。
「じゃ、なーに?」
「愛だよ。ペドゥリート」
おばあちゃんはしごくあたりまえのように答えた。ぼくはあっけにとられた。でも、どうして知っているんだろう?
「どうして、知っているの?おばあちゃん」
「小さいときから、知っていたよ……」
「じゃ、どうして、不正や戦争が、こんなにたくさんあるの?」
「それは、みんながみんな、そのことを、知っているわけじゃないし、まったく知ろうとしないひとも少なくないからね」
村のほうに出かけてみた。広場に出ると、昨夜の警官がふたり、ぼくのほうにむかって歩いてくる。全身が凍りついたようになった。しかし、彼らはまったくなにもなかったように、ぼくのよこを通りすぎていった。
とつぜん、ふたりは空のほうを見あげた。まわりにいたひとたちもおなじょうに、空を見あげている。
ずっと上空に、飛行物体が、光を赤や青や黄色に変えながらゆれている。警官は、無線で警察署に連絡している。
ぼくはなんだかとっても、うれしくなってきた。
アミがスクリーンを通して、ぼくを見ていることははっきりしていた。元気に手をふってあいさつを送った。
ステッキをついた年配の紳士が、空とぶ円盤がひき起こした騒動に、めいわくそうにしながらやってきた。
「空とぶ円盤だ!"UFO"だ!」
と子どもたちはよろこんでさけんでいる。年配の紳士は上空を見あげたあとで、ふゆかいそうな顔をして言った。
「なんて無知な、迷信深いひとたちなんだ!気球か、ヘリコプターかそうでなけりゃ飛行機に決まっている。"UFO"だと!まったく、ばかばかしい。おろかなひとたちだ」
と言って、尊大にステッキをふりながら、もう、この朝の空にあらわれたすばらしい光景には目もやらずに、通りのほうへ立ち去っていった。
アミの声が、耳もとに聞こえた。
「さよなら、ペドゥリート」
「さよなら、アミ!」
こうふんして返事をした。
"UFO"は消えた。
翌日の新聞は、この朝の事件をなにも報道していなかった……なぜなら、近ごろは、このような集団幻覚は、もう、少しもめずらしいことではなく、まったく"ニュース"のネタにもならなくなってきたからだ……。
ただただ、毎日、"無知な迷信深い"ひとの数だけが、静かに増えつづけている……。
温泉場の海岸の、ちょうどアミと知り合ったあの岩の上に、円にかこまれた翼のはえたハートがきざまれている。だれもどうやってきざんだのかは知らないが、まるで、それをきざむために特別に鋳造した岩のように立っている。だれでもそこまで登れば見ることができるけど、その高い岩を登るのは、けっしてかんたんなことではない。とくに、おとなにとってはなおさらだ。なぜなら、子どもはもっと敏捷だし、そして何よりずっと軽いから。
【感想】
とうとうアミとのお別れの時間がきてしまった…という想いです。
ペドゥリートと同じように、まだまだアミと一緒にいたい!と私も感じました。でも、それはエゴであって、アミにはたくさんの人をサポートするお役目があります。だから、「独り占め」してはならないなぁ。。。
すべての国境をなくして、"国"は"県"となる。
私は2025年4月に大阪・関西万博に行って、各国の違いや特徴を知り、それぞれが素晴らしいので、それが単一になるのはもったいないけれど、"県”としての集まりであれば、本当にそれを尊重し合える"地球"になったら、いいなぁ。
「奪い合えばたりぬ 分け合えば余る」
これは相田みつをさんの言葉ですが、アミの言う宇宙の基本法である愛が地球上にあふれ、分け合えるようになれば平和に共存する未来が誰にでも描けると思います。地球規模のことを考えていても「現実的でない」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、全ては「フラクタル」(相似形)なのですから、ひとりひとりが心の中で実践していけば、それは地球全体で可能になる、ということではないでしょうか。
Comments