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【朗読】13)『アミ 小さな宇宙人』第11章 科学が霊性を発見するとき 

エンリケ・バリオス著の『アミ小さな宇宙人』の朗読と個人的な感想です。










【文字起こし】(漢字表記も含め全て原文のままです)



第11章 科学が霊性を発見するとき

 

 空色をした大きな湖に近づいた。水面をヨットやモーターボートが走り、岸辺では人々が水浴びを楽しんでいた。なんだか、この水晶のように透明な湖の中にもぐってみたくなった。


 「そうするわけにはいかないんだよ」

 とアミがぼくの気持ちをキャッチして言った。

 「ぼくのもっている細菌のため?」

 「うん、そのとおりだよ」


 乗船場があって、そこにいろいろなものがおいてあった。豪華なヨット、小さなオールのついたボート、いろいろな大きさの美しい透明な球体、水上用自転車や潜水用具など、好きなものをだれでも自由に使うことができるという。

 「じゃ、どれでも好きなものを選んでいいんだ……」

 「そうだよ」

 「じゃ、たいてい、みんな、豪華なヨットを選ぶんじゃないの……」

 「そんなことないよ。ボートをこぐのが好きなひともいるし、小舟に乗って遊んだり、水とたわむれたり、体操したりするひとも多い」

 「どうして、ここにはこんなにたくさんの娯楽施設があるの?きょうは日曜日なの?」

 「ここはね、毎日、日曜日だよ」

 とアミは笑って言った。


 潜水用具をつけて潜水しているひともいた。

 「みんな、水の中でいったい、なにをしているの?」

 「いろいろだよ。水中を散歩したり、遊んだり、楽しんだり……。中に入ってみたいかい?」

 「でも、円盤から出るわけにはいかないって言ったじゃない……」


 アミは、ほほえみながら円盤を湖の方向に進め、そのまま潜水した。

 水の中の世界は目がさめるように美しかった。たくさんのひとたちや、いろいろな乗り物が行き来していた。水中メガネをし小さな酸素ボンベをつけて近くを泳いでいた子どもが、ぼくたちを見て近づいてきた。まどガラスにはなを押しつけて、ぼくたちにむかって“あっかんべー”をしている。アミはそれを見て、むじゃきに笑った。

 もしぼくが地球の海で、“UFO”を見たとしたら、ぜったいこんなふうにはふるまえなかっただろう……。


 湖の底に、いろいろな色の光をはなつ、巨大で透明なドームが目に入ってきた。

 内部にはレストランのようなものが見え、テーブルやオーケストラやおどり場が見えた。人々は陽気なリズムに合わせて楽しそうにおどっていた。テーブルにすわっているひとたちは、山盛りのアイスクリームや、細長いコップに入った飲み物を飲みながら、おどりに合わせて手拍子をとったりしていた。

 「アミ、ここもほんとうに無料なの?」

 「もちろん、みんなタダだよ」

 「でも、そんなに生活が快適なら、どうしてみんなはたらいたりなんかしないで、もっと楽しむことだけしないの?」

 「じっさいここはほんの少ししか仕事がない。重労働はみな機械やロボットがやってしまうし」

 「ここは“天国”へ行くよりもいいや!」

 「ぼくたちは“天国”にいるんだよ。ペドゥリート。そうじゃない?」


 ぼくはだんだん、このような世界に生きるということが、どんなにすばらしいかということをはっきりと理解していった。


 「きみたち地球人は、どうしてもオフィルのような生活を手に入れなければならないね」

 とアミが言った。まったくそのとおりだと思った。

 湖の底では見たことのないきみょうな魚や水草が目に入ってきた。円盤はその中をゆっくりと進んでいった。

 いくつかのピラミッドが、水草や色鮮やかなサンゴのあいだを透かしてむこうに見えた。


 「サメはいないの?」

 「ここにはほかの生きものを害するようなきけんな動物は、いっさいいないんだよ。猛獣とか、サメ、毒へビといった愛から遠くかけはなれた動物は、それらにふさわしいところにいる……」


 「魚はなにを食べているの?」

 「地球のウマやウシとおなじように草を食べている。進歩した世界では、どんな動物だって生きるために、ほかの動物を殺して食べたりなんかしないんだ」

 「それじゃアミ、きみも肉は食べないんだね?……」

 「きみはいったい、どう思っていたんだい!?」

 ぼくはなにも攻撃するようなつもりで言ったんじゃなかった。

 アミはすぐ笑って、

 「肉なんか食べないよ。考えただけではき気がする。罪のないかわいいニワトリやブタやウシを殺して食べるなんて!なんてざんこくなんだろう……」

 たしかにそう言われると、ぼくもなにかとてもざんこくな気がしてきた。

 そして、そのときからぼくも肉は食べないと心に決めた。

 「ところで食べ物だけどね……アミ」

 ぼくは空腹を感じて言った。

 「おなかすいてる?」

 「うん、ペコペコだ。なにかないの?宇宙食とか……」

 「あるよ。うしろのほうをさがしてごらん」

 と言ってそうじゅう席のうしろの戸だなを指さした。上のほうに開く戸をもちあげた。へんな記号の書いてある、木のような物質でできた容器のたくさんつまった、小さな食料だながあらわれた。


 「いちばん、はばのひろいのを取って」

 どうやってあけたらいいのかわからなかった。密封されているようでもあった。

 アミは、ぼくがまごついているようすを見て笑った。

 「赤い点があるだろう。そこを押してごらん」

 言ったとおりにした。ふたがゆっくりとあいて、中から飴色をしたやや透明なクルミのようなくだものがあらわれた。

 「これな~に?」

 「とにかく、ひとつ食べてごらん」

 指でつまんでみるとスポンジのようにやわらかかった。舌の先でちょっとなめてみた。あまい味がした。

 「安心して食べなよ。毒なんか入ってないから」

 アミはぼくの動作を、一点も見落とさないように観察しながら言った。

 「ぼくにもひとつ、ちょうだい」

 容器を彼のほうにさし出した。アミはひとつ取って口に入れ、うっとりと味わっていた。

 ぼくは少しかんで、注意深く味わってみた。クルミやハシバミの実のような味だ。すばらしくデリケートな味で気に入った。ふたかじり目は、とてもおいしく感じた。

 「これ、とってもおいしいね。アミ」

 「三個か四個以上は食べちゃダメだよ。タンパク質がとても豊富だからね」

 「うん、でも、これなんなの?」

 「蜜のようなもんだよ。ハチ蜜のようなね」

 と笑いながら答えた。

 「とてもおいしい。いくつか、おばあちゃんにおみやげにもっていってもいい?」

 「もちろんだとも。でも容器はここにおいていって、きみのおばあちゃんにだけだ、それ以外のだれにも見せちゃダメだよ。みんな食べて、ひとつものこしておいちゃダメだ。約束できる?」

 「うん、わかった。約束するよ。ウーン……おいしい」

 「ぼくはこれよりも、もっと地球のくだもののほうが好きだね」

 「エッ!なにが?」

 「あんずとか西洋スモモとか言うやつ」

 「あんずが好きなの?」

 「ぼくの星じゃ、とても貴重がられているんだよ。われわれの土地でも栽培をはじめたけど、まだまだ地球のものほどおいしくはつくれないんだ。だからあんず畑にはよく"UF0"が出現するんだよ……」

 と言って赤んぼうのようなむじゃきな高笑いをした。

 「じゃ、盗むわけ?」

 とおどろいて聞いた。

 「盗む?盗むってな~に?……」

 とアミは、とぼけて聞いた。


 「ひとのものを取ることだよ」

 「ああ、また、所有の問題か。われわれにはどうも、われわれの世界の“悪い習慣”をさけることができないようだね。でも、たかがあんずを五個か六個、取ることがねえ」

 と笑って言った。

 おかしかったけど、なにか同意できなかった。くだものひとつにしろ、百万ドルにしろ、盗むことには変わりないと思った。

 「どうして地球では、なにか必要なものを、タダで取るのがいけないんだい?」

 とアミがぼくに聞いた。


 「なに言ってんの。もし、なにももらえないとしたら、だれも苦労して、はたらきはしないよ……」


 「じゃ、愛がないんだね。エゴイズムだよ。代償がなにかもらえないなら、なにもあたえないなんて……」


 アミはなにかを真剣になって言うときには、思慮深いほほえみをたたえた独特の表情をする。

 ぼくがあんず畑の持ち主だとしたらどうだろうと想像してみた。ぼくが、苦労してせっかくつくったあんずを、だれかがやってきて一銭もはらわずに取りはじめる。やがて、こんどは、“ならず者”が、トラックを乗りつけてあんずをみんなもっていってしまう。ほくはなんとかやめさせようとするけれど、あんずを山積みにしたトラックの男は少し遠のいてから、ぼくをからかってこう言う。

 「やーい、やーい、おまえさんには、愛がないのかい。エゴイストめ、ハッハッハッ……」

 「まったく、なんという人間不信だ!」

 アミはぼくが頭の中に描いていたスクリーンの“映画”を見て、ため息をつきながら言った。

 「文明社会では、だれもひとを、利用したりなんかしない。いったい、その男は、トラックいっぱいに積んだあんずを、どうしようっていうんだい?」

 「もちろん、売るに決まっているじゃない……」

 「われわれはだれも売ったり買ったりなんかしないよ。第一、お金なんか存在していないんだからね……」

 これには少しまいった。文明世界にはお金がないということを、すっかり忘れていた。

 「わかったよ、アミ。でも、どうしてタダではたらけるの?」

 「もしね、きみに愛があるなら、ひとに奉仕できることで幸福に感じるし、どうじに、ひとから奉仕を受ける権和をもつんだ。たとえばとなりの家に行って必要なものをもってこられるんだ。もし必要なら牛乳屋からは牛乳を、パン屋からはパンをね。でも、こんなふうにみんなばらばらに無秩序にやるのではなく、組合が組織されていて、配給センターに運んで、きみがはたらくかわりに機械がやってくれるんだよ……」

 「じゃだれも、なにもする必要ないや!」

 「いつもすることはなにかあるよ。機械を点検したり、より使いやすいものに改集したり、われわれを必要としている人々をたすけたり、われわれの世界や自分じしんをよりかんぺきな方向に近づけたり、もちろん、自由な時間を楽しんだりね」

 「でも、いつもひとを利用することばかりしか考えないで、それ以外なにもしないひとは、いくらでもいるよ」

 トラックの男を思い出して言った。

 「きみが言うような“ならず者”は、進歩の段階が低いんだよ。四〇〇度以下でたくさんのエゴと、ほんの少しの愛しかもっていない。じっさい、自分をぬけ目なくかしこいと“思いこんでいる”けれど、でもほんとうは大バカ者なんだよ。その程度の水準じゃとても文明世界に入ることはできない。文明世界のひととは、ひとに役立つことで幸せに感じられるひとのことなんだ。

 ここではたくさんのひとが楽しんでいるけど、大部分のひとは、別のところにあるピラミッドの中の破究所や大学ではたらいていたり、おくれている惑星に使命を果たすためにミッションとして出かけ、奉仕したりしているんだ。人生とは幸福になることだし、それをじゅうぶんに楽しむことだ。でも、最大の幸福は、ひとに奉仕することによって得られるんだよ……」

 「じゃ、いま、ここにいるひとたち……なまけ者なの?」

 アミの笑いからして、またバカなことを質問してしまったことがわかった。

 「そうじゃないよ。この世界は奉仕する機会がほんの少ししかないんだよ」

 「一日何時間くらい、はたらくの?」

 「仕事によるけど、快適な仕事なら一日じゅうはたらくことができる。いまのぼくのようにね……でも、それは、非常な特権なんだ」

 「アミ、きみ、はたらいているって?……アミ、きみはぼくとこうやって散歩しているだけじゃないの?」

 アミはぼくの言っていることを聞いて、笑って言った。

 「ぼくは言ってみれば、教師とか、使者のようなものだよ。ま、どっちでもおなじようなものだけどね」


 ぼくにはおなじようには思えなかった。そのときふたりの若い男のひとが、ピラミッドのまどをたたいて、どろぼうに入ろうとしているところが見えた。

 アミは、ぼくの頭の中をキャッチして、笑って言った。

 「まどガラスを掃除しているところだよ!•••…なんでも犯罪と結びつけちゃうんだねぇ……」


 「ところで、ここの響察はどうなっているの?」

 「警察だって?なんのための?」

 「警備したり、悪人を取りしまったり……」

 「だれが悪人なの?」

 「ここには、悪いひとがいないの?」

 「だれもかんぺきなひとはいないよ。でも、七〇〇度以上はもち合わせていて、前むきで的確な情報と適度な刺激と愛をともなった社会組織の中にいるので、みんな、同胞に対して害をあたえるということがない。“悪人”になる必要がないんだよ。だから、警察もいらないんだ……」

 「信じられないな!」

 「信じられないって、でも別の世界では、人々がおたがいに殺し合っている……そっちのほうがずっと信じられないことだよ」

 「ほんとにそのとおりだ。いま、はっきり気がついたけど、いつか地球がオフィルのような平和な世界に達することは、不可能のような気がしてきたよ。ぼくたちは悪だ。愛があまりにも欠けている。ぼくじしんだって何人か好きじゃないヤツがいる」

 

 --クラスの同級生のひとりを思い出した。いつもバカまじめなヤツで、みんなが楽しく遊んでいるときなどに、ヤツのひややかな批判的な視線を見ただけでシラケてしまって、楽しさなんかどこかへ行ってしまう。それから別の同級生で、いつも自分を聖人と思いこんでいるヤツ。聖母が彼の前にあらわれて天国に行けると言われたと言いふらしていて、ぼくたちのするいたずらやじょうだんや、ミサに行かないことをいつも非難ばかりしている……ぜったいに好きになれない。あんなヤツら!!

 「ぼくだって、ぼくの星のひとや、ほかの世界のひとを、かならずしもすべて、こころよく感じているわけではないよ。でも好感がもてないからといって、彼らになにか危害をくわえたりはしないよ」

 「それほんとう!? きみにも欠陥があるの?きみはかんぺきかと思ったよ」

 少しこうふんして言った。

 「アミ、ぼくだって、ヤツらになにも危害をくわえたりはしないよ。でもあんなヤツらといっしょに生きるようなことだけは、ぜったい、強制しないでほしい」

 「進歩した社会でも、やはり性の合わないひとというのはいる。でも拒絶もしない使命を果たす仕事とか長期の共同生活の仕事のばあい、根性の合ったひとをさがす。いずれにせよ、一五〇〇度くらいになれば、すべてのひとを愛することができる。その方向にむかって進歩するように努力すべきだけどね。地球人にしろ、われわれにしろ、現時点では、とても、そんなに高度なことは要求できない」

 「じゃ、ぼくたち地球人は、“かんぺき”になる必要はないの?」

 これを聞いてアミは目からなみだを流すほど笑った。

 「かんぺきな地球人だって!!……ハッハッハッ……でもかんぺきになるって、いったいどういうことなのか知っているの?ペドゥリート」

 「うーむ、たぶん、神さまみたいになること?」

 「そのとおりだよ。だれがなれるって言うの。ぼくはとてもなれないね……」

 「ぼくもだ」

 「それはきょくたん論的な思考法だよ。いつも理想化せずにはいられない。つまり地球人の典型的な考え方というわけなんだよね。まったくあわれみもなく人を殺したり、拷問にかけたり、だましたり、物欲のみに生きたり、まだまだ、とても低い発展段階だよ。にもかかわらずへいきでかんぺきさを求めるなんて!……ただ武器を放棄しただけでじゅうぶんなんだ。そしてみんな、仲よく家族のように平和に暮らす。それでじゅうぶんなんだよ。それを実現するのになにも人間にかんぺきさなんかを、要求しなくっていいんだ。ただ、他人を傷つけることをしなくなるだけでじゅうぶんなんだよ。そのほうがかんぺきさを求めることなんかよりも、ずっとやさしいことなんだ。指を“パチッ”と鳴らしただけで、世界がすぐにでも平和になれるんだ。それはとても考えられないことであり、不可能なことであり、ユートピアなんだ。でも、なんと反対に、地球人には、“かんぺきさ”はまるで可能のように思っている……そして現実には、人類のためになにもしようともせず、ただ他人や自分のささいな粗さがしのみに専念しているんだ。まさに、“ブヨは濾しても、ラクダは飲みこんでいる"(訳注:マタイによる福音書23章24節-重大なこととかもっともかんじんなことにまったく重きをおかず、ささいなどうでもいいことを重大視すること)ようなもんだよ……」

 「もしだれかが、神を求めて山にひきこもったとしたら?」

 ぼくは宗教学校にいるので、いつもこういったテーマが話題になる。

 「もしだれかが川でおぼれていたとする。きみはその川岸でただ神にお祈りをしているだけで、そのひとに対してなにもしないとする。それで神がきみに対して満足すると思う?」

 とアミがぼくに質問した。

 「よくわからない……でも……ぼくのお祈りが神をよろこばせるんじゃない……」

 「ペドゥリート、宇宙の基本法はなんだったっけ?」

 「愛だよ」

 「じゃ、きみの兄弟がおぼれているあいだ、ただ手をこまねいてお祈りをしているのと、彼のいのちをすくうのと、どちらの行動に、より愛があると思う?」

 「よくわからないな。でもぼくのお祈りで、より神を愛していることになるとするなら……きっと神は……」

 「別の例を出してみよう。きみにふたりの子どもがいたとする。ひとりは川でおぼれかかっている。別の子はきみの肖像をおがむことに専念して、自分の兄弟をたすけようともしない。この行為が正しいと思う?」

 「とんでもない!! ぼくの子をたすけてくれたほうが何百倍もいいに決まっているよ。でも……神は、ぼくみたいなふつうの人間とはちがうんじゃないの?」

 「ちがう?でも、どうして?虚栄心が強くて、利害にさとく、いつも人々から崇拝されていることばかり望んで、自分の子どもたちの運、不運にまったく無関心のような?……かんぺきでないきみでも、そんなふうにはしないだろう。ましてやかんぺきである神が、きみより劣るようなことをするだろうか?」


 「アミ、そんなふうには、いちども考えたことがなかったよ……」

 「神は“おぼれかかっている世界”に対してまったく役立たずの無関心で、ただただ妄想的な“自己救済”や、個人の“かんぺきさ”や“進歩”だけにのみ関心のある信心顔をしたひとよりも、信仰者でなくても、兄弟に対していつも心をさいているひとのほうを好むんだよ」


 「それには気がつかなかったよ。アミ、でもどうして、そんなに神について知っているの?」

 「だって、神は愛だからね。愛を感じ、体験するひとが、神を感じ体験するひとなんだよ。

ひとを愛せる人が、ただ人の役に立つことを望むんだよ。」


 「アミ、きみの宗教は?」

 「ないね。いや、あると言えばあるかな。よくわからないけど……宇宙の宗教-すべての進歩した宇宙の宗教とは、愛をもって生きることにある。だって愛は神だからね……それ以外、まったく信仰のシステムなどもっていない」

 「ひとつをのぞいてね」

 「ひとつって、なに?ペドゥリート」

 「うん、愛が、基本的な宇宙の法だってこと」

 「ペドゥリート、宇宙の基本法は信仰じゃなくて法なんだよ。科学的にも精神的にも立証されていることなんだよ。われわれにとって、科学と精神性(霊性)はおなじことなんだ。やがて地球でも科学が愛を発見したときには、おなじようになるよ」

 「ぼくは、また、なにか•••…別の……」

 「迷信とでも思ったの?」

 アミが笑って聞いた。

 「うーん、なにかそんな……たぶん、好意とかね」

 「ううん、それとはまったくちがうね。ぺドウリート。じゃ、これから、ある、とても特殊なひとたちを見に行こう……」




【感想】

 この章を読んでいて、あんず畑のくだりでは特にペドゥリートの気持ちがわかるなぁと思っていました。あんず5、6個が盗まれるのを許していたら、トラックいっぱいに持っていかれてしまうことを怖がり始めてしまう気持ち。これは、今の地球ではあるあるだと思いました。アミはそれを「所有の問題」だと言っていたけれど、その概念をそっくり変えるというのはなかなか難しいことだとも思います。しかも、誰かにお金をもらうことも、お礼も何も言われなくてもやってあげる「無条件の愛」がアミの言う「愛」なのだから、本当にすごいレベルだな、と思いました。


 この章のタイトルは「科学が霊性を発見するとき」というものだったので、発見したところまでが描かれているのかと思ったのですが、「科学が霊性を発見するとき」がいつか来るかもしれない、ということでした。「科学が愛を発見」することができる日が本当に来てほしいな、と思います。今、本当に少しずつではありますが、量子力学の世界でもエネルギーのことが証明されつつあるし、目に見えない世界の大切さを感じている人が増えて行っている感じがします。ただ、やはり「目に見えるものしか信じない」「結果が全て」という考え方もまだまだ根強くあるので、その考え方も理解しつつ、折り合いをつけていくことが「調和の世界」には必要なのかな、と改めて思いました。


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