【朗読】12)『アミ 小さな宇宙人』第10章 宇宙親交と救済計画
- 学 心響
- 4月6日
- 読了時間: 12分
エンリケ・バリオス著の『アミ小さな宇宙人』の朗読と個人的な感想です。
【文字起こし】(漢字表記も含め全て原文のままです)
第10章 宇宙親交と救済計画
野原のくぼみに、小さな美しい円形劇場があり、そこできみょうな容姿をした人々が、観客を前になにかショーを演じていた。
さいしょは、みな、仮装しているものとばかり思っていたら、すぐ、そうでないことに気がついた……オフィル人よりも、さらにずっと大きなひとたちや、そうかと思うと子どものように小さいひとたち、地球人そっくりのひとたちや、それよりずっとやせたひとたちもいた……とてもかわいいまなざしや、ふしぎなまなざし、大きな目や、小さな口、オリーブ色の顔をしたはなやくちびるのとても小さいひとたち……。アミによく似た子どものグループがぼくの注意をひいた。
「彼らは、ぼくの星からきているんだ」
とアミが教えてくれた。
それぞれの惑星から五人ずつ、手を取り合って陽気な輪をつくり、きれいなメロディーに合わせておどっていた。金色のボールがゆっくりと落ちてくると、下にいるひとがそれを上につきあげ、のこりの四人とともに輪の中に入って小さな輪をつくり、新しいメロディーを奏でて別のおどりをおどっていた。そのふたつのメロディーがうまく調和していた。そのあいだ、外の大きな輪のひとは、さいしょの音楽に合わせてゆっくりとおどりつづけていた。ボールが別のグループのところに行くと、前のグループは大きな輪にもどり、新しいグループがまたおなじように中央に輪をつくって、別のリズムでおどっている。それぞれのグループが中でおどり終えるごとに、観客は大喝采をしていた。
「もちろん、みんな、ちがった星からきているんだろう?」
「うん。それぞれのグループが、自分の星のおどりを披露しているんだ」
観客はオフィル人だけでなく、さまざまな世界の人々がいた。円形劇場の周囲はたくさんの旗でかざられていて、いろいろなタイプの円盤が、劇場の外の指定されたところにおかれてある。また、ぼくたちとおなじように、空中に停止してショーを楽しんでいる円盤もいくつかあった。
「どのグループが、勝っているの?」
「勝っているって、なにに?」
「これ、コンクールじゃないの?」
「コンクール?」
「いちばんうまいグループを選ぶためのだよ」
「ちがうよ」
「それじゃ、いったいなんのためにやってるの?」
「それぞれみんな、一人ひとりが、自分の感じているものを表現して、観客に見てもらって、よろこんでもらったり、自分でもどうじに楽しんだり、友情のきずなをつよめたりするんだよ」
「いちばんうまいグループに賞をあたえたりはしないの?」
「だれも、自分を他人と比較なんかしてないよ。学んだり、楽しんだり……」
「地球では、優勝者がいちばんだよ……」
「でも、そういうやり方だと、いちばんビリははずかしい思いをするし、いじけるよ。反
対に受賞者にはエゴがひろがるし」
とアミが笑って言った。
「でも、たいへんだけど、勝ちたいと思ったら、それなりに努力しなくちゃならない」
「また、他人に“勝つ”、他人より上にぬけ出すという考えだね。それは競争だし、エゴイズムだし、そしてさいごには分裂だよ。そうじゃなくて、ただ、自分じしんと競争して自分じしんにうち勝つべきなんだよ。他人と競争するのじゃなくてね。進んだ文明世界には、そういった同胞との競争はまったく存在しない。それこそ、戦争や破壊の原因になりかねないからね」
「そんなに大げさに考えなくたっていいと思うよ……健全な競技、たんなるスポーツにすぎないんだからね……」
「でもそれはとても野蛮人的な発想だね。だってじっさいに、もう、地球のサッカー場ではその試合がもとで、なぐり合いはもちろんのこと、殺し合いにいたるようなみにくい争いがなんども起こっている。いま、きみが見ているのは、それとちがってずっと健康的なスポーツだし、もっとずっと芸術的なんだよ」
「ちょっと、ぼくの国の子どもの遊びに似ているな」
「輪とか円は、宇宙のシンボルで、親交を象徴しているんだよ。そのほか、いろいろな意味があるけど、ひとつの世界ということもあらわしている」
「アミ、きみの胸の円はどういう意味があるの?」
「これは、地球人の言葉で言えば、人類とか、人間性とかをあらわしているんだ」
「その翼のついたハートは?」
「これは崇高で、自由で、とらわれのない愛をあらわしている」
「うわー!人類が愛によって結ばれる!」
と感動してさけんだ。
「きみは天才だよ!」
とアミはよろこんでぼくに言った。
ショーを見ているあいだ、アミはぼくにいろいろと説明してくれた。
「一つひとつの動作が、それぞれ意味をもっていて言語の役目もしているんだ」
「なんて、きれいなんだろう!おばあちゃんに見せてあげたいな。おばあちゃんはなんて言うだろう……ところで、アミ、いま、地球はなん時ごろ?」
「きみのおばあちゃんが起きるまでには、まだ四時間あるよ」
「ここからでもおばあちゃんのようす、見ることができる?」
「うん、できるよ。地球の軌道をまわっているわれわれの衛星と連結してね」
計器盤のボタンをそうさすると、スクリーンに地球がとても高い角度からあらわれた。
そして、すぐおばあちゃんのねむっているところがうつった。
「わー、なんてすごいんだ!……宇宙のすべてを見ることができるの?」
「あまり、びっくりして誇張しすぎないでね……きみは宇宙のひろさを知らないようだね」
「うん、よく知らない」
「われわれは、もっとも近くにある数百万の銀河系を知っているけど、それ以上は、ただ遠くからながめるだけで、そのむこう側にいったいなにがあるのかはまったくわからない……。でもこのスクリーンのおかげでたいくつすることはない。だって、数百万の銀河系がわかればそれでじゅうぶんじゃない?」
と笑って言った。
「そのうえ、あらゆる世界の過去にも波長を合わせることができる……」
「過去にだって!!……で、でも、どうしてそんなことが可能なの?」
「かんたんなことだよ。みな、いろいろな方法で保管してあるんだ。すべてわかっていて、“なぞのままであるものは、ひとつもない”んだよ。
いま、その中のひとつの方法を教えてあげるよ。見てごらん。あそこに金色の気球が浮いているね。そう、あの気球が太陽の光を受けると、その反射した光はきみの目にとどく。また別の方向にむかった光、たとえば上のほうに反射した光は、無限の宇宙にむかって進む。その光のどの点でもいいからキャッチするんだ。そしてそれを増幅すれば、未来の時点で、いま、きみが見ているのとおなじものを、過去のものとして見ることができるんだよ」
「すごすぎて、信じられないな!」
「もう少し先になったら、ほんとうのナポレオンやシーザーやキリストを見せてあげるよ」
「ほんとう!?」
「うん。それにきみの何年か前のすがたもね……でもいまは、もう少しオフィルを観察してみよう」
円盤は円形劇場をあとにして上昇した。かがやいた円盤がこちらに接近したときに、ぼくたちに光の合図を送ってきた。アミもいたずらっぽく笑いながら合図を返した。
「だーれ、あのひと?きみの友だち?」
「とても明るい陽気なひとだよ。ずっと前に行ったことのある惑星のひとなんだ」
「どういう意味なの?あの光のサインは」
「あいさつだよ。友情のしるしだ。おたがいにとても好感がもてたんでね」
「どうしてわかるの?」
「感じなかったかい?」
「感じなかったと思うけど……」
「それは、自分をよく観察していないからなんだ。外部にはらうのとおなじくらい、自分じしんに注意をはらっていたら、たくさんのことが発見できるんだよ……。あの円盤が近づいてきたとき、なにかある種のよろこびのようなものを感じなかった?」
「わかんない。たぶん、感じなかったと思う。ひょっとするとぶつかるかもしれないと、心配していたから……」
「また、とりこし苦労していたわけだ」
とアミが笑って言った。
「見てごらん。そこにとんでいる円盤を。ぼくの星のだ。これとおなじ型の円盤だよ」
「きみの星にも行ってみたいな」
「今日は時間がないから、またつぎのときにつれていってあげるよ」
「ほんとう?」
「例の約束の本を書くならね」
「かならず書くよ。約束する。そうしたら過去にもつれていってくれる?」
「つれていってあげる」
「シリオの海岸にも?」
「うん」と笑って、
「なかなかいい記憶力をしているね。それにもし万一、地球が破滅するようなときにそなえて、救出した人々が住めるように用意してある星にもね」
「ということは、地球の破滅はさけられないっていうことなの?」
「それは、地球人しだいだよ。統一して、国境をなくし、平等に、そして武器をなくして生きられるかどうかにかかっているよ」
「地球に、たったひとつの国をつくることだね?」
「うん。ほんとうにそうすべきなんだよ。度をこした地方主義というのは、せまくて、まずしい愛だよ。まさにエゴイズムそのものだね。一カ所に執着することによってほかの場所を愛する余地が少しもないなんてね。宇宙はとても広大なんだよ。もっと考えて“大きく”愛すべきだよ。なかには、自分の住んでいる地区が世界じゅうでいちばんいいところと思いこんでいるひともいるんだから」
「アミ、きみの言うとおりだよ。国境をなくして、みんなで仲よく暮らすべきだ。ただ、大気圏だけが、ぼくたちの国境だ!」
とぼくは感動してさけんだ。
「それさえ必要ないよ。宇宙は自由なところだし、愛は自由だ。われわれはなんの許可もなしにこの世界にこられるし、自由に好きなところへ行けるんだ」
「じゃ、みんな、ここになんの許可もなしにきているの?」
「もちろんだよ。そして、ここだけでなくてほかのどんなところにでもね……」
「でも無許可できて、ここに住んでいるひとたち、おこったりしないの?」
「どうしておこったり、めいわくがったりする必要があるの?」
とアミは、楽しそうに言った。
「よくわかんないけど、でもあまりすばらしすぎて、かんたんにはちょっと受け入れにくいよ……」
「ペドゥリート、いいかい。進歩した世界には宇宙親交というものが形成されているんだよ。すべてのひとはみんな、兄弟だし、友だちなんだよ。だれもめいわくをかけないかぎり、われわれの行き来は、まったく自由におこなわれている。なんの秘密もなければ禁止もない。戦争もなければ、暴力もない。暴力は未開文明に特有のもので、未開人の形成している社会の特徴なんだよ。
われわれのあいだには競争もなければ、だれも兄弟からぬき出ようなどといった野心をもっているひとはいない。ただ、みな人生を健全に楽しむことだけを望んでいる。そして人々を愛しているから、われわれの最大の幸福は、ひとに奉仕し、援助すること、そしてひとの役に立っていると感じられることによって得られるんだ。みんな、平和に対するはっきりとした認識をもっていて、創造者を愛し、いのちをあたえてくれたことにかんしゃし、それをじゅうぶんに満喫する。人生とはわれわれにとって科学がどんなに発達しようと、とても単純なものなんだよ。
もし、地球のひとが生きのびて、エゴイズムや人間不信を克服できたときにはすぐにでも、宇宙親交の仲間に入れてあげることができる。もしそれが実現すれば、人生はいままでのように生きのびるための、過酷で激しい生存競争から解放され、すべてのひとに幸福な生活がおとずれはじめるよ。そのときにはわれわれは、地球が平和で不正のない連合した世界になるために、必要なものをすべてあたえよう」
「アミ、とても美しくて、すばらしいことだね」
「だって、ほんとうのことだからね。真実だけが美しいんだよ。地球に帰ったら一冊の本を書きなさい。それがひとつの声となり、ひと粒の砂となり、第一歩となるためにね」
「ぼくが言ったら、みんな、きっとぼくを信じて武器を捨てて平和に暮らすようになるよ……」
と確側をもって言った。アミはぼくのかみをなでながら笑った。
でも、こんどは少しもイヤじゃなかった。だってアミはぼくのようなたんなる子どもではないことが、もうはっきりしていたから。
「ペドゥリート、きみはほんとうに、むじゃきなんだね!地球じゃ現にいまでもどこかで戦争をやっているんだ。それもざんこくのかぎりをつくしてね。まったく深くねむっている。とても深刻で、厳めしく、ほんとうに重傷だね。でも、宇宙の真実はそんなものじゃないんだ。もっとずっと美しいものなんだよ。野に咲いている花がきびしいかい?」
「ううん、とても、かれんだよ」
「もし、国を支配しているひとたちや軍隊が、花の創造者だとしたら、きっと、花びらのかわりに弾丸を、茎のかわりに非人道的で横暴な法をおくだろうよ……」
「じゃ、だれもぼくのこと信じないの?……」
「子どもたちと、子どものような心をもったひとたちは言じるよ。でも、たいていのおとなはおそろしいことだけが真実と思っている。物欲ばかりに目が行って、武器を崇拝したり、美しいものや真実などにはまったく興味がない。闇を光と思っている。人生の価値を完全にとりちがえているんだ。これらの人々は、きみが書く本にはぜんぜん興味をもたないよ。でも子どもたちは別だ。真実は美しくて平和だっていうことを知っているからね。彼らがきみを通して伝えたわれわれのメッセージを普及させることに貢献するだろう。われわれは、決められた枠の中で人類のために救助をする。地球のひとたちは、いま、自分じしんで努力しなければならないときを迎えているんだよ」
「じゃ、もし、地球のひとたちがぼくの言うことを、まったくとりあわなかったとしたら、地球は自滅してしまうの?」
「数千年前にしたのとおなじことを、しなければならなくなるかもね」
「すぐれた度数のひとだけを救出するの?」
「そのとおりだ。ペドゥリート」
「ところでアミ。ぼく、七〇〇度ある?」
とまた、あらたに聞き出そうと試みた。
「平和のためになにか貢献しているひとは、みなよい水準に達している。なにかできるに
もかかわらず、なにもしないひとたちは、ほんとうに冷淡なひとか、共犯者なんだよ。愛が不足している。よい水準に達していないんだ」
「じゃ、ぼく、家についたらすぐ本を書きはじめるよ、アミ」
と少しおどろいて言った。アミはぼくを見て笑った。
【感想】
オフィル星で繰り広げられている「ショー」はとても楽しそうですね!みんなが歓びで自分の感じているものを表現している時間です。動作一つ一つにも意味があって、言語の役割もあるだなんて、まさにハワイのフラダンスと同じだな、と思いました。ペドゥリートはおばあちゃんにも見せてあげたいほどの愛を感じていましたから、それほど美しかったのだと思います。
別の円盤がアミたちに合図を送ってきたときの話しで、アミがペドゥリートに言った「感じないのは自分に注意を払っていないからだよ」という言葉にはっとさせられました。無意識のうちに「感じる」ことをしないようにしていることが確かにある、と思いました。それは、負の感情を感じたくないから。負の感情を感じるくらいなら「無」の方が楽ですから。でも、それを無意識にやってしまっていては、感じ取れるものも感じ取れなくなってしまいます。負の感情を自分自身で上手に扱うことができれば、感じることが怖くなくなるな、と思いました。
アミが言う「真実だけが美しい」という言葉に救われる思いがします。そして、その美しさを感じ取れる自分でいたいな、と強く思います。
地球が破滅するかどうかは地球人次第。国境をなくし、平等に、そして武器をなくして生きられるかどうか、試されています。
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