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【朗読】9)『アミ 小さな宇宙人』第7章 UFO搭乗と目撃証拠

更新日:4月2日

エンリケ・バリオス著の『アミ小さな宇宙人』の朗読と個人的な感想です。








【文字起こし】(漢字表記も含め全て原文のままです)


第7章 UFO搭乗と目撃証拠


 遠くの海にむかって進んだ。わずか数秒で海をよこ切り、すでに眼下には、いくつかの島があらわれはじめた。 東京上空を、下降しはじめる。空にむかってつき出た塔のような屋根の家が、たくさん見えてくるのかと期待していたら、高層ビルや近代的な大通り、公園、そして、道路にひしめく車やひとなどが、たくさん目に入ってきた。

 「ぼくたちは目撃されている」 とアミは、点滅しはじめた表示ランプを指さして言った。

通りではひとがおおぜい集まってきてぼくたちのほうを指さしている。円盤の外側のさまざまな色をした光があらたにつきはじめた。かなり上空で二分間ほどとまった。

「別の目撃証拠の指令が入っている」

 と画面にあらわれたきみょうな記号を見ながらアミが言った。

きゅうに昼の世界が消え、まどガラスを通して星だけがかがやいていた。

 下のほうには遠くでわずかな光をはなつ小さな町と、道を行く車のライトが見えるほかは、ほとんどなにも見えなかった。

 アミの正面にあるスクリーンのほうへ行った。ふつうに見たら、暗くてなにも見えないのに、そこには眼下のすべての情景がくまなく照らし出されていた。画面は完全に明るく、みどり色をした一台の自動車が見え、中にふたりの男女が乗っているのが見えた。

 ぼくたちは地上二十メートルほどの高さにいる。点滅している表示ランプから、ぼくたちが彼らに見えていることがわかる。

 まどからでは、暗くて見えないので、これからスクリーンで見ることにした。肉眼よりもずっとはっきり見えた。

 ふたりの乗った車はぼくたちのすぐ近くにきて道のよこにとまり、中にいたふたりは車からおりて、おどろいたような目をぼくたちにむけ、大きな身ぶりでなにかをさけびはじめた。

「なにを言っているの?」

「通信を求めているんだよ。彼らはUFOの研究家たち…というよりは“宇宙人の崇拝者”だ」

「それだったら答えてあげたらいいのに」

 彼らは心底けんめいだった。

「それができないんだ。これも“救済計画”の厳格な指示にしたがわなければならない。 交信は個人の気まぐれや意志では決められない。“上部”が決定することなんだ。それに 隅像崇拝の共犯者にはなりたくないからね」

「ぐうぞうすうはいって?」

「宇宙の法を破っているっていうことさ」

 とかなりまじめにアミが答えた。

「それはどういうことなの?」

「われわれを神とみなしているのさ」

「それがどうしていけないの?」とぼくは言った。

「ただ唯一神だけが崇拝されるべきなんだ。そのほかはみな偶像崇拝さ。もし、この男女のまちがった宗教観念を認めたとしたなら、それは、われわれが神の座をうばったことになるし、われわれの、神に対していちじるしく尊敬の念を欠いた行為のあらわれともなる。もしわれわれを“友”とみなすなら、話はまったく別なんだけどね」

 そういうことなら、あの男女のカップルのまちがいを正してあげるべきだとぼくは思った。

「ペドゥリート」

 アミはぼくの考えていたことをキャッチして言った。

「宇宙の未開文明世界はわれわれから見ると、とてもおそろしい規律違反をおかしている。 たったいまこの瞬間にも“異端”だというだけで、多くの人々が生きたまま焼き殺されている。こんなことが多くの星で起こっているんだ。じっさいこの地球でも数百年前にやっていたことなんだよ。こうして話しているいまでも海の中では大きな魚は小さな魚を生きたまま食べている。この星はまだそれほど進化していない。人間にもいろいろな進歩の段階があるように、惑星もまたおなじことなんだ。未開世界を支配している法則はわれわれから見るととてもざんこくだ。地球でも数百万年前は別の法が支配していた。すべてが狂暴で攻撃的で、みな、するどいつめやきばや猛毒をもっていた。現在ではもっと進化

した段階に達したおかげで、そのときよりはいくらか豊かな愛が育ってきている。でもまだまだ文明社会と呼ぶわけにはいかない。まだかなりの残忍さが存在しているからね」

 そう言うとアミはスクリーンの波長を合わせた。すぐ戦争の場面がうつし出された。近くに子どもや老人も住んでいる建物をめがけて、兵士が戦車からロケット弾を発射している。


「これは地球のある国で、いま、じっさいに起こっていることだけど、われわれはなにもできない。それぞれの惑星や国や人間の進歩にかんしては、だれも干渉すべきではないんだ。けっきょく、みな、修行期間中なんだ。ぼくもかつてはざんこくな野獣だった。 そして別の野獣にズタズタにされ殺された。また、野蛮な段階の人間だったときもあった。 ひとを殺し、自分もまた殺された。とてもざんこくな体験をしてきたんだ。なんどもなんども死んで、少しずつ宇宙の基本法則にそった生き方を学んでいった。いま、ぼくの人生はずっとよくなっている。でもだれにも神のつくった進歩のシステムに反することはできないんだ。このカップルは宇宙の法を破っている。われわれを偉大で荘厳な神と混同し、神にささげるべき崇拝と愛をわれわれのほうにむけている……さっき見た兵士も“殺してはいけない”という宇宙の法を破っている。彼らはその代償を自分で支はらわねばならない。こうやって少しずつ学んでいくんだ。ある人間とかある世界が一定の進歩の段階に達したときのみ、進歩のシステムに違反することなくわれわれの援助を受けることができるんだよ」


 この話を聞いたときには、ぼくはアミの言ったことの半分すら理解できなかった。でも、あとになって思い出してみて、はっきりとわかった。でもそれはもう彼が旅立ってしまったずっとあとのことで、当時のぼくには彼の言ったことをおおよそしか表現することができなかった。


“スーパーコンピューター”の指令待ちでそこにとどまっているあいだ、アミは日本のテレビに波長を合わせた。そしていつもの上きげんでニュースに見入った。

 テレビのインタビュアーがあらわれて通行人にマイクをむけてインタビューをしている。 ひとりの女のひとが大きな身ぶりで、空のほうを指さしている。なにを言っているのかまったくわからなかったけど、どうやらぼくたちの“UFO”の目撃証言をしているらしい。ほかの何人かの目撃者もそれぞれの見解を述べていた。

「なにを言っているの?」

「“UFO”を見たんだってさ……まったく頭のおかしいひとはどこにでもいるよ……」

とアミが皮肉に笑って言った。

 そのあと、メガネをかけた男の人があらわれ、黒板になにか描きながら説明していた。 それは太陽系の地球とほかの惑星をあらわしていた。長いあいだ話をしていた。すぐに、彼が天文学者だということがわかった。アミは、“翻訳器”を使っていたので、その男のひとが話している言葉がわかるらしく番組の流れをよく理解しているようだった。

「なにを言っているの?」ふたたび聞いてみた。

「地球をのぞいて銀河系には知的生物が存在していないことは“科学的に証明されている”と彼は言っている。そして“UFO”らしきものを見たひとたちは集団幻覚におそわれているのだからと、精神科に行くことをすすめている……」

「ほんとうに?」

「うん、ほんとうに」

と笑って答えた。科学者はなおも話しつづけている。

「いま、なにを言っているの?」

「たぶん、地球のように“高度に発達した”文明は宇宙に存在しているだろう。でもそれは計算によると二千もの銀河系宇宙にたったひとつの割合になると言っている」

「それは、どういう意味?」

「もしこの銀河系だけでも数百万もの文明があると知ったら、かわいそうに、彼は取りみだしてしまうだろう……」

 しばらく、ふたりして笑った。

 ぼくにとって科学者から“UFO”が存在しないということを聞くのはこっけいなことだった……だってほくはその番組を、“UFO”から見ているんだから。


  一時間ほどそこにとまったあとで、表示ランプは消えた。

「自由になったよ」

 とアミが言った。

「じゃ、またどこかほかのところへ行けるの?」

「もちろん、こんどはどこへ行ってみたい?」

「う~んと、イースター島!」

「あそこはいま、夜だよ。ほら見てごらん。もうついたよ」

「ここがイースター島?」

「そのとおり」

「なんてはやいんだ!」

「はやいと思う?じゃちょっと待って……まどの外を注意して見ていてごらん」

 すぐに風景が変わり、こんどは、とてもきみょうな砂漠の上にいる。空は少し暗すぎる感じで、青みがかった月だけが明るく、あとはほとんどまっ黒だ。

「ここはどこ?アリゾナ?」

「月だよ」

「えっ! 月!?」

「そう、月だよ」

「じゃ、あれは……」

 いままで、てっきり月だと思っていた空の星を指さして聞いた。

「地球だよ」

「えっ、地球!?」

「そう、きみのおばあちゃんがねているところだよ……」

  驚嘆のあまり口があいたままだった。それはじっさい、水色をしたほんとうの地球だった。あんな小さな星の中に山や海やたくさんの大きな建物があるのかと思うと、とても言じられない気持ちだった。

 ふしぎなことに、記憶の奥にしまいこんであった思い出がつぎつぎとわき出てきた。

子どものころよく遊んだ小川、苔で一面におおわれたかべ、庭にとびかうミツバチ、夏の午後の牛車......それらがみんなあの星の中につまっている。みんなあの小さな水色の球の中につまっているのだ……。

とつぜん太陽が目に入った。地球よりもはるかに遠く見えたけど、ずっとまぶしかった。

「どうしてあんなに小さく見えるの?」

「ここにはルーペのように、拡大して見せる作用をする大気圏がないから、地球で見るよりもずっと小さく見えるんだよ。でも、もしこの特製ガラスのまどを通さずに見たら、あの小さな太陽はきみを焼き殺してしまうよ。有害なある種の光線を濾過してくれる大気がないためにね」


 月の光景はぜんぜん好きになれなかった。荒れはてた感じでうすぐらく、怪しげな世界だった。地球から見たほうがずっときれいに見えた。

「こんどはもっときれいなところへ行けない?」

「ひとの住んでいるところ?」

 とアミがぼくに聞いた。

「もちろん!でも怪物のいないところね……」

「だとすると、ずいぶん遠くに行かなくちゃいけないね」と言ってアミはそうじゅう桿を動かした。かすかな振動を感じた。星が長くのびて光の線になった。まどには白くかがやいたもやがキラキラ反射しながらあらわれた。

「どうしたの?」

  少しおどろいて聞いてみた。

「“位置”を変えているんだよ……」

「どこに?」

「とても遠い星に。数分間待たなければならない。とりあえず音楽でも聞くことにしよう」

  アミは計器盤のボタンを押した。おだやかだけど聞きなれないきみょうな音が内部の空間をいっぱいにした。アミは目を閉じてうっとりと聞きはじめた。

 その調べは、ぼくがいままで聞いたことのあるどんな音楽ともちがっていた。


 とつぜん、空気をゆるがす低音がそうじゅう室をいっぱいにした。しばらくつづいたあと、高い旋律に変わったかと思うと、とつぜん中断したまま数秒間、沈黙がつづいた。 そして、そのあとではやいリズムが上下して、ふたたび低音が少しずつ高音に変わっていき、どうじに変化のある調子の、うなり声のような音と小さな鐘の音が聞こえた。

 アミはうっとりとして音楽に聞き入っている。彼はその“メロディー”をよく知っているようでくちびるや手の軽い動きがほんの少し音楽よりも先行していた。

 中断するのは気がひけたが、その“音楽”はとうてい好きになれなかった。

「アミ」

と呼んでみた。

答えはなかった。アミはその短波放送に雑音が混じったような音楽に深く聞き入っていた。

「アミ」

「あ!失礼……なに?」

「悪いけど、ぼく、この音楽あんまり好きじゃない」

「ああ、そうだろうね。この音楽を楽しむには前もって多少の“手ほどき”が必要だ。じゃなにかきみが知っているようなのをさがそう」

 アミはそう言って計器盤の別のボタンを押した。軽快なリズムとメロディーが流れてきて、すぐにぼくは楽しい気分になった。

 メインの楽器は全力で走っている蒸気機関車の煙突から出る蒸気のような音がした。

「なんて楽しいんだろう!……この汽車みたいな音を出す楽器はなんて言うの?」

「なにを言い出すんだ!」

  アミはちょっとふきげんになったようにさけんだ。

「きみはほくの星のもっとも栄誉に満ちた声を侮辱したんだ。このすばらしい声を汽車の騒音にたとえるなんてひどいよ!」

「ごめん、ごめん。知らなかったんだ……でも、吹き方がとてもうまい!」

 とまちがいをごまかしながら言った。

「この暴言者!はじ知らず!」

とアミはじょうだんにぼくのかみをつかんで、大げさにさけんで言った。

「なんてこった。ぼくの国の最高の歌手をつかまえて、吹き方がうまいとは!」

 ふたりともこらえきれずに大声で笑った。


 その音楽はじっさいおどり出したくなるような気分にさせた。

「そのためにつくった曲だよ」

 とアミ。

「おどろう!」

 と言って、きゅうに立ちあがり手をたたきながらおどりはじめた。

「さあ、おどろう、おどろう!」

 とぼくをうながした。

「さあ羞恥心なんかふりきって!きみはほんとうはおどりたいんだ。ためらっているのはきみじしんじゃない……ほんとうの自分じしんになる自由を手に入れることを学ぶんだ。 もっと自由になるんだ……」


 ぼくはいつもの羞恥心をかなぐり捨てて、夢中になっておどりはじめた。

「ヤッホー! ヤッホー!」


長いあいだおどりつづけた。とてもゆかいだった。浜辺を走ったり、とびあがったのとよく似た感覚だった。やがて音楽は終わった。

「こんどはなにか少しくつろげる音楽がいい」

と言うと計器盤のところへ行って別のボタンを押した。

クラシック音楽が流れてきた。聞きなれた音楽だった。


「それは地球の音楽じゃないか」

「そうだよ。バッハだ。すばらしいね。どう?好きかい?」

「うん……もちろん、きみも好きなの?」

「ぼくも大好きだよ。地球のものは円盤にはおいてないとでも思っていたの?」

「うん。地球のものはみな、きみたちには、“野蛮”に感じられるのかと思っていたよ」

「そんなことはないよ」と言って別のところを押した。

「これはジョン・レノンじゃないか!ビートルズだ……!」

  地球にはなにもよいものがないのかと思いはじめていたので、とてもおどろいた。

「ペドゥリート、もしほんとうによい音楽だとすれば、それは地球だけでなく、普遍的に評価されるよ。そして地球だけじゃなく、たくさんの惑星のいろいろな時代の、あらゆる芸術が、多くの銀河系にコレクションされているんだ。われわれは地球でおこなわれるさまざまなことを録画して保管しているんだ……。芸術は愛の言葉だ。そして愛は普遍的だ……。さあ、聞こう」

 アミは目を閉じてひとつひとつの調べを味わっているようだった。そしてちょうどジョン・レノンが歌い終わったときに、ぼくたちはひとの住んでいる別世界へ到着した。




【感想】

 UFOや地球外生命体を怖いものと認識する人もいれば、神のように崇拝しようとする人もいる。確かに今の地球はその通りだと思います。ただ、「唯一神」だけが崇拝される存在である、という概念がなかなか理解しにくいものだな、と思いました。地球にはすでにたくさんの宗教があり、それぞれにその宗教の神がいます。その神を守るために、過去にはいくつもの宗教戦争がありました。


 地球は殺したり、殺されたり、それらを体験している途中なのだというアミの説は納得がいきます。どちらも体験して、初めてどちらもの気持ちが理解できるようになる。そのために、仏教には輪廻転生という考え方があります。それを何度も繰り返してきた魂が少しずつ学びを深めてきている、そう捉えるのもおもしろい考え方だと思います。


 アミが音楽をかけるシーンで、ペドゥリートは「聴いたことがないから好きになれない」と言っていたシーンでは、まだまだこの宇宙にはたくさんのクリエイティブな芸術があって、出会っていないだけなのだと思うとワクワクしました。きっと地球にいる私たちもまだこれから今までにない新しい何かを生み出していかれる存在なのですね!




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